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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■ポッドキャストアワード2006
で第一次審査を通過しました。 [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-128 久里浜アルコール症センターのアルコール外来を受診した患者の初診カルテの解析によりアルコールの摂取に伴って発症する二次的な疾患について調べたところ、男性では消化器疾患が受診者の35.0%に見られ最も高く、次いで精神・行動障害が16.0%でした。一方女性では精神・行動障害が28.5%で最も高く、消化器疾患は2番目で24.8%でした。 妊娠中の女性が飲酒をすることによる胎児への影響については、妊娠中の母体がアルコールを摂取することによる先天異常である胎児性アルコール症候群と呼ばれる疾患が知られています。欧米では500人〜3000人の胎児に一人の割合で発症する比較的頻度の高い先天異常として知られていますが、日本では胎児10000人から20000人に一人の割合でしか発症しない珍しい疾患として扱われていて、日本における発症の実態は明らかになっていません。 神奈川県立こども医療センターのチームによる報告によると約4万例の先天異常に関する調査を行ってタバコとアルコールが奇形児の出産にどのように関わっているかを報告しました。その結果、妊娠中の女性が喫煙することによって奇形児が生まれるリスクはタバコを吸わない母親の1.4倍で、胎児の体重に関しては両親共にタバコを吸わない家庭と、両親がタバコを吸う家庭で比べたところ明らかに両親がタバコを吸う家庭では体重の軽い赤ん坊が生まれることがわかっています。一方、妊娠中の母親がアルコールを飲むことによって奇形児が生まれるリスクはアルコールを飲まない母親のリスクに対して1.05倍で、アルコールを飲むことによって奇形が催されるとは言えない結果となりました。この理由について、女性の喫煙は若年化が進行しているが、飲酒に関しては妊娠適齢期の25歳から29歳の女性の飲酒率は低く、アルコールは遺伝子的に摂取できない日本人が多いけれど、タバコにはタバコを吸えない遺伝子という物は見つかっておらず、アルコールに比べて喫煙は母親にとっての負担が少ないため摂取する可能性が高いためと考えられます。しかし、アルコールが妊婦にとって無害であることを示しているわけではないとも述べています。 一方で、妊娠中の母親の飲酒が胎児のサーカディアンリズムを壊すという調査結果も発表されています。妊娠中にアルコールを摂取した母親から生まれた子供では学習障害や睡眠障害、摂食障害窓の行動異常が見られることがあります。ラットを用いた研究によると、アルコールを摂取した母親から生まれた子供ラットは24時間の1日のサイクルにあわせて体内時計をリセットすることがうまくできないことがわかりました。まだメカニズムはわかっていませんが、母親の飲酒によって、毎朝体内時計を調節することができなくなり、1日のサイクルが社会の動きとずれてしまうために、学習障害や睡眠障害、摂食障害などが起こるものと考えられました。 [最新科学おもしろ雑学帖で健康に関連する話題は] |