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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■「最新科学おもしろ雑学帖」が愛媛県の新居浜工業高等専門学校で読書感想文コンクールの課題図書に選ばれました
(2006年9月) [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-134 DNAの分解異常による関節リウマチ発症 生物の細胞にはアポトーシスという不要になった細胞を取り除くプログラムされた細胞死のメカニズムが組み込まれています。これまでの研究でアポトーシスの過程におけるいらなくなった細胞のDNAの分解は二つの段階を経て進行することを明らかにされています。 第一段階は死につつある細胞の内部でDNA分解酵素によるDNA分解が起こる DNase II遺伝子を大人になってから薬剤により欠失させることのできるようなマウスを作成し、成熟したこのマウスを薬剤で処理してDNase II遺伝子を除去すると、それに対応して、骨髄を中心とする体内のさまざまな組織のマクロファージにはアポトーシス細胞や赤血球から取り込んだDNAが未分解のまま大量に残り、マクロファージは活性化した状態で、リウマチの発症した関節と同様にTNFが産生されることがわかりました。 DNase II遺伝子を欠損させたマウスは歳をとるにしたがって、指先、手・足首、ひじ・ひざの順に、関節炎の症状を示し、これらの症状はヒトのリウマチ患者に認められる関節炎とよく似ています。さらに、血液中にもヒトのリウマチ患者で認められるリウマチ因子などが高濃度に認められました。 以上の結果は、アポトーシスで死んだ細胞や赤血球が骨髄から生み出される際に除去される核のDNAが正常に分解されず、マクロファージの中にたまってしまうと、マクロファージが活性化した状態が保たれてしまい、TNFなどのリウマチの原因物質が大量に放出されて関節炎の発症に至る可能性があることを明らかにしました。ただし、ヒトの関節リウマチが同じような原因で発症しているかどうかはこれから調べる必要があります。 |