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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-156 開花を指令するホルモンをついに捕まえた 花成ホルモンの存在の可能性を最初に提唱したのは当時ソビエト連邦の植物生理学者チャイラキアン(M. Kh. Chailakhyan)で1936年のことでした。チャイラキアンは、花を咲かせる日照条件で育てた植物の葉を切り取り、花の咲かない条件で育てた植物に接ぎ木したところ、本来花が咲かないはずの条件にある植物にも花が咲くことを確認しました。これを見てチャイラキアンは「フロリゲン」と名付けたホルモンが存在すると考えました。しかし、その実体は過去70年間にわたり解明されないままでした。 シロイヌナズナの開花に関連する遺伝子のひとつが葉に存在するFrowereing Locus T遺伝子、略してFT遺伝子です。独立行政法人科学技術振興機構と京都大学の研究チームはFT遺伝子が開花促進作用を持つことに着目し、FT蛋白がそのほかの特殊な蛋白と結合することにより開花を制御していて、FT蛋白が「フロリゲン」である可能性が非常に高いることを2005年に報告しました。しかし、FT蛋白がフロリゲンであると断言するには葉で作られて、茎の先端に運ばれて作用することを証明しなければなりませんでした。 続いて、2007年4月16日、国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学の研究チームはイネのフロリゲンをフロリゲンとして世界で初めて発見したと発表しました。研究者らはシロイヌナズナの開花促進遺伝子であるFT遺伝子とよく似た遺伝子であるHd3a遺伝子がイネの開花促進作用を持つことに着目して研究を行い、花成ホルモンがHd3a遺伝子により作り出された蛋白質であることをつきとめたものです。 葉で作られたHd3a蛋白が茎の先端に輸送されることを示すために、緑の蛍光を発する蛋白質の遺伝子を目印となるように結合し、植物の体内で光るHd3a蛋白ができるように細工をしました。特殊な顕微鏡で観察したところ、Hd3a蛋白質は葉、茎の維管束、そして花を形成する茎の先端においても観察され、植物の栄養が輸送される維管束を通って茎の先端まで運搬されていることが確認されました。この結果によりHd3a
蛋白質がこでまでフロリゲンと呼ばれていた花成ホルモンであることが証明されたことになります。 ※詳細資料はまぐまぐプレミアムで配布中です。 [他局の科学番組] □ディスカバリーチャンネル |