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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■翔泳社”ポッドキャスティング入門”でオススメ番組として紹介されました。 [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-106
ブラックホールの最大の特徴はその質量ですが、ブラックホールは質量によって次の3つに分類することができると考えられます。 ・最も軽い10億トン程度のミニブラックホール 最も良く研究されている太陽の10倍程度の質量を持つブラックホールは恒星の進化の最終段階であると思われます。太陽のように安定して輝いている恒星は内部の核融合反応で放出されたエネルギーと自身の重力が釣り合うことによって形を維持しています。核融合反応が進行すると内部は水素から順次重い原子に変換され最後は鉄の原子核の塊となりますが、この段階では自身の重力が勝るようになり、収縮を始めます。星の一生におけるこの先は恒星の質量によって異なり、太陽程度の恒星は収縮の後逆に急速に膨張し、恒星の構成成分の大部分を吹き飛ばす超新星爆発を起こし、中性子星となります。恒星の質量が太陽の10倍以上ある場合には恒星の構成成分はさらに中心部に向かって落下し、最終的にブラックホールになります。 逆に10億トン程度しか重さのないミニブラックホールはその大きさは10兆分の1センチメートルほどしか無く、現在私たちが観測している宇宙では生まれないと考えられており、宇宙が誕生した頃の密度の揺らぎによって生成していたと予測されています。 超大質量の巨大ブラックホールについてはその形成過程は未だ謎のままです。しかし、その存在自体は決して珍しいものではなく、現在の研究成果ではほとんどすべての銀河の中心は巨大ブラックホールであることがわかっています。 巨大ブラックホールは日本の国立天文台の研究チームによって1993年と1995年の科学雑誌ネイチャーにその存在が発表されました。この時は近傍の銀河中心領域を電波で観測し、太陽質量の4000万倍の塊があることを発見しました。その後の観測により、太陽系が所属する天の川銀河の中心にも太陽の300万倍の質量を持つブラックホールが存在していることが2003年に発表されました。これは天の川銀河の中心付近を十数年の公転周期で回っている天体を観測した結果得られた軌道の計算によって予測されたものです。 天の川銀河は非常に静かな銀河であると考えられますが、銀河のうち数パーセントはその中心領域から膨大なエネルギーを放出しており、これを活動銀河核と呼びます。この膨大なエネルギーの源も巨大ブラックホールです。宇宙空間には星間ガスと呼ばれる大量の物質が浮遊していますが、活動銀河核の周辺では星間ガスが高速に近いような驚くべき勢いで巨大ブラックホールに吸い込まれており、落下の際にガスの分子同士の摩擦でガスは数十万度まで加熱されこのエネルギー(正確にはガスがブラックホールに落下する際に放出される位置エネルギー)を電磁波として放出しているのです。 宇宙好きの方は「セイファート」や「クェーサー」という天体を知っていると思いますが、セイファートはこの活動銀河核のうち、巨大ブラックホールが比較的小さな銀河の名称で、クェーサーはブラックホールが大きく明るい銀河の名称です。
巨大ブラックホールの誕生と成長についてはよくわかっていませんが、不思議なことに宇宙誕生のわずか10億年後には巨大ブラックホールが存在していたことがわかっています。はくちょう座X-1のようなブラックホールはその誕生に数十億年を要することがわかっています。それよりも非常に短い時間で非常に大きなブラックホールに成長することができた理由はおそらく、宇宙誕生直後は星間ガスの密度が現在よりも非常に高かったため、ブラックホールの種に急速にガスが吸引されてブラックホールが急成長したものと思われますが、銀河中心部は星の密度が高いため、次々に天体を吸収して成長したという説や、宇宙初期はブラックホールの密度が高く、ブラックホール同士が次々に合体したという考え方もできますが、詳細はわかっていません。 「最新科学おもしろ雑学帖」の関連ページ アメリカ惑星協会は地球外知的生命体の探索(SETI: Search for Extraterrestrial
Intelligence)を目的とした口径1.8メートルの光学望遠鏡がマサチューセッツ州オークリッジ天文台に完成したと発表しました。アメリカ惑星協会はこれまで宇宙から受信した電波をインターネットに接続した登録者のコンピューターの空き時間でデータ処理を行うグリッドコンピューティング技術で解析する「SETI@home」などに取り組んでいました。これまでのプロジェクトは電波望遠鏡を活用して、知的生命体の住む星から漏れ出てくる電波を傍受しようという発想でしたが、今回完成したのはSETI専用光学望遠鏡で地球外知的生命体が発するレーザー光線などの検出を目指すことになります。地球外知的生命体が地球に向けて通信を試みるならばレーザー光線などを発するのではないかと考え、それらの光線は星からの光とは区別して検出することが可能であると思われます。光は電波よりも発信源を特定しやすいという説もあるため、今後のSETIプロジェクトには大きな期待がかけられています。 [五重塔が地震に強い理由はまだよくわからない] 五重塔は地震で倒壊した記録がないと言われていますが、その耐震性の説明は諸説あります。しかし、実際の五重塔では、大地震時の挙動を工学的な観点から測定、観察が難しいこともあり、未だ解明されたとは言いがたい状態です。そこで、独立行政法人防災科学研究所が高さ6.7メートルの法隆寺に代表される飛鳥様式の五重塔の5分の1模型を作成し、震度5に相当する地震を加えてその耐震性のメカニズムを探る公開実験を行いました。その結果、耐震性の有力説の一つとされてきた「心柱(しんばしら)振動吸収説」では耐震性が説明できないという結果が出ました。心柱は塔の中心を貫く太い柱ですが、心柱を忠実に再現した状態、心柱を取り外した状態、心柱を接地させず1階のはりの上に建てた状態などで震度5強の揺れを与えた結果、いずれの場合も屋根の上の輪飾りが大きく揺れ、扉の一部が外れるなどしましたが、倒壊はせず、心柱の状態にかかわらず振動を止めると塔はすぐに復元したため、心柱の有無は耐震性に大きく影響しないと結論づけられました。五重塔の耐震性については、心柱説の他に、五重構造自体の弾性が揺れを受け流す「柔構造説」などもあり、今回の実験によっても本当の理由をつきとめることはできませんでした。
[エンディング・他局の科学番組放送予定] |