インターネット科学情報番組
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Chapter-55 タイムマシンを作る 今回は2003年に草思社から発行された「タイムマシンをつろう」という本に沿って作り方を紹介します。この本の中ではタイムマシン製造のプロセスを4つのステップに分けています。 空間にワームホールを作ります。このワームホールを通り抜けることによって時間旅行が可能となります。具体的には「量子真空」という真空の量子力学的性質を利用して時空をゆがめ同時に得られる巨大なエネルギーでワームホールを作ります。量子力学はハイゼンベルクの不確定性原理に基づいていますので、非常に小さな世界で粒子の性質を見ると非常に不安定で相対的に大きく揺らいでいます。エネルギーは粒子の性質のひとつですので、それはすなわちエネルギーの値が予測できない状態にあるということになります。電子は自然界からエネルギーを借りることができるという性質がありますので、微細な領域で非常に短い時間において電子は巨大なエネルギーを得ることができます。アインシュタインの相対性理論によるとエネルギーと質量は同じものですので、巨大なエネルギーということは巨大な質量であるといえます。大きな質量の周辺の時空がゆがむことは太陽や人工衛星を使った観測によって確認されている事実ですので、この巨大なエネルギーを使えば大きく空間をゆがめ、ワームホールの構造を作ることができます。 具体的にはまずニューヨーク州ロングアイランドのブルックフェヴン国立研究所にあるような加速器を使えば可能です。この加速器は非常に高性能でビッグバンの1マイクロ秒後の宇宙を再現できるほどの性能です。この加速器を使って10兆度の高温状態の泡を作ります。10兆度の泡を作ることは可能ですがワームホールを作るにはまだエネルギーが足りません。空間は圧縮すると温度が上昇しますので高性能の圧縮機を使って10兆度の泡を圧縮し、ワームホールができるエネルギーすなわち温度とします。これに必要なエネルギーは普通の発電所の数秒間の出力で十分です。 圧縮されて高温になった泡は小さなワームホールを形成してそれをタイムマシンに使うことができます。唯一の問題点は発電所のエネルギーを微細な泡にうまく集中させることができるかどうかですが、現在素粒子物理学者が熱心に研究している「ヒッグス場」を用いることで解決できそうです。 また、スティーヴン・ホーキングの説によるとブラックホールの近くには負のエネルギーが普通に存在していることになります。ということは、ブラックホールの近くにタイムマシン工場を造れば容易に負のエネルギーを得ることができます。 ここから先は仮説ですが、エネルギー的にはブラックホールもワームホールも同じであると考えることができます。ということは、ワームホールを作った過程で負のエネルギーも独りでにできているかもしれません。この仮説が成り立つならさらに負のエネルギーを得ることは容易になります。 こうして人が通り抜けられるワームホールができましたので、いよいよこれをタイムマシンに変換する作業に取りかかります。 そのためにはいわゆる双子効果を利用します。双子効果というのは双子の兄弟のうち一人が光の速度に近い速度で飛行できるロケットで宇宙旅行をして戻ってくると二人の年齢に差ができるというものです。これは、高速で移動している物体は時間の進み方が遅くなるというすでに確認されているメカニズムで容易に実現できます。 つまり、ワームホールの両端の出口を双子の兄弟のそれぞれだと考え、ワームホールの一端を一カ所に固定し、反対側の端っこを光の速度に近い速さで動かしてやればいいことになります。幸い、すでに建造されている円形加速器は粒子をほぼ光の速度で飛行させることができますので、この装置を使ってワームホールの一端を高速飛行させます。たとえば、ワームホールの一端を10年間光の速度で飛ばし続ければ、10年後にはワームホールの端と端で10年の時間差ができていることになります。 固定していた側を「A」、回転していた側を「B」とすると、AからBに通り抜ければ出た先は10年前、逆に進めば10年未来ということです。 このタイムマシンが優れている点 過去にタイムトラベルできない タイムマシンそのものが私たちの時間の流れの中にある、目の前にいつも存在している。 |