インターネット科学情報番組
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Chapter-67 慢性疲労症候群 慢性疲労症候群とは・・・ 慢性疲労症候群にかかると発熱やノド痛、リンパ腺の腫れが生じますし、集団的に発生することもあるのでこの病気はウイルスなどによる感染症ではないかと疑われていました。しかし一方では、集団は全員が同じような環境にあるため同じようなストレスを受ける社会的・精神的問題が原因だという考え方も示されています。今回はウイルスに着目して紹介します。 慢性疲労症候群との関係が深いのではないかと思われているウイルスにエプスタインバーウイルスがあります。 このウイルスによる感染症は大変よくみられる病気で、米国成人の95%近くが感染しているといわれています。たいていはかぜや他の軽いウイルス感染症に似た症状を起こしますが、普通は1ヶ月程度で治癒してしまいます。ところが一部の人では微熱や全身倦怠感が出るようになり、慢性疲労症候群と全く同じ症状を呈するようになります。それで、慢性疲労症候群はエプスタインバーウイルスが原因ではないかと考えられるわけです。 慢性疲労症候群に関与している可能性のあるウイルスは他にもあってボルナ病ウイルスもその一つです。これは200年前から馬の病気として知られていたウイルスですが1985年になって人に対しても精神・神経疾患の病原性を持つことがわかってきました。 そこで、このウイルスと慢性疲労症候群の関係を調べるために慢性疲労症候群の血液中の抗体検査を行ったところ、健常人ではボルナ病ウイルスの陽性反応を示す人はほとんどいなかったですが、慢性疲労症候群の患者においては3人のうち1人が陽性反応を示しました。このことから少なくとも一部の慢性疲労症候群の患者にはボルナ病ウイルスが関わっているのではないかと考えられています。 話は変わって、米軍には湾岸戦争後遷延性疲労患者と呼ばれる患者が多くいて、湾岸戦争症候群という原因不明の病気が定義されて、多くの患者がマイコプラズマに感染していることがわかりました。この患者に適切な抗菌薬を投与したところ7割の患者の治癒に成功しました。 ここで、湾岸戦争後遷延性疲労と慢性疲労症候群の症状が非常に似ていることが知られており、慢性疲労症候群患者の培養細胞を電子顕微鏡で調べたところマイコプラズマが存在していることが確認されました。ということは慢性疲労症候群は抗菌薬で治療することが出来る可能性があるということです。ただし、現時点では、抗菌薬による慢性疲労症候群の治療はデータ不足のために否定的に考えられています。 もちろん社会的・心理的ストレスも無視することは出来ず、ストレスによって免疫系のバランスが崩れ、元々感染していたウイルスが免疫による生体防御を突破して活性化し、インターロイキンなどのサイトカインが異常に作り出され、神経細胞に異常が生じ、異常な疲労感が遷延化するのではないかと考えられます。 慢性疲労症候群にかかってしまっても、日本には疲労に関する専門外来がほとんど無く、また、病気として認識されずにナマケモノの扱いを受けてさらにストレスが増しより一層免疫系が崩れ病状が悪化してしまうことも少なくありません。 また、医学的な統計データがあるわけではありませんが、冒頭で紹介した中学生のように、大人も含め仕事や勉強ができてまじめな人が突然発症するケースが多くあり、身体は動かなくても精神状態はまじめなまま正常な状態が保たれているので自分で自分を「なぜ仕事に行けないのか」「自分はナマケモノになってしまったのか」と責めるようになり、このことが回復を遅らせていると考えられます。 また、医師が診察してもあらゆる検査結果が正常と出てしまうために正しく対処できない医師が多い・・・というか、患者が専門外の医師にかかってしまって対処が出来ないことが多いことも問題です。 |
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