[インターネット放送局くりらじ] [パーソナリティ:おびお]
科学情報番組「Mowton」は2003年より「ヴォイニッチの科学書」としてリニューアルスタートしました。

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第60回放送 2002年10月21日
「反水素の生成と検出に成功」 
Nature|Vol.419|3 October 2002|pp456 より

 反陽子捕捉装置、陽電子蓄積装置、反陽子・陽電子混合反応装置、反水素消滅検出器から構成されるシステムを用いて理論検証可能な量の反水素を作り出すことに成功しました。
 私たちの身体そのものや身の回りの世界すべては「物質」でできています。「物質」はプラスに荷電した原子核・・・プラス荷電の陽子と電気的に中性な中性子からなる・・・とマイナスに荷電した電子から成り立っています。
 一方、反物質はこれとは逆に、マイナスに荷電した陽子=反陽子、とプラスに荷電した電子=陽電子からなりたっています。反物質と物資は共存することはできず、物質と反物質が衝突すると電荷が相殺されその合計の質量がすべてエネルギーに変換され消滅してしまいます。
 質量とエネルギーが等価であることはアインシュタインが示した有効な公式
e = m × c × c
であらわされ、1gの物質は2000tの石油を燃焼させたときに取り出すことができるエネルギーに匹敵するエネルギーに変換されます。
 反水素の原料である反陽子はシンクロトロンによって作り出すことができ、もうひとつの原料の陽電子は真空中に1.4×10の9乗ベクレルという強いガンマ線を放出することによって作り出されます。
 研究者らはこれらを2つの環境、すなわちひとつは絶対零度に近いマイナス260度付近の超低温で、もうひとつは数千度の高温の環境で反応させ反水素を作り出すことを試みました。その結果、超低温では高温状態の10倍以上の反応が進行し、約50,000個の反水素の生成が確認できました。
 水素はアボガドロ数個=6.02×10の23乗個でやっと2グラムとなりますので、重さ的には非常にわずかですが、1993年に世界で始めて反水素が合成されて以来これまで、これほど多くの反水素が作り出されたことはなく、この研究は宇宙の起源の探究や相対性理論と陽子論の統合などこれまでブラックボックスとなっていた物理学の分野に大きな進展をもたらすことが期待できます。

今週のキーワード

物質のもととなる原子・・・プラスに荷電した陽子と電気的に中性な中性子とからなる原子核の周りをマイナスに荷電した電子が回っている。

反物質・・・マイナスに荷電した反陽子と電気的に中性な中性子とからなる原子核の周りをプラスに荷電した陽電子が回っている。

アボガドロ定数・・・化学や物理における基礎定数。質量数12の炭素12グラムの中に含まれる炭素原子の個数。すなわち、原子がアボガドロ数個集まると質量数グラムの重さとなる。言い換えると、1モルの物質中に含まれるその物質の構成粒子の数。値は 6.02×10の23乗。

アインシュタイン・・・ボサボサ頭であかんべ〜をしたユニークなスナップ写真で知られる理論物理学者。1879〜1955。特殊相対性理論、一般相対性理論など物理学や万物創生の根幹を成す基本的理論を多数提唱した。ユダヤ系ドイツ人でナチスに追われて渡米し、相対性理論を研究史ノーベル賞を受賞した。役所勤めをしながら物理学の研究を行い、サラリーマン研究者の鏡とされている。