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ライブ & MP3orREALオンデマンド & ポッドキャスト 世界初の日本語科学情報 PODCAST 番組 科学コミュニケーター 中西貴之(メール) アシスタント BJ
このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■iTunesミュージックストア Podcast部門で全 Podcast番組中第2位の聴取数となりました (2006年7月3日) [バックナンバー] [この番組の担当は・・・] |
Chapter-117 熱中症の季節になります。これから気温が上昇する季節になると、暑さのために様々な体調不良が発生する可能性があります。熱中症は死に至ることも珍しくありませんが、そのような危機的な熱中症は次のようなケースで起きます。 熱中症はおおむね次のような経緯をたどります。 程度が軽い状態では、数秒程度の失神、脈拍が速く弱い状態になる、呼吸回数の増加、顔色が悪くなる、唇がしびれる、めまいが起きたりします。 さらに症状が進むと、軽度の時に見られる症状がいくつも同時に出るほか、顔面蒼白、異常なほど多い汗、血圧低下などが起きます。これは水分や塩分が身体から急速に失われて、全身の循環が悪くなり、酸素やエネルギーが極度に不足するためです。この状態に至った場合は適切な対応を速やかにとることが生死を分けることになりかねません。 重症になると、体温調節中枢が麻痺し、全身に障害が発生します。さらに進行すると、血液が固まってしまい、全身の臓器が機能しなくなって多臓器不全で死に至る危険性が高くなります。 予防法としては、熱中症は習慣性があるといわれていますので、自分自身が熱中症になりやすい体質かどうかを十分理解し、健康管理をすると共に、まわりの熱中症に強い人間につられて行動しないこと。塩分も補給可能な飲料を十分とること。水、水に近い飲料は体液を希釈してかえって身体の水分を失わせますので飲んではいけません。ビールなどの利尿作用によって身体の水分を出す働きがあるので残念ながら熱中症予防にああまり効果がなさそうです。 脳は自分の身体に起きる時系列の変化を予測している 科学技術振興機構と順天堂大学の共同研究です。 研究チームは、右手と左手に少し時間をずらして刺激を加える、という作業を何回も繰り返すと、左右の手に同時に与えた刺激が、繰り返した刺激と同じ順序に感じられるようになることを見出しました。 この実験で、右手に先に刺激を与えることを繰り返すと脳が右手の刺激の方が先だ、ということを予測して反応するようになり、左手に刺激を与えた後、50〜60ミリ秒程度遅れて右手に刺激を与えたときに、左右の手に同時に刺激が与えられたと判断するようになりました。つまり、右手と左手を同時に刺激する右手が先と感じられるようになったということです。 物理的に同時に起こった刺激が、それに先だって繰り返し行われた刺激の順序に引きずられて解釈されるようになったのです。この実験結果が示していることは右手と左手の皮膚に加えた刺激の順序をできるだけ正しく判断するために、脳がベイズ推定と名付けられた巧妙な推定法を使っているということです。 ある種の神経性の疾患は、脳による予測機能が正常に働いていないために起きている可能性が示唆されており、病気と時間順序判断能力の関係を明らかにすると共に、ベイズ推定のメカニズムに与える影響も調べる予定です。 一方、今回の実験からわかったように、ベイズ推定は事前にどのような現象、今回の例だと右手に先に刺激が加わった後に左手に刺激が加わる、その状況が常に同じであれば外界からのノイズを上手に除去して刺激を認識しますが、状況が変わってしまうと、今回の例では先に左手を刺激したのに左右同時に刺激されたと感じてしまう、間違いが増えることにも注意が必要です。これは「新しい状況下では人間は過去の経験に引きずられて誤りを犯しやすい」ことを意味しています。スポーツのフェイントなどでは、このような人間のベイズ推定の傾向を逆手に取っているかもしれません。この観点から、一流アスリートの能力や技を分析するのも興味深いテーマです。さらに本研究の成果は、事故を未然に防ぐための対人技術の考案にも役立つことが期待されます。
[エンディング・他局の科学番組放送予定] |