2011年4月16日
Chapter-336 人工肉
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オランダ、アイントホーフェン工科大学の研究者らは豚の筋肉の細胞を培養して人工の豚肉を作る研究をしています。ただ、研究の前途は多難で、今のところできあがっているのは白っぽくて張りの無い肉的な破片で、味も無いそうです。
食料生産コストについて菜食主義者と、肉を好んで食べる人で比較した場合、菜食主義者のための食料を生産するのに必要な水は、肉を食べる人の食料を生産するために必要な水のわずか35%ですみます。また、エネルギーも40%しか使いません。菜食主義がエコなのは肉を生産するためには家畜を飼うための飼料作物を育てなければならず、この効率が悪いためです。そこで、家畜の肉を現在研究中の人工肉に置き換えることができれば、水やエネルギーの消費は肉を食べながらも菜食主義者並みに抑えることができることが期待されています。
人工食肉の材料として、現在は筋肉の成長と修復に関与する成体幹細胞である筋衛星細胞を用いています。細胞の足場となる枠組みを使って筋衛星細胞を培養すると、成長した細胞は足場の上で細胞同士が融合して筋線維となり、これらが束になって筋肉を作ります。けれど、実験室で培養して作った筋肉は鍛え方がたりないので歯ごたえの無い肉にしかなりません。肉の歯ごたえを出すためには筋肉にタンパク質を付着させて肥大させなければなりません。そこで、培養して作った筋肉に運動をさせることにしました。有効なのは、実際の筋肉のように両端を束ねて形を作ることで、こうすると自然な張力が生じ、筋肉の収縮運動が生じ、タンパク質が著しく増加することが分かっています。
食肉にするには筋肉を量的にもたっぷりと育てることが必要ですが、足場の上で育った筋肉はある程度成長すると、内部の細胞は栄養と酸素が不足して死んでしまいます。この問題を解決するためには筋肉の中に血管も人工的に形成し、そこに栄養分や酸素をながさなければならないのですが、実現するのは困難そうです。そこで、とりあえずは死なない程度の多数の小さい筋肉片を育てて、細かく挽いてソーセージにすればよいと考えられています。
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