インターネット科学情報番組
このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。 [今週の Openig Talk] ■ [最近の放送]>>バックナンバー [この番組の担当は・・・] |
Chapter-74 アクチビンによる発生分化 受精卵が生体になる初期の段階において、様々な臓器・器官がたった一個の細胞の分裂によって形作られますが、どの細胞を何の臓器にするかということを制御している物質はアクチビンAと呼ばれるタンパク質です。アニマルキャップと呼ばれる未分化細胞の塊を適度なアクチビンAの存在下で培養すると、添加したアクチビンAの濃度に応じた臓器が試験管内で形成されます。 アクチビンAの受容体には数種類あり、濃度に応じて反応する受容体がかわるため、たとえば、培養液一ミリリットルあたり、〇.五ナノグラム(一ナノグラムは一グラムの千分の一の千分の一のさらに千分の一の極微量)以下のわずかなアクチビンAを添加すると血球が、それを超えて一〇ナノグラム程度の添加で筋肉や神経が、五〇ナノグラム程度では脊索が形成され、さらに高濃度に添加すると拍動する心臓ができます。アクチビンAにさらにレチノイン酸を加えるとネフロンと呼ばれる腎臓機能の中心を担う構造ができ、これをマウスに移植すると腎臓として正常に機能します。こうして作られた臓器は脳、眼、筋肉、小腸、肝臓、心臓など十種類を超えています。 このようにざまざまな臓器を試験管内で作ることができるだけでなく、カエルを使った実験ではアクチビン処理の後、培養の方法を工夫することによって頭や胴体を試験管内で作ることもできました。このオタマジャクシの体の一部には眼や鼻なども備わった外観はもちろん、脳も形成されているなどその内部の臓器の配置も普通に発生したオタマジャクシと全く同一のものでした。 現在はウシやカエルなどでアクチビンAの機能が研究されていますが、ウシにおいてはアクチビンAの濃度が初期の胚の発生速度をプラス側に制御していることがわかっています。 |