第67回放送 2003年1月13日
ムートン年頭緒言
雑誌「蛋白質 核酸 酵素」1月号でJT生命誌研究館の工藤光子さんが次のように述べておられます。
「楽譜を読まなくても音楽を楽しめるのは多くの演奏者がいるからで、論文を読まなくても科学を楽しめるように科学の演奏者が必要である」
2001年秋のインターネット放送局クリックラジオにおける番組改編でこの番組が登場して以来のコンセプトが「科学する心を応援する」でした。科学を楽しいと思う、その不思議さに単純に感動する、そんな喜びを多くの人に知ってもらいと望みながら番組制作を続けて2回目の新年を迎えました。
私たち「ムートン」製作チームは難しい科学をよりわかりやすく、より楽しく皆様にお届けする「科学のオーケストラ」を目指します。
ムートン制作スタッフ一同
■活動している脳を観察する技術を開発
アメリカの2つ研究チームが蛍光物質を遺伝子組み換え技術で脳に組み込んだマウスを利用して生きて活動している脳を観察する技術を相次いで開発しました。(Nature
Vol.420 No.6917)
私たちが何かを記憶するとき、脳の神経細胞(ニューロン)はどうなっているのでしょうか。記憶の行為がニューロン同士の接続による新しい回路を形成するという説が有力と語られていますが、実はまだ解明されていません。
今回、蛍光物質を遺伝子組み換え技術によって脳に組み込んだマウス、すなわち、ニューロンのひとつひとつが光って見えるマウスを使って記憶とニューロン回路の形成について実際に脳を覗き窓から覗いてみる方法で検討が行われました。その結果、2つのチームが得た結果は若干異なるものでしたが、脳の中でスパインと呼ばれる構造が記憶に伴い形成されている様子を観察することができ、この技術は脳の機能解明の非常に有効なツールとして活用できることがわかりました。
■土星の衛星タイタンに地球の水に相当する物質循環があった
アメリカの研究者らが土星の衛星タイタンを観察し、タイタンには雲の生成→大気の対流に伴う移動→(おそらくは)降雨 という地球の水と同様の物質循環があるらしいことを発見しました。
ただし、この循環している物質は地球で観察される水ではなくメタンです。タイタンではこのような物質循環があることは予想されていましたが、実際に観察に成功したのは今回が初めてということです。
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