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松井教授の東大駒場講義録 /松井孝典 /集英社新書
 地球、生命、文明の普遍性を宇宙に探る
 東大駒場での一般教養の講義「惑星地球科学II」11回分をテキスト化して収録。この講義のテーマを「世界は普遍か」という問いに置き、太陽系に関してその起源や惑星に関わる物理学、地球文明論、火星や土星・木星の衛星における生命に関する考察など太陽系に関する最新の情報をほとんどすべて網羅しています。
 講義をほぼそのままの内容で書籍化しているため、記載されている内容に関しては教科書的で持論の展開や、まだ確認中であるような最新情報があまり述べられていない(ように思えた)ので、「太陽系に関して何か新しいことを知りたい!」と思っている読者には平凡な内容の書籍に思わせてしまうかもしれません。そのことに関しては、著者がまえがきで書いている東大理系学生の目の輝きがないことやごく基礎的なことから話さなければ理解されなかったという嘆きから推察するに、あえて手堅い話題の総まとめのような内容に構成したものと思われます。そのかわり、太陽系のことを知るための教科書としてはすばらしく広範囲の話題を網羅しているのでオススメです。参考文献が掲載されていないので元の論文や雑誌の記事を参照できないことが残念です。もっとも、これだけ浅く広くの書籍で参考文献をまとめるのは困難かとは思いますが。

論争する宇宙 /吉井 讓 /集英社新書
 東京大学ビッグバン宇宙国際研究センターの口径2メートルマグナム望遠鏡をハワイ諸島のマウイ島に建設した著者の宇宙論と望遠鏡建設にまつわる記録です。
 サブタイトルは「アインシュタインの最大の失敗が甦る」となっていますが、この最大の失敗である宇宙定数を正確に算出することによって宇宙の過去を知り、将来を予測することができます。本書前半では20世紀以降の宇宙観測について、主として宇宙の年齢と大きさを測定する観点からその観測と論争の歴史を解説しています。観測方法の解説にはかなりのページが割かれており、遙か彼方の天体までの距離をどのようにして知るのかについて「梯子」という表現で段階を追って解説されていますので、科学者の人間関係と科学史という観点から読んでも非常に興味深い内容です。記述は標準的な専門用語で行われており、天文学に関する若干の知識がなければ理解することは難しいかもしれませんが、個人的には無理にわかりやすい用語を使って初心者向けに書かれているよりも学術雑誌の総説風の文体が学術的正確性を保つ観点からも望ましいと感じました。
 最終章はマグナムプロジェクトと称される筆者が自由に観測できる望遠鏡を作ろうと思った経緯やその後の主に金銭的な困難に立ち向かった様子がプロジェクトX風に著されています。筆者が本当に書きたかったのはこの最終章であろうと感じさせますが、マグナムプロジェクトのせいかについての記載がほとんど無いのが惜しまれますが、これはまた別の著書で・・・ということでしょうか。

宅配便130年戦争 /鷲巣 力 /新潮新書
 ヤマト運輸のビジネスに関する書籍は多数発行されていますが、本書を含めどれも非常に面白いです。
 なぜこれほどまでに面白いかというと、ヤマト運輸の歴史というのは官と民の戦いの歴史だからです。(旧)大和運輸という一企業と運輸省、郵政省、ついには同業の民間企業まで敵に回して孤軍奮戦する姿は失礼ながら「痛快」という言葉がぴったりです。「お客様主義」に徹して、お客様の利便のためなら監督官庁や閣僚を告訴することさえおそれない豪快な戦いっぷりは読んでいて気持ちよくなります。まるで良くできたビジネス小説のようなテンポの良い、しかもあっと驚くような仕掛けが次々に読者を虜にします。
 実はこの「宅配便130年戦争」はこれまで出版された多くの「ヤマト本」と内容的には大きな違いはありません。ただ、「ヤマト本」の最新刊として郵政の民営化・ゆうパックの躍進に多くのページが割かれ、これまでお客様をみかたに突き進んできたヤマト運輸の前に、現在巨大な壁が立ちふさがりつつあることを予感させる内容となっています。
 ゆうパックの低価格化やサービスが宅急便そっくりになってきたこと、そして、ローソンを筆頭とするコンビニの相次ぐ反乱、さて、今後のヤマト運輸はどうなるのか。もちろんその答えは書かれていませんが、市場の自由化の海の中で戦い続ける官と民の現状が冷静に分析されています。
国家の品格 /藤原正彦 /新潮社
 経済は上向きだ、売れる数百万円の福袋、レクサスの日本逆上陸・・・日本経済に活気が戻りつつあるとよく言われますが、新聞の字面だけのことに感じる人は多いのではないでしょうか。就業できない人が日本中にあふれているのにもかかわらず採用を減らし続ける自治体、毎日自分の下で汗を流して働く従業員よりも顔も名前さえも知らない株主を大切にする企業、後輩は後継者ではなくライバルになってしまい技術継承をしない先輩エンジニア、弱いものは市場から去れと言ってはばからない自由経済理論、違法でなければなんでもやるIT企業・・・。
 そんな日本は絶対に間違っている!と強く訴えるのが本書です。日本は情緒と形を大切にする美しい国だったはずです。ウソを憎む、卑怯を憎む武士道精神の国だったはずです。江戸時代以降日本を訪れた外国人はみな日本の美しさ、日本人の親切さ、日本人の勤勉さに感動しました。普通の町人が街角で本を立ち読みしている様子を見た外国人は日本の知的レベルの高さに驚き「こんな国はとても植民地にはできない」と舌を巻いて帰国したと言います。日本はそんな品格ある国でした。
 しかし今の日本は品格を失っています。日本の砦とも言えた技術系学生の学力はアメリカに追い越され、美しい日本の田園・農村風景は作るより買った方が安いという合理主義で破壊され、みんながちょっとずつ貧乏で、みんなで助け合っていた社会は平等の名の下に一部の富裕層と日本国民ほとんど全員の貧困層の二極化へと広がり続けています。そんなどうしようもなくなってしまった今の日本に活力を与える本書の登場に拍手を送ります。
銀河ヒッチハイクガイド /ダグラス・アダムス /安原和見 /河出書房
 1979年に原書がイギリスで発行されたSF。古典的名作。長らく絶版になっていましたが、出版社を変えて2005年秋に文庫で出版されました。
 SF と言っても基本はコメディーで日本語訳も絶妙です。
 物語の始まりは銀河バイパスの建設から。バイパスのルートに当たっている地球が破壊されそうになるところから始まります。広い宇宙でわざわざ地球を通るルートにしなくても・・・と思うし、普通ならここで地球の味方がやってきて私たちを救ってくれるところでしょうけれど、有無を言わさず地球が破壊されてしまう強引なストーリー展開。全体的にわけがわからない展開がたくさんあって非常に楽しめます。
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上品な人、下品な人 /山ア武也 /PHP新書
 次の事柄に当てはまると心当たりのある人はこの本を買って読みましょう。
 友人に収入をたずねたことがある。 友人に子供のコンサートのチケットを売ったことがある。 部下に「自分は忙しい」と言ったことがある。 机の上が散らかっている。 使っているボールペンはすべて使い捨てだ。 威張りたい。 自慢したい。 だじゃれを言いたい。 説教したい。 昔語りをしたい。 服装の雰囲気が周りの人と違う。 コース料理とバイキング料理で食べる量が違う。 ホテルのレストランに行くときにドレスコードを確認しない。 「ドレスコード」という言葉を知らない。 お店の商品にいつも触ってしまう。 値切って買う。 電車やバスには他の人より早く乗りたい。 レストランでお金は他の人が払うのに勝手に注文したことがある。 自分は一点豪華主義にこだわっている。

EXPO'70 驚愕!大阪万国博覧会のすべて /ダイヤモンド社
 35年経過した今でも、年に1冊程度 1970年の大阪万博に関する書籍が出版されています。大阪万博はそれほど日本の歴史において重要な意味を持っていた博覧会だという事でしょう。いまでも大阪万博に魅力を感じている人は大勢います。この本は 2005年6月に発行された書籍です。
 内容は主に建築の観点から記述されており、お祭り広場とその他主なパビリオンについて建築の観点からのコメントや、当時の設計者への直接取材を行った本人のコメントが記載されています。お祭り広場のプランの変遷と理想、そして実際にできあがったお祭り広場とのギャップやそれぞれのパビリオンで建築家が試みた様々な実験は非常に興味深いものがあります。それは愛知万博においては建築的な挑戦がほとんど行われなかったことと対照的で、1970年代の日本の活力が感じ取れます。また、東京ドームで有名となったエアドーム式建築も当時は法律的に許されるものではありませんでした。現在はもちろん法的に認められた建築方法ですが、法的問題を解決するためにエアドーム式建築のアメリカ館において、博覧会終了後火災実験が行われその後の建築革命を起こす基礎的なデータが取られていたこともこの本ではじめて知りました。
 地方在住だったために大阪万博はテレビの前でしか見ることのできなかった私にとって、毎年発行される書籍はいずれも貴重な資料の集積ですが、この本も非常に満足度の高いものでした。巻末にはわずかなページ数ですが万博協会のポスターや万博の建設に携わった企業、出展した企業がパビリオンの画像を使って作成した PRポスターがまとめて紹介されており、これはこの本ならではのものではないかと思います。

9.11生死を分けた102分 /ジム・ドワイヤー&ケヴィン・フリン著 /三川基好訳 /文藝春秋
 2001年9月11日、ニューヨークにそびえ立つ世界貿易センタービルにハイジャックされた旅客機が最初に突入して、最後に北棟が倒壊するまでの 102分間を 352人の証言によって時系列とひとりひとりの取った行動を詳細に報告した本です。このような大惨事においてもわずかな人々は奇跡の脱出に成功しています。どうしたらこのような状況から脱出できるか。それは気力・知力・体力・平常時からの心の準備・自分が生きるために冷酷になれる強い心、のすべてが備わってなおかつ、強い運に恵まれていなければなりません。たまたま家族と電話していた、たまたまエレベーターに乗った、同じスカイロビーにいても隣に立っていた人は死んだけど自分はなぜか無傷だった、そういった運の強さは特に重要です。その他記されているのは「この非常階段は通れない」という風評に惑わされずにその非常階段を通って下に降りることに成功した人の話・・・。身体の弱い同僚を置いて自分だけが避難することができずに死んでしまった人の話・・・。来客が IDカードを忘れて入館できなくなってそれをロビーに迎えに行って難を逃れた人の話・・・。もちろん、勇気を持って人命救助に向かった警察・消防の記録もありますが、彼らの多くは実際には人命救助に関わることはほとんどできないままに殉職してしまっていたのでした。とにかくとてつもなく悲惨な内容の書籍です。

夕凪の街 桜の国 /こうの史代 /双葉社
 「原爆を落とした人は私を見て『やった!あmたひとり殺せた』とちゃんと思うてくれとる?」の衝撃的なフレーズが忘れかけていた戦争の悲惨さをだれもの頭の中によみがえらせます。爆心地近くに住んでいながら、幸いにも生き残ったある家族の原爆直後から現代に至るまでの苦難の記録です。被爆者だからという理由で差別を受け続ける家族、その差別は戦後60年を経た現代にまで続いているという事実を私は知らずに過ごしていました。原爆投下はもちろん悲惨なことでした。けれど、多くの被爆者は同じ日本人の隣人によって、原爆投下直後と変わらぬ悲惨な環境に置かれていることもあるのです。
 第9回手塚治虫文化賞新生賞、第8回文化庁メディア芸術祭大賞 を受賞し、映画化も決定している衝撃的作品です。
バージェス頁岩 化石図譜/デリック・E.G. ブリッグス ら(著), 大野 照文 ら(訳)/朝倉書店/¥5,040 (税込)
 次々に変化する地球環境は生物たちにとっての試練です。この試練を乗り越え次の時代に生き残ることのできる選りすぐれた生き物を自ら生み出すために行われた進化の試行錯誤がここにある!! 「ワンダフルライフ」に感動した読者諸氏待望のバージェス頁岩生物の図譜が完成です。 え゛!人間のご先祖様って・・・これ!?
 これまでバージェス頁岩に関しては学会誌やネイチャーなどの学術雑誌に断片的に論文が発表されるのみで日本語で手軽に購入できる図鑑はありませんでしたが、本書はバージェス頁岩の動植物のほとんどを詳細な図で網羅しています。また、論文のリファレンスも掲載されていますので、より詳細な情報が欲しい方は、リファレンスを元に調査を行うこともできます。
ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語/スティーヴン・ジェイ グールド (著), 渡辺 政隆 (訳)/早川書房/¥987 (税込)
 カナダ南西部カナディアンロッキー標高2300メートルにあるバージェス頁岩には5億4000万年前のカンブリア紀初期に起きた動物の急激な進化の様子をとどめた化石群を大量に含んでいます。そこには現在の生物には分類することのできない不可思議な生き物がたくさん生きていました。その驚異に満ちた進化の物語です。
なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか/辰巳 渚/光文社/¥1,000 (税込)
 食玩を大人買いする、公開するとわかっていながら続編を見る、なんとなくボトルキャップ付きドリンクを買う、安アパートに住んでポルシェに乗る、私たちはそんな不思議な消費を時として行います。この書籍ではそれらを肯定的に受け止め、その理由を探り、人生を豊かにする個人消費について考えます。
廃墟の歩き方 探索篇/栗原亨/イースト・プレス/\ 1,575円
 廃墟・・・普通には心霊スポットとして知られる事が多いと思いますが、何故人は廃墟に惹かれるのでしょうね。理由はよくわからないのですが、私も実は廃墟の写真集などを見るのが好きです。それは失われた物へ対する郷愁なのか、心の底に退廃主義があるからなのか、退廃主義を背景にしたセンチメンタルなのか、その辺はよくわからないんですけど、何か惹かれる物があります。 どんな廃墟にしてもそこにはかつて人々の生活や、夢あふれる終業の場、あるいは多くの人が集うレジャー施設だったりするわけで、盛者必衰とは言いませんが、それが廃れた様子は映画「タイタニック」がヒットした心理と共通する物があるのではないかと思います。 この書籍は日本全国の主要な廃墟を紹介するとともに、廃墟探検の心得や必要な装備なども紹介されていて、私のように写真を見るだけでは飽きたらず現地探索をしたい人にお勧めしたい書籍です。
廃墟の歩き方 潜入篇/栗原亨/イースト・プレス/\ 1,575円
真相・戦艦大和ノ最期 写真と新資料で解明!/原勝洋/ベストセラーズ/\ 2,520円
 1945年4月7日、沖縄突入作戦時に米軍航空機の攻撃を受けて沈没した世界最大の戦艦大和の最期について記述された書籍は数多くありますが、その多くが戦記小説に近い体裁を取る中、この本は近年明らかになった米軍撮影の写真や戦後にGHQの指示で作成された資料を中心にして事実のみを時系列に沿って淡々と述べている点が注目されます。この本で初めて公開されたという破壊された上部構造が克明に見て取れる写真はこの戦いの悲惨さを無言で訴えかけているようです。乗組員の哀話はほとんど含まれていませんが、これまで発行された類似書籍のどれよりも「真相」に近い一冊です。
チルソクの夏/佐々部清(脚本) 橋口いくよ(ノベライズ)/幻冬舎/\1,260円
 舞台は1977年の日本と韓国。実在する山口県立長府高等学校の陸上部女子生徒が主人公の穏やかな恋愛ストーリーです。この年、下関で開催された関釜親善陸上競技大会で主人公の郁子は韓国から来た男子陸上部員に恋をするのですが、当時の日本では韓国の異性と恋愛に落ちるなど許されないこと。また、韓国の高校生は厳しい受験戦争のまっただ中で恋愛などしている余裕はありません。それでも、仲の良い友人に支えられて、二人は翌年再会を果たします。結局この恋愛はかなわないのですが、郁子とボーイフレンド、そしてその友人や家族を巻き込んだ悲喜こもごもは郁子とその友人たちの青春の貴重な1ページとして一生の思い出となったのでした。2003年に映画化され、日本の恋愛映画の究極の到達点として絶賛された同名映画のノベライズです。
チルソクの夏映画DVD   
チルソクの夏サウンドトラックCD   
ビジュアル・ワイド 世界遺産/青柳 正規/小学館
 世界遺産に関する写真集はたくさん発行されていますが、数冊の分冊になっているものがほとんどですが、この「ビジュアルワイド 世界遺産」は 2003年7月時点の全世界遺産 754件がすべて写真付きで収録されています。これ一冊で世界遺産のすべてを調べることができると共に、百科事典のような豪華な装丁となっていますので書棚に収納しても貫禄十分です。世界遺産ファンのみなさんにオススメです。
奇跡の新薬開発プロジェクト/講談社プラスアルファ新書/梅田 悦生
 病気になったときに私たちは処方された薬を指示に従って飲みますが、それら一つ一つの薬ができあがるまでに 10年以上の年月と 10億円以上の開発費用がかかっているなどと考えることがあるでしょうか。この本は日本発の(「初」ではなくて「発」です)アルツハイマー治療薬「アリセプト」を開発したエーザイの研究者たちのお話しです。
 脳が萎縮し、認知や行動に異常が生じるアルツハイマー病は患者本人はもちろんですが、患者を看病する家族にも大きな負担がかかりそれが原因で家庭が崩壊してしまうことも珍しくありません。そんなアルツハイマーの症状を改善できる「アリセプト」は世界中のアルツハイマー患者を持つ家族待望の新薬でした。
 1983年の研究開始からアリセプトの構造を決定するまでの試行錯誤の経緯、立ちふさがる難問とその解決方法に到るまで克明に記載されており、「プロジェクトX」な技術ストーリーに興味のある方はもちろんのこと、医師・製薬メーカー研究者を目指す学生さんにもぜひ読んでいただきたい書籍です。内容は医薬関連専門用語や化学構造式を多数含みますのでやや難解な部分もあるかもしれませんが、あまり紹介されることのない日本の医薬品開発技術を紹介する貴重な書籍です。
[関連商品]千秋実さんがアルツハイマー患者を熱演した映画「花いちもんめ」 VHS 
 考古学者がアルツハイマーを発症、その看病のために崩壊していく家族を詳細に、悲惨に描いていますが、美しいエンディングにはすくわれます。 
自動販売機の文化史/集英社新書/鷲巣 力

 自動販売機の歴史と主に日本におけるその発展の経緯、近年自動販売機が担い始めた新しい役割などに時系列順にふれた自動販売機研究の集大成です。世界最初の自動販売機はおよそ2000年前のエジプトの神殿に設置された聖水の自動販売機だと言われています。現存する自動販売機として最古のものは17世紀のイギリスで開発された「正直箱」と呼ばれるかみタバコの販売機でした。その後自動jはんばいきは様々に進化しながら世界各国へ広がり、日本は設置台数でアメリカに次いで世界第二位、人口あたりの自動販売機設置台数では第2位のアメリカに2倍近くの差を付けてダントツの世界第一の自動販売機大国となりました。そして現在の日本の自動販売機は液晶画面を装備しエンターテイメント機能を付加した機種や、携帯電話との連係機能を装備したシーモード機へと発展し、さらには自動販売機は単に商品やサービスを提供するだけでなく、災害時の情報提供ターミナルや緊急時の食料保管庫の役目を担うまでに進化しています。

恋/小池真理子/新潮社/740円
「これはすばらしい純愛小説だ」というのが読み終えた印象です。ここでいう「純愛」とはいわゆる男と女の間の愛情に限るものではなく、親と子、兄と妹、女友達同士、男友達同士、そういった人間同士の普遍的な「純愛」を意味します。 幸せの真っ只中にいる人は誰もが何の根拠もなく無意識のうちに「この幸せは永遠に続く」と思ってしまいます。でも、そう思って日々を送ることができることはとても幸せなことで、明日の不幸を心配して過ごす日々ほど不幸なものはありません。決して幸せな時代は永遠には続かないのだから、精一杯その時代を謳歌しなければなりません。その後どんな人生が待っていても決して過去を振り返って後悔することのないように。そして、その時代を共に過ごした人たちの記憶の中にいつまでも心温まる幸せな思い出として自分が残っていることができたなら、私は笑顔で棺の中に収まることができるのではないかと思います。
美男忠臣蔵/鈴木輝一郎/講談社/730円
 赤穂浪士討ち入り(忠臣蔵)の発端は、吉良上野介に浅野内匠頭が斬りかかり、吉良上野介はお咎め無し、浅野家はお取りつぶしという沙汰が出たということですが、「なぜ浅野内匠頭は吉良上野介に斬りかかったのか」「しかも取り押さえられることが明らかな殿中で」「なぜ斬りかかった方の家臣が″敵討ち″をするのか」「果たしてこれは忠義なのか犯罪だったのか?」「なぜ一同切腹となったのか」考えてみると謎は深まるばかりです。 この「美男忠臣蔵」は、多くの書籍にあたりながら忠臣蔵の真実を幕府老中側の立場に立って解明した歴史小説です。 時の将軍は「生類憐愍令」で有名な徳川綱吉ですが、赤穂浪士の処遇とこの法律が密接に関わっており、最終的には荻生徂徠の「徂徠擬律書」における判断に従って将軍・老中両者にとって苦渋の折衷案である「切腹」に至ったことが記されています。「美男」はそれほど出てきませんが、非常に読みやすい歴史小説ですので是非ご一読下さい。
ネット告発 企業対応マニュアル 5人の弁護士によるケーススタディ/ ネットワーク・セキュリティ研究会/毎日コミュニケーションズ/1,680円
 「東芝クレーマー事件」のようなWebを使った企業告発、またBBSを使った企業の名誉毀損事件についてその経緯と企業がとった対応、その対応に対する著作弁護師団の評価、そしてその結末が紹介されています。「匿名性のもたらす弊害」を声高に訴えていながら、「それを書いている弁護士自身が匿名でそれを著している」という矛盾がこのネット社会への対応の難しさを表しているとも言える書籍です。 ネットでの消費者の行動は実際のところ「対応マニュアル」を策定することが難しい状況ですが、この書籍に紹介されている「失敗例」については十分検討する必要があると思われます。 ただ、著者の弁護士団が「BBS管理人=悪人」というスタンスに立っているのではないかと感じられる記述が多々あることが、私にとっては少々不快でした。しかし、そのことがこの本をBBS管理人にとっても有益なものとしていますので、私としては企業のネット対応社よりもむしろBBS管理人やWebサイト主宰者に読んでいただきたい一冊として推薦したいと思います。
電脳日本語論/篠原一/作品社/1,890円
 「一太郎離れ」を起こしてしまったかつての一太郎ユーザーにお勧め!!一太郎の日本語処理はこんなにもユーザーのことを考えていてくれた! 仮名漢字変換システムの代表ATOKの開発に関するストーリーをATOK監修委員会の活動を中心に記述したものです。もともとATOKはジャストシステム単独で制作されていましたが、やがてPCの仮名漢字変換にって紡がれる日本語が日本の標準になる事態に至り、ジャストシステムはその社会的責任を果たすために外部から大勢の専門家を招いてATOK監修委員会を持ちました。 委員会では膨大な数の辞書登録単語すべてを、収録するのにふさわしいか、正しい日本語か、不快語ではないか、そういったあらゆる観点から手作業で検証し最も優れた日本語仮名漢字変換システムを作り上げました。 この本では「一太郎」「ATOK」の歴史を探るとともに、日本語処理システムのあるべき未来像についても開発陣が熱く語っています。
こんなに面白い大宇宙のカラクリ「すばる」でのぞいた137億年の歴史/二間瀬敏史・山田亨/講談社/924円
 天文学に関する日本の研究レベルは世界でも第一線にあり、それらの研究成果は多くの天体観測技術や人工衛星に世界トップクラスの技術を投入することによって支えられています。そんなに本物作り技術の水を集めた最新の天体望遠鏡「すばる」による研究成果を普通の人にわかりやすく解説してある書籍です。 「すばる」の研究成果は非常に多岐にわたりますが、この本ではその中でも最も多くの人に興味をもたれるであろう「宇宙の果て」と「宇宙の起源」について特に多くのページがか割かれています。 また、巻等には「すばる」が撮影した美しい天体写真が多数紹介されており、銀河の爆発の様子や宇宙が出来た直後の銀河、今にも惑星系が出来そうになっている塵の雲を撮影したものなど、どれも非常に興味の持てるものばかりです。
ハウステンボスの挑戦/神近義邦/講談社/1,740円
 この本はハウステンボスの生い立ちやコンセプト、そしてこのプロジェクトに熱い思いを持ってかかわった多くの企業戦士の記録が創業者神近氏の視点から克明に記されています。1992年の開業式典で神近氏は「この街はこれから1000年のときを刻み始める」と宣言しました。それは一企業が都市を経営するという世界にも類を見ない巨大プロジェクトの始まりでした。一企業のプロジェクトにオランダが王室・政府を挙げて本気で支援するきっかけとなった「メジ事件」、エコロージー理念に感銘してハウステンボスのためだけに天然ガスプラントを建設することを決意した西部瓦斯、ドル箱である新幹線を持たないJR九州が起死回生をかけてホテル経営に乗り出すドラマ、キリンとサントリーのビール販売を巡る静かな戦い、次々に立ちはだかる法規制を巧みに解釈して支援しようとする行政、レンガの積み方のひとつまでオランダ職人が指導するこだわり、そんな多くの人たちの熱い思いが克明に記されています。
〈図解〉百戦百勝のメモ術・ノート術/本田尚也/三笠書房/560円
 私の周りにはメモをとる習慣のない人が何人かいます。すべての業務を頭の中でこなそうとするために、上司の指示の細かな部分の聞き漏らしも多く、師事そのものを忘れてしまってあとで聞き直しにくることも少なくなく、会議のスケジュールも自身では把握していないために同僚に合わせて行動しなければならない始末。これでは勤め人として失格ですし、成果も年収も昇格も絶望的です。この本には「なぜメモをとることが必要か」といったメモの効用から具体的なメモの取り方、ノートの作り方が図解されています。「そういえばあまり自分はメモをとることがないな」と思ったあなたはきっと気が付かないところでものすごい損をしていると思いますよ。この本を読んでメモをとる習慣を身につけましょう。
エア・ホスピタル/米山公啓/講談社/650円
 巻末の紹介文の言葉を借りると「病院版・ダイハード」まさにこの表現がぴったりの小説です。 羽田空港沖に建設された会員制高級病院「エア・ホスピタル」。このハイテク巨大病院に医師や患者を人質に立てこもった犯人グループは綿密な計画で警察を翻弄します。その犯人に立ち向かうのはたまたまその病院に患者として運ばれてきていたうだつの上がらない医師。彼は満身創痍で命の危険に何度もさらされながらも知恵と勇気で切り抜け、その様はまさにブルース・ウィルスそのものです。 作者は実際に医師であり、その正確な医学的表現と医薬品やオペ道具を巧みに使った作戦は私たちがこれまでのサスペンスで経験したことのない新鮮な展開をもたらし、息をもつかせないハイスピードな展開でエンディングまで一気に駆け抜けます。 しかし、スリルとサスペンスだけではない、現代の医療制度における問題点を常に読者に投げかけ続けている点もポイントです。
ニュースキャスターの本音/草野満代/小学館/560円
 News23でおなじみの草野キャスターのエッセイです。テレビで報道されるニュースの舞台裏や、キャスターの個人的な見解、時には複雑な政治や経済に関するニュースの解説などもあります。短いエッセイ形式になっていますので、適当にページをめくって開いたところから短い時間で読み始めることができます。草のキャスターがユニクロマニアだって知ってました? そんなプライベートの楽しい話題もあります。
雑学新聞 身のまわりの疑問を徹底取材!/読売新聞大阪編集局/PHP研究所/630円
Q1:インドやタイの離乳食はやっぱり辛いの? Q2:チケット予約は公衆電話がつながりやすいってホント? Q3:個人が自己破産したら貸した方は泣き寝入りするしかないの? Q4:JRの弱冷車、暖房も弱いの? Q5:コックさんの帽子はあんなに高くても引火しないの? などといった「言われてみれば、わからないよねぇ」という数多くの疑問に答えてくれます。新聞社による編集なので内容の信頼性もばっちりです。通勤電車のお供にどうぞ。(A1:辛い食べ物に慣れさせるために少し辛くなっています A2:災害時は公衆電話優先ですがチケット予約は関係ありません A3:そうです A4:暖房は全車同じ強さです A5:調理のときは少し低い帽子をかぶります)
がんばらない、うまくやる サラリーマン保身術/社会人サバイバル研究会/小学館/500円
 「知らぬ間に前科一般にならないための法律学」「上司・同僚の心をうまくつかむための社交術」「最小限の努力で成功するキャリアアップ術」「油断しない若いうちからの貯蓄学」「生活習慣病にならないための健康学」のパートに分かれてそれぞれの専門化が執筆しています。学校を卒業して就職する際に読むとよいかも。もちろん、長年サラリーマンをしている方も自分の生活習慣は正しいのかどうかを再考するためにも役立ちます。
だからこの人は好印象を持たれる/多湖輝/小学館/540円
 周りの人に自分のことを良く見てもらうためには、それをアピールする必要があります。黙って良い人を演じているだけでは何の意味もありません。この本では「有能さ」「積極性」「信頼性」「親しみやすさ」「明るさと清潔感」に分けて、それぞれの印象を周りの人に持ってもらうためには自分がどのように振舞えばよいのかを紹介しています。良い印象を持ってもらうためには、その人が本当に良い人であることに加えてそれをPRする技術も必要なんです。
文章をダメにする三つの条件/宮部修/丸善/693円
 大学の先生が生徒の論文(作文)を例として取り上げ、どのような文章が「ダメ」なのかを解説しています。ですから、この本に書かれていることをしないように心がければ「ダメではない」文章がかけます。例題がいずれも短文ですので、「電子掲示板に書き込みをしても全然反応がない・・・」と悩んでおられる方にお奨めです。
知っておきたい情報モラルQ&A/久保田裕・佐藤英雄/岩波書店/735円
 インターネットの世界は法的整備がいまだ未熟ですので、気が付かないうちに法律違反を犯していたり、法律を知らないばっかりに自分の表現力を発揮しきれずにいる人が大勢見受けられます。この本では著作権を中心に、ネット上で起こりうるさまざまな法律が絡むトラブルを避けるにはどうすればよいのかを学ぶことができます。また、権利の限界についても記載されていますので、他の人の著作物を利用する際もこのことを知っていれば非常に便利です。
日本語は年速一キロで動く/井上 史雄/講談社現代新書/¥735 (税込)
 方言といって普通イメージするのは地方でお年寄り同士が使っている言葉で、月日の流れと共に廃れていく言葉ではないでしょうか。けれど、実は方言も進化していて、新しい方言が生まれあるものは首都圏に流入し共通語への進化を遂げたりもしているらしいのです。この本は主に新しい方言がどのようにして生まれ、どう行った経路とメカニズムで進化していくのかを地道な全国調査に基づいて解明しています。「とっても」という意味の「ばり」はこのお店のある山口県の方言が進化した共通語なのだそうです。知ってましたか?
「ひとり夢見る」赤川次郎(徳間文庫)
 赤川次郎作品の中ではファンタジック・ミステリーに分類されます。
 主人公のひとみは元女優朝倉しのぶの娘で女子校に通う演劇部員です。しのぶはひとみの出産を機に女優を引退し、アクセサリーショップを経営して女手一つでひとみを育てていました。父親については母は何も語らず、ひとみは高校生まで自分の父親が誰なのかを知らずに育ちました。ひょんな事から母の店をたずねて行ったひとみは母の店が閉店していたこと、母親がパトロンにお金をもらってそのお金で自分を育てていたことを知ります。
 悲観に暮れたひとみは夜の街に飛び出し地下街で眠り込んでしまいますが、ふと気がつくとそこは映画撮影所の中で撮影の真っ最中。それだけではなくて、なんと時間は自分が生まれる前の18年間にさかのぼってしまっていたのでした。18年前の世界でひとみは映画監督に見初められ、映画の重要な役に期待の新人として出演することになりました。そして、その映画で競演していたのはなんと18年前の自分の母親。そして、映画に携わる多くの人たちとの交流を通して女優としての覚醒と自分探しの日々がはじまります。ひょっとするといまこの映画に携わっている人の中に自分の父親がいるのかも。大女優の片鱗を見せ始めるひとみ、赤川次郎小説ではお約束の殺人事件の発生
さようなら寝台特急あさかぜ 名門ブルートレイン栄光の軌跡
朝日新聞社 アサヒDVDブック
 寝台特急「あさかぜ」は戦争の混乱が収まり高度経済成長へと日本が向かい始めた1956年に登場しました。最盛期には「走るホテル」とまで呼ばれ、その豪華な車輌は東京と下関・九州を結ぶエリート列車でした。けれど、1975年の新幹線博多開業をきっかけに利用者は減少を続けついに2005年2月末を持って半世紀に及ぶ力士にピリオドを打ちました。
 このDVDブックは東京発最終あさかぜの出発から下関到着までをおだやかなBGMとナレーションでつづり、ボーナストラックには昭和30年代からの様々なあさかぜの貴重な映像が収録されています。書籍には最終列車のレポートと共に「あさかぜ」の歴史がわかりやすくまとめられています。
 下関の車両基地での整備担当者へのインタビューも収録されているのですが、車輌の安全運行に人生を賭けてきた 59歳の方が方言混じりで「自分も今年の5月に定年だが自分より先にあさかぜが無くなってしまった」と寂しそうに語るその様子は涙を誘います。
そこからパソコンがはじまった!―栄光と激動のコンピュータ1980年代史/藤広 哲也/すばる舎/¥1,575 (税込)
 私が初めてパソコンを買ったのは 1980年代中頃で MSXでした。その後、FS-5500F2(MSX2)、X68000 ACE-HD、EPSON PC-286LE、noteF などなど様々なパソコンを購入しましたが、1980年代のマシンはどれもがそれぞれに個性を持っていて、設計のコンセプトが明確でした。ところが今のパソコンはマシンの個性などはどこにもなく、メーカーの個性さえほとんど存在しません。性能は言うまでもなく現在のマシンの方がはるかに高性能ですが、20年前のパソコンたちは今のマシンよりもっともっと楽しくて、夢を与えてくれるホビーツールでした。決して後戻りすることはできないそんな時代のマシンたちを年代順に紹介するこの書籍は、20年以上のパソコン歴を持ち、「あの時代」を知っている幸せな方々にとってはどの機種も「あぁ、知ってる」というものばかりで興味深く読み進めて頂けるのではないかと思います。また、MIDI、CAPTAIN、パソコン通信といった時代時代の周辺機器やネットワークについても要所要所で解説されています。
タイムマシンをつくろう!/P.C.W. デイヴィス (著), 林 一 (訳)/草思社/¥1,365 (税込)
 ドラえもんグッズの中でどこでもドアと並んで人気の高い「タイムマシン」。タイムマシンは決してマンガの中や映画の中だけの空想の装置ではありません。現在考えることのできる物理学の理論だけでタイムマシンを作ることが可能なのです。この本ではもっとも現実的だと言われているワームホールを使ったタイムマシンの理論と、作り方、そしてタイムマシンにまつわる素朴な疑問などについてわかりやすく説明されています。
恐竜と共に滅びた文明 超知ライブラリー/浅川 嘉富/徳間書店/¥1,470 (税込)
 これまで常識とされてきた「恐竜は数億年前、ホモサピエンスは10万年前」という歴史年代は誤りだった、という大胆な説の元、恐竜と人類が共存していた時代の記録が解説されています。その当時の人類は高度な外科手術の技術を持ち、空を飛行する機械を開発し、天体観測を行っていたようです。しかし、彼らは大洪水によってほとんど絶滅してしまいました。南米の空中都市マチュピチュは彼らが作った避難用の都市だったとのことです。データの解釈の詰めが甘かったり、自分に都合の良い解釈が多用されたりもしていますが、一つの説としては興味深い内容だと思います。
セブン‐イレブン 創業の奇蹟/緒方 知行/講談社/¥777 (税込)
 セブン−イレブンは創業わずか30年で、日本の流通業界の頂点を極めました。現在のセブン−イレブンは1万店を超える店舗数を要し、年間売り上げが2兆2千億円を超える日本最大の小売店です。セブン−イレブンの第一号店が開店したのは1974年のことで、当時の日本には年中無休で朝の7時から夜の11時まで店を開けているなどということは考えられず、少品種を大量納入することが前提だっス問屋制度・流通制度とも整合できず、とても成功するビジネスとは考えられなかったそうです。しかし、綿密な調査に基づき着実に店舗数を増やし、今となっては誰にも真似の出来ない流通革命を起こしたとも言える流通網を実現しました。その発展を支えたのは各店舗のオーナーたちの努力と、常に新しい商品、サービスを提供し続けた本部の立ち止まることのない挑戦でした。 この本ではそんな創業者たちの苦悩と成功、新しい商店のスタイルに挑戦したオーナーたちの戦いの日々が活き活きと記録されています。