Science-Podcast.jp
制作
このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-166 粘菌問題 粘菌細胞の中には細かく枝分かれした管状のネットワークが観察されます。この管の中を原形質つまり、タンパク質を含む細胞質が高速で大量に移動し、摂取した栄養分はこの管を通じて広大な細胞内に行き渡ります。この管は必要に応じて伸びる方向や太さを様々に変えることができます。管の形が変わるとゾルの流れる方向や量が変わりますのでそれが細胞の変形となって粘菌は移動します。この移動は目的を持っており、粘菌にとって不適切な環境から逃れたり、エサの多い環境を求めて移動したりします。脳も神経系も持たない単細胞生物がどのようにしてこのような情報処理を行っているのでしょうか。その答えは粘菌の迷路解きにあるようです。 2000年9月に日本の理化学研究所と北海道大学の研究チームが粘菌が迷路を解く能力を持っていることを世界で初めて発表しました。この発見は生物の情報処理機能の研究への新しいアプローチ方法の誕生とされました。 粘菌の迷路解き実験の方法については番組中およびプレミアムで紹介していますが、結論としては、スタート地点とゴール地点に置かれたエサの両方を最も効率よく摂取するために、原形質の配送ルートである管を両方のエサを最短距離で連結する状態に配管する行動をとることが人間から見ると迷路解きに見えると言うことです。これは数学的には「最短距離探索問題」といいます。 粘菌の管をよく観察すると本線とも呼べる太い管と、そこから分岐した細い管からなっていることがわかります。また、迷路を解いた粘菌の2カ所のエサを結ぶ管は太い本線ルートであることもわかります。これまでの実験から、この管は内部を流れる原形質の量が多いと太さが増し、少ないと退化していくことがわかっています。また、複数の2点間を結ぶ管がある場合、管の中の液体の流量は短い管の方が多いことが数学的に示されています。したがって、原形質の流量の少ない管を順次退化させることによって、最後に残ったルートが最も原形質の流量の多い、つまり二つの瀬差を結ぶ最短ルートだと言うことになります。 ※詳細資料はまぐまぐプレミアムで配布中です。 [他局の科学番組] □ディスカバリーチャンネル |