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Chapter-27 汚れたシャワールームのカーテンは思いも寄らぬトラブルのもとだという研究成果を米国のコロラド大学ボールダー校の微生物学者が発表しました。この研究者によると、シャワールームのカーテンは、いやな感染症を起こす可能性のある細菌でいっぱいなのだそうです。 この研究者は、人間の周囲に住んでいる微生物の世界について研究をしているが、自宅のシャワールームのカーテンにこびりついている汚れを顕微鏡で観察したところ、その汚れは細菌でいっぱいであることに気が付きました。 この細菌のDNAを調べたところ、細菌の約80%はスフィンゴモナス(Sphingomonas)とメチロバクテリウム(Methylobacterium )という2グループのどちらかに属していることが分かりました。どちらのグループにも日和見感染する細菌が含まれており、傷口に感染したり、免疫系が抑えられている人、高齢者などは病気になる恐れがあります。ただし、健常人であればほとんどの場合何も危険はありません。また、この細菌は人間の身体から出るアカや咳などに含まれる有機物を栄養にして増殖しているらしいこともわかりました。 番組内で取り上げた参考書籍 清潔大国ニッポン 日本社会がひたすら「無菌化」を推し進めてきた結果、アレルギー性疾患が増え、エイズをはじめとする様々な進行感染症の出現や結核などの再興感染症の増加をもたらした。つまり、「無菌化」人間と微生物の間の共生のバランスを壊してしまい、日本人に免疫力の低下が起きています。 かつて、1960年代のアメリカで似たような発想に基づく「ゴキブリ撲滅運動」が起き、住環境を徹底的に無菌化する活動が盛んになったことがありますがその結果はポリオ(小児麻痺)の大流行という悲惨なものでした。 もちろん今の日本においてもゴキブリやハエを目の敵にする人がほとんどですが、清潔大国ニッポンでは、そもそも、ゴキブリやハエが運ぶ病原菌そのものがいなくなって、単なる動きの速い黒い生き物、単なる空を飛ぶ昆虫になってしまっています。 たとえばウォシュレット。肛門のまわりには共生菌がいて、糞便中の雑菌が感染しないように守っているのだがウォシュレットの普及で肛門のまわりがきれいになってしまい、ちょっとした雑菌にも感染して痛みを伴うようになってしまっています。 日本の戦後の清潔志向は年々度合いが強まり、細菌では人間が生きていくために必要な「共生菌」まで排除しはじめました。その「バイ菌の排除」という発想が「異物の排除」に発展してしまったのではないかと筆者は締めくくっています。 |