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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-162 リンゴの褐変とホエールフォール リンゴを切ると断面が茶色く変色するのは酵素の作用によるもので、酵素的褐変と言います。最近ではあらかじめ調理されたサラダの流通などに伴って、カット野菜の褐変がクローズアップされています。一方、紅茶やウーロン茶などの発酵茶は酵素的褐変を製造工程に取り入れています。日本茶は葉を蒸すことによって酵素的褐変を防いでいます。 酵素的褐変の生じ方には次の2つのタイプがあります。 (1) 加工するとすぐに褐変する食品 (例:リンゴ) 酵素的褐変は酵素と褐色に変化する物質(褐変物質)の両方が存在する場合に発生します。リンゴは酵素も褐変物質も十分にあるため切断して細胞が壊れると同時に褐色に変化します。一方、レタスでは加工されて細胞が壊れることによって「損傷誘導」というメカニズムが動き始め、褐変物質の合成が始まります。 食品の品質を高めたり、食品を無駄なく消費してもらうために生産者は褐変の低減に努力していますが、その方法には加熱する、褐変防止作用があるアミノ酸などを添加するなどの方法がとられています。家庭ではリンゴを塩水につけることによって褐変を防ぎますが、これは塩素イオンの作用です。 また、遺伝子組み換えによって褐変酵素を取り除いたジャガイモや、培養レベルでは褐変しないリンゴなどを作り出すことにも成功していますが、遺伝子組み換え作物は法的な問題や安全性の問題、心理的な問題など普及には大きな障壁があります。 ホエールフォール 巨大な鯨が死んで海底に沈むとそこに独特の生物が集まった生態系ができていることが確認されたのは1987年のことでした。このような鯨の死体をホエールフォールと呼び、ここに生息する生物群のことを「鯨骨生物群集」といいます。鯨骨生物群集は鯨の脂質、有機物が分解される過程で発生する硫化物などをエネルギー源と利用しており、硫化物を利用する生物群の特徴は地球最古の生物群集の姿を今に残しているといわれる熱水噴出口の生物の特徴と一致しています。 ホエールフォールの生態系の寿命は数十年と言われており、鯨の遺骸を食べ尽くすと鯨骨に住む生態系は死滅してしまうことが知られています。したがって、ホエールフォールでのみ見つかっている生物がホエールホールで暮らし始める仕組みや、生育の仕組みはまだほとんどわかっていません。現在は、ホエールホール生物群の幼生が世界の海を漂っていると仮定して、地球規模の海流のルート上で海水を採取し、その中にホエールフォールの生物を見つけようとしていますが、今の時点ではまだ見つかっていません。 ※詳細資料はまぐまぐプレミアムで配布中です。 [他局の科学番組] □ディスカバリーチャンネル |