トップページに戻る

放射線関連のメモ

福島第一原子力発電所事故

 2011年3月11日午後2時46分、三陸沖、深さ24kmを震源とする地震が発生
 マグニチュード 9.0 は観測史上世界で4番目の規模
 地震発生時、6基ある原子炉のうち1号機から3号機までが運転中
   → 制御棒の挿入で自動停止するも外部電力が断たれた
   → 停止した原子炉を冷やす手段の喪失

 原子力発電所ではウランの核分裂で生じる熱でお湯を沸かしてその蒸気で発電機をまわしている。原子炉の自動停止はウランの核分裂連鎖反応の停止のこと。その後も炉内の核分裂生成物や燃料のウランは自然の核分裂が進行するので発熱する。そのため、原子炉停止後も路の冷却はし続ける必要がある。

原子炉の中でどんな反応が起きているか

燃料は 235ウラン (235は中性子と陽子の合計数)
ここに、中性子を衝突させて反応開始 235 + 1 = 236
燃料は 236ウランになる
236ウランは熱を出して 90ストロンチウムと 143キセノンに核分裂
  熱は発電に必要なお湯を沸かすために使用される
  236 → 90 + 143 = 233 で 3足りない
  この3は 3個の中性子となって放出される
  この中性子が別の 235ウランに衝突してさらなる反応が起きる
 → 連鎖反応

水素爆発のしくみ

 水素爆発の原因となった水素は核反応由来では無く、高温状態での燃料被覆管ジルコニウム合金と水蒸気との化学反応。燃料のウランはジルコニウム合金でできたロケットエンピツの外側のような燃料被覆管(長さ4.5メートルくらい)の中に封入されている。

   Zr + 2H2O → ZrO2 + 2H2 + 熱

 燃料被覆管は冷却水で冷やされているときは安定。温度が高くなると水とジルコニウムは反応し、水素を発生しつつジルコニウムは酸化物に変化する。発熱反応なのでジルコニウム合金の温度が上昇。体積が増えるので水と反応しないように被覆管を覆っている保護膜が破損し、そこから水がしみこみ反応が加速する。

 ジルコニウムは1857度で溶ける(融点)ので、炉内の温度がこれ以上になっていると被覆管が溶けてしまい、水と急激に反応して水素を一気に大量に発生する。この反応は300度未満でも加速するという報告もある。

3つの単位「ベクレル」「グレイ」「シーベルト」

 ベクレル・・・放射線を出す物質が出す放射線の出力 (1秒間に崩壊する原子核の数)

 グレイ・・・測定したい場所で測定した放射線の強さ (物質1キログラムが吸収したエネルギー量)

 シーベルト・・・人体が受け取った影響を受ける放射線量 (放射線の強さ×放射線の種類×臓器ごとの影響の違い)

放射線の種類と人体への影響とそれをどうやって防げるか

アルファー線 ・・・ 人体への影響大きい、でも、紙で防ぐことができる
ベータ線 ・・・ 人体への影響弱い アルミニウムなどの薄い金属板で防げる
ガンマ線 ・・・ 人体への影響弱い 鉛や厚い鉄の板で防げる
中性子線 ・・・ 人体への影響大きい 水やコンクリートで防げる(紙や金属板は通り抜ける)

 アルファー線は紙でも防げるとは言っても、アルファー線を出す物質を吸い込んだり飲み込んだりすると紙の代わりに内臓がエネルギーを吸収することになるので人体への影響は大きい。

一般論

 放射線の人体への影響は、放射線の強さや、どれくらいの期間浴びるか、身体のどの部分に浴びるかなどによって様々に変化し複雑です。大量の放射線を浴びた場合の急性的な障害については、JCOの臨界事故などのデータからある程度分かってきましたが、弱い放射線を長期間浴びた場合にどのような影響が出るのかは、その結果に影響を与える因子が多すぎ、また検討の材料になるデータもほとんど無いので実はまだよく分かっていません。

放射線の影響

・放射線の影響には確率的影響と確定的影響の2種類がある。

確定的影響

・「これ以下の放射線ならば浴びても影響が出ない」という許容される上限値がある。
・細胞が放射線の影響を修復する能力が放射線によるダメージに負けた時点で上限となる。負けた細胞は死滅する。

確定的影響ではどんな臓器にどんな障害が出るか

・骨髄障害・・・白血球の減少→吐き気・嘔吐・食欲不振・全身倦怠・めまい→白血球減少による抵抗力低下・血小板減少による出血→造血臓器の機能不全→死亡
・骨髄障害の対処・・・無菌室で感染症対策・白血球や血小板の成分輸血・骨髄移植による機能回復
・骨髄障害が出る程度の放射線を浴びると皮膚は脱毛や色素の沈着が生じる

・小腸障害・・・小腸表面の細胞を供給する肝細胞の損傷→脱水症状・電解質平衡異常・腸内細菌の感染
・小腸障害が出ている患者では骨髄障害もすでに発症している。
・小腸障害の対処・・・治療は困難(平均生存期間10〜20日)
・小腸障害が出る程度の放射線を浴びると皮膚は水疱や腫瘍が形成される。

・神経障害・・・神経細胞は放射線の影響を受けにくい性質がありますが、非常に強い放射線を浴びると神経細胞も損傷を受けます。神経細胞が損傷を受けるほどの放射線を浴びた場合には骨髄障害や小腸障害も発生し、患者は1〜5日で死亡する。

確率的影響

・浴びた放射線量が増えるほど発症の確率が上昇する。許容される放射線量は無いので、わずかでも浴びればわずかに確率が上昇する。
。放射線による突然変異が病気の原因。
・確率的影響の結果は、体細胞が放射線を浴びてガンが発症する場合と、生殖細胞が損傷して子孫に遺伝的影響が出る場合の2通り。
・日本人は30%がガンで死亡するため、放射線がどのように影響しているのかを判断することが難しい。
・原爆被爆者を対象とした易学的調査においてもガンの発症率の上昇は見いだせなかった。
・人間において確率的影響は確認されていない。けれど、動物実験では影響が観察されるのでおそらく人間においても影響はある物と思われる。

体外被曝と体内被曝

・体外被曝・・・体外に存在する放射性物質から出た放射線による被曝
 たとえば、地下通路にたまった放射性物質を大量に含む排水に近づいた場合の被爆
・体内被曝・・・放射性物質を体内に取り込んでしまい、お腹の中などに入った放射性物質が出す放射線で自分自身が被爆すること
 たとえば、地下通路にたまった放射性物質を大量に含む水を飲み込んでしまった場合の被爆
 体外被曝は皮膚が最初に損傷を受けるけれど、体内被曝では胃や小腸、呼吸で吸い込んだ場合は肺などの表面の細胞がダメージを受ける

 体外に付着した放射性物質は除洗などの除去作業で取り除くことができるけれど、体内に摂取した放射性物質は除去が難しい。放射性物質は体内に吸収され、血液の流れに乗って、特定の臓器に蓄積されることがある。こうなると、新陳代謝以外で除去するのは不可能。
  ヨウ素 → 甲状腺
  ストロンチウム → 骨
  プルトニウム → 骨・肝臓

ヨウ素を薬として用いる理由

 人体に悪影響の無いヨウ素を薬として服用し、あらかじめ甲状腺をヨウ素で満たしておく。事故により体内に摂取されたヨウ素が甲状腺には入れずに排泄され、被爆を減らすことができる。

ガンになる確率が高まる線量・・・100ミリシーベルト

放射線を浴びるとガンになる仕組み

・放射線が生殖細胞にダメージを与えると遺伝的影響となって市村に影響が出る(詳しくは分かっていない)、体細胞がダメージを受けるとガンになる。
・放射線がDNAに傷を付ける
・多くの場合は細胞に備わる修復機構で修復されて無害
・修復能力を超える損傷が起き、しかもそれが細胞の増殖制御に重要な役目を担っている場合はその細胞がガン細胞になることがある
・強い放射線を浴びすぎると、細胞が死んでしまうほど損傷を受けるのでガン細胞には変化できない
・けれど、強い放射線を浴びると免疫系の細胞が破壊され、生体防御機構が失われるので致命的な感染症となる(←JCOの場合)
・浴びる放射線量は同一でも、一度にそれを浴びると細胞は修復能力を超えた損傷を受けるけれど、少しずつ浴びれば都度損傷は修復されるので影響が出にくい。

放射線が細胞に与える不思議な影響

・弱い放射線を浴びると放射線に対する細胞の抵抗力が増すというデータもある
・弱い放射線は身体の免疫能力を高めるというデータもある

トップページに戻る

Science-Podcast.jp 制作






科学コミュニケーター 中西貴之(メール
アシスタント BJ

ヴォイニッチの科学書は
あなたの心に科学の火を灯します。

有料会員登録はこちらから

良くあるご質問 


ご案内
ヴォイニッチの科学書ポッドキャストは有料コンテンツです
    ▼ダウンロードしていただくためにはオーディオブック配信国内最大手オトバンク社の「FeBe!」でお手続きをお願いいたします。月額525円です。
▼このページの閲覧は無料です。
インターネットラジオ局くりらじより配信中の「ちょきりこきりヴォイニッチ」は無料です。
お知らせ

twitter twilog 
PS Home クラブ ヴォイニッチの科学書の使い方  
     
 
     


トップページ


本も書いてます



 このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。
 「ヴォイニッチの科学書」では毎週最新の科学情報をわかりやすく解説しています。番組コンセプトはこちらをご覧ください。>>クリック 

[この番組の担当は・・・]

ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長

 


↓こちらもご利用下さい↓

おびおのプライベートアカウント 科学の話題をポストする自動会話プログラム「ぼっとびお」