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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■翔泳社”ポッドキャスティング入門”でオススメ番組として紹介されました。 [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-96 産業技術総合研究所発行の広報誌「産総研TODAY」に、微小人工骨ユニットの集積による自由な人工骨の設計と製造モザイク人工骨の提案という記事が掲載されました。これは、“モザイク人工骨”形成法という新しい製造プロセスです。このプロセスの特徴は、1)微小な人工骨ユニットを集積化することにより、人工骨を望みの形状にデザインできる、2)集積体内部に人工骨ユニット間隙からなる連通空間ネットワークを構築できる、という点にあります。このときの連通空間の形状は、用いる人工骨ユニットの形状を選択することによって、制御することが可能です。 図1 球状人工骨ユニット(HAビーズ)を利用して作製したモザイク人工骨 同じく産業技術総合研究所の2006年2月7日のプレスリリースで空気以外何も存在しない空中に立体的な絵を描くことに成功したと発表されました。空中に描画を行う装置は集光レーザー光で空間の狙った一点の空気をプラズマ化し発光させるもので、レーザー光の焦点位置を3次元空間中に制御することで空中に実像としてのドットアレイからなる3次元映像の表示を実現できます。空気が発酵しているのは本の一瞬ですが、人間の目には残像現象があるため普通のドット絵のように見えるそうで、プレスリリースの中ではらせんのような図形や、数字、蝶のイラストなどが披露されています。
2006年2月3日の読売新聞によりますと、人間の肌や髪などを黒くし、紫外線を吸収して紫外線から人体を守る作用のあるメラニン色素を作る酵素「チロシナーゼ」の3次元分子構造が広島大大学院医歯薬学総合研究科の杉山教授らのグループによって世界で初めて明らかになりました。メラニン色素はアミノ酸の一種であるチロシンから作られますが、チロシナーゼはその最初の段階を触媒する酵素です。この構造を元にメラニン色素の生成を妨げる効果的な物質を開発することができるかもしれません。 [天の川銀河の構造に関する新発見] 2006年1月12日、ペンシルバニア州立大学の天文物理学者らからなるスローン・デジタル・スカイ・サーベイの研究者らは、天の川銀河にこれまで発見されていなかった巨大な星の集団が随伴していることを発見したと発表しました。 発見された星の集団は地球から3万光年離れたところにあります。3万光年という距離は私たちの地球から天の川銀河の中心までの距離が2万8千光年ですのでほぼ同じです。ただし、この星の集団は天の川銀河の中心とは違う方向にあります。この星の集団は、かつて天の川銀河の重力に捕まって取り込まれる際に破壊された小さな銀河の残骸のようです。その銀河の残骸は、10万個もの恒星が地球からの見かけで満月の5000倍近くもの範囲に広がっていますが、その明るさはかすかなものです。また、この星の集団は天の川銀河の一部分に見えますが、天の川銀河を構成する3つの構造、すなわち太陽系が含まれている円盤部分、銀河系中心のバルジと呼ばれる恒星が非常に高い密度で存在する部分、銀河系を取り巻くように天体が球状に広がったのハローのいずれにも属しません。このことからもこの星の集団が別の銀河由来であると研究者らは考えています。 これらの星は非常に広い範囲に広がっていてしかもあまり明るくないので、この新しく発見された星の集団に含まれる天体のいくつかは、別の銀河由来のモノであるとは知らずに何世紀も前から観測されているものもあります。 私たちの天の川銀河はこんな形であろうと予測されている
NGC3949 私たちから北斗七星方向に 5000万光年の距離 スローン・デジタル・スカイ・サーベイはもともと地球から遠く離れた宇宙空間の広い領域を調べるために、宇宙の広い領域を網羅的にこれまで行われていなかったような精度で観測したデータを蓄積していましたが、このデータを元に星の見かけの明るさと星の色から、これまで4800万個もの恒星の一を特定し、北半球の四分の一に相当する天の川の立体地図が作成されました。その結果、75000光年離れた位置に天の川銀河を周回するような軌道を描いて星を後ろに引きずりながら銀河の円盤に沈んでいく別の銀河の存在が過剰な星の集合体として浮かび上がったのです。アンドロメダ銀河から天の川銀河を見ると、十分に成長して安定した形の渦巻き銀河、あるいは、中心部にわずかな棒状構造をもつ棒渦巻き銀河であると思われています。その外周部分に、外部の銀河を取り込みつつあるような不規則な構造がくっついているようです。ただ、アンドロメダ銀河にも同様の星の集団がいくつか見つかっていますので、銀河系やアンドロメダ銀河などの巨大銀河の周辺には小さな銀河がたくさん存在しており、それらを取り込みながら銀河は成長しているようです。 ひょっとするとこのような棒渦巻き銀河かもしれない。NGC613 さて、この発見の元になったスローン・デジタル・スカイ・サーベイとはこれまでになく精密な宇宙の立体地図を作ろうとするプロジェクトで、全天の4分の1にわたって5つの波長でくまなく観測し、1億個以上の天体の位置と明るさを測定して詳しい地図を作る事を目的としています。また、銀河系の外、あるいは宇宙の遙かか彼方にある100万個の銀河と10万個のクエーサーの距離も測定します。このデータを研究者が各人の目的に応じて解析することにより、宇宙の大規模構造, 銀河の誕生と進化, 暗黒物質(ダークマター)と普通の物質の関係, わたしたちの住む銀河系の構造, 太陽のような星々を作る原料となる星間物質の性質とその分布などの研究を行うことができます。 特に近年、ダークマター、ダークエナジーが何なのか、どこにどれだけあるのかを解明しようとする研究が盛んですが、この点についても暗黒物質の重力が見えている天体の構造に与える影響、つまり、銀河の動きを注意深く調べることによって、宇宙空間にどこにどれほどの物質があるのかを調べることができます。私たちが観測できる普通の物質の量とそれがある場所は容易に予測できますので、そこから未知の物質の状態を予測することができます。
[エンディング・他局の科学番組放送予定] |