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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■ポッドキャストアワード2006
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Chapter-127 矮惑星というのは、国際天文学連合(IAU)が2006年8月24日に採択した第26回総会決議の中で惑星と同時に定義された太陽系の天体の新規な分類です。これによって太陽系の太陽以外の天体は「惑星」「矮惑星」「衛星」の3つとそれ以外をすべて含む「太陽系小天体」の4つに分類されることになりました。なお、矮惑星と太陽系小天体は暫定的な日本語訳で正式な日本語訳は今後検討されます。 観測技術の進歩により、1990年代から海王星以遠で様々な天体が発見されはじめ、その中には冥王星に似た性質を持つものも含まれていました。これらの天体はエッジワース・カイパー・ベルト天体と呼ばれていましたが、果たして冥王星はこれらエッジワース・カイパー・ベルト天体の中で独自性を持ってその他の太陽系惑星の仲間といえるのかと考えてみると、どうも、冥王星はエッジワース・カイパー・ベルト天体に含まれる多くの似たような天体のひとつなのではないかと考えられるようになったのでした。 惑星の定義について考察することは、単に冥王星の取り扱いを決めるだけではなく、majorityとminorityを区別することによってそこに働いている支配的な物理を解明することにつながり、そのまま大きな天文学の進展に繋がります。そして、惑星とは何なのか、それ以外の天体とどのように区別されるべきなのか、という観点の元に本格的な議論を行い導き出された新たな定義は近年研究の進んできた太陽系形成の問題と大いに関わってくることになるはずのもので、今後は彗星や系外惑星の話とも無関係ではなくなるかもしれない重要なものだということです。 地球や火星などに適用される惑星の定義と、新たに定義され冥王星が含まれることになった矮惑星の定義を比べてみますと、惑星は太陽の周りを回わっていなければなりません。矮惑星もこれは同じ。 惑星はじゅうぶん大きな質量を持つので、自己重力がその天体に働く他の種々の力を上回った結果、ほぼ球となります。これも矮惑星も同じく重力で球体になっていなければなりません。 次の定義として、惑星はその軌道の近くではそれだけが際だって目立つようになった天体であるとされています。矮惑星はこの点が異なっていてその軌道の近くに多数の他の天体があることが定義になっています。 また、注釈として惑星とは水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の8つであると明示されています。 冥王星は太陽系の惑星とはその性質がかなり異なっていることがすでに知られていました。まず第一に公転軌道の形や傾きが全く違っていて、太陽系の惑星の公転軌道はほぼ円ですが、冥王星は大きな楕円で、太陽に最も近づくと一つ内側の惑星の海王星の軌道よりもさらに内側に入ってしまいます。最近では1979年から1999年の間は海王星の内側に軌道がありました。ただし、海王星と冥王星は公転周期が共鳴状態になっています。この共鳴状態とは海王星が太陽の周りを3周する時間と冥王星が太陽の周りを2周する時間がぴったりと一致しているという意味で、この共鳴によって冥王星の軌道が海王星の軌道の内側に入っている期間は海王星は必ず太陽を挟んで冥王星とは反対側に位置していますので大きくゆがんだ軌道ですが、海王星と冥王星が衝突したりすることなく安定に保たれています。 また、冥王星の直径は2306キロメートルしかなく、月の直径3476キロメートルよりもさらに小さな天体です。さらに、太陽系の惑星は岩石またはガスからできていますが、冥王星は窒素・一酸化炭素・メタンなどの氷の塊でできています。その楕円形の軌道からしても惑星と言うよりは彗星に近い存在でした。 このように科学的根拠に基づき冥王星は矮惑星となりましたが、それは決して「降格」などというものではなく、太陽系の起源の謎に迫るキーを担った海王星外天体の代表として認められるものです。 [最新科学おもしろ雑学帖で今回の番組関連する話題は] |