インターネット科学情報番組



科学コミュニケーター 中西貴之
アシスタント BJ

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[今週の Openig Talk]

■次期NASA長官のグリフィンさんがスペースシャトルを使ったハッブル宇宙望遠鏡 (HST) の補修作戦を再検討すると発表しました。
 実は HST はすでに満身創痍の状態でこのまま使用を続けると制御不能になって墜落する危険もあるため、制御が可能な今のうちに安全な海域に落下破棄しようという計画が進行中でした。宇宙望遠鏡については HST の後継機となる「ジェームズ・ウエブ宇宙望遠鏡が 2011年に打ち上げられることになっています。
 私たちにこれまで見たこともなかった宇宙のすばらしい映像を届けてくれた HST、なんとか地球に持ち帰って博物館などに展示することはできない物でしょうか。

■三菱重工業がマウスを宇宙旅行させることを計画中です。
 直径約30センチの居住区画を持った人が抱えられる程度の大きさ宇宙船にマウス6匹を搭乗させ、H2Aロケットで打ち上げ回収するのだそうです。この実験によって生命維持装置の性能や微少重力が生体に与える影響を研究します。

■生物時計を試験管内で再構成する実験に名古屋大学を中心とする研究チームが成功しました。
 生命現象を深く研究する際には細胞の中で起きていることを試験管内で再現させることが研究効率化のために必須ですで様zままなせいたいはんの卯が試験管内で再現されていますが、生物時計も必要なタンパク質を組み合わせることによって試験管内で再現できたので今後の研究の加速が期待できます。

[最近の放送]>>バックナンバー  
  
Chapter-61 延命薬はできるのか? 
Chapter-60 天気が悪いと腰が痛い・・・は本当?
 
Chapter-59 宇宙ラーメン  
Chapter-58 最新の宇宙探索成果  
Chapter-57 犬ががん検診をする時代が来るかも  
Chapter-56 ドクターイエローのテクノロジー  
Chapter-55 タイムマシンを作る  
Chapter-54 青いバラ  
Chapter-53 夢でシミュレーションする私たち  
Chapter-52 超高速インターネット衛星 WINDS 
Chapter-51 ビールに放射線防護作用が  

 

 

Chapter-62 ヒトの脳の進化は特別な出来事だった 
2005年4月16日

今週の放送を聴くダウンロードする次回の放送

 ヒトの進化は脳の大きさと複雑さの劇的な増加によって特徴づけられます(右図)。

 ラットもサルも同じほ乳類で8000万年前までさかのぼればいずれも共通の祖先を持っているのですが、その後の8000万年の間にラット、サル、ヒトはそれぞれ違った進化の道を歩みヒトだけが大きくて複雑な脳を手に入れました。同じ時間をかけて進化したにもかかわらず、脳にこれほどの違いがあるのはなぜなのでしょうか。

そんなことに関する研究成果が学術雑誌 Cell 2004 119: 1027-1040 に発表されました。

 この研究はシカゴ大学の研究チームによって行われ、得られた結論は「ヒトの脳と複雑さを調節する遺伝子はその生成物であるタンパク質を著しい速度で進化させたためにヒトは齧歯類(ラットなど)よりも複雑な脳を持つことが出来た」というものでした。

 地球上に存在したすべての生き物はさまざまな突然変異の結果から生きていくために有利な特徴(形質)を獲得しながら進化を続けていきました。その結果としてある生き物は巨大な体と強い歯を持つ肉食恐竜になり、あるものは陸上で生活するために肺を獲得し、またある場合には泳ぐ力を身につけて陸上から海へ戻ったものもいます。ヒトの祖先は・・・もちろん自発的ではないですが・・・より大きく複雑な脳を持つことによって他の動物よりも有利になる進化の道を選びました。つまり、より大きくて複雑な脳を持つ個体がより多くの子孫を残し、その結果、脳を大きく複雑にするメカニズムがヒトの集団の中に急速に広まっていきました。

 この研究では脳の発達に関与することが知られている遺伝子に着目し、ヒト、サル、ラット、マウスにおいてそれら遺伝子の変化の速度を調べました。その結果、サルとヒトの遺伝子の進化の速さはラットとマウスの進化の速さよりも明らかに速いことがわかりました。また、サルとヒトを比べた場合でも遺伝子系統の進化の速さはヒトの方が明らかに速かったということです。

 このことから、生物の進化の過程において、ヒトの脳が大きく複雑になる様に進化の圧力がかかっていたということができ、これはその他の生物に見られない非常に特殊な進化だったと結論づけることが出来ます。

 また、今回の研究の過程で、目立って進化の速い遺伝子群が見つかり、その遺伝子群に含まれる24個の遺伝子は脳の大きさを司る遺伝子と、ヒトらしい行動を行う命令を出す遺伝子であることがわかり、「アウトライヤー遺伝子」と呼ばれています。つまり、このアウトライヤー遺伝子がヒトの進化をリードしていた遺伝子だというわけです。

 人とサルが別れたのは2000万年前ですが、生命40億年の歴史からするとわずか0.5パーセントの期間にしかすぎません。このように短い間に人とサルの間に劇的な違いが現れたのは驚くべきことです。また、ヒトに限って言うならば約50万年前から脳の巨大化が始まったと思われます。また現代人が現れたのが15万年前ですので、わずか35万年の間にいわゆる原始人から現代人まで進化してしまったということです。なぜヒトにだけこのような進化の圧力が生じたのかは全くわかっていませんが、社会構造や文化を持っていたことが原因ではないかという説もあります。また、この脳の著しい進化は現在も止まっておらず私たちの時代においても脳は進化をし続けている様だとのことです。

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