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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。 ■ポッドキャストアワード2006
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Chapter-125 動物を1日のうち一定の時刻でのみエサを食べることができる環境で飼育すると、脳の中のある部分が1日周期で変動することが発見されました。これまですでに体内時計と呼ばれる1日周期で脳の機能が変動する部分は知られていましたが、今回、エサを食べることができる時間と関連して周期的に活動が変化した部分は、これまで知られていた時計遺伝子の存在する場所とは異なる部位でした。つまり、これまで特定されていなかった脳内の部位で時計遺伝子と同様の1日周期の変動が生じ、生存に必須なエサを食べる行動をエサが与えられる時刻に合わせるように制御することが発見されました。 全ての哺乳動物は、様々な行動パターンを24時間周期で制御する体内時計を持っています。現在では体内時計は全身にちりばめられていることがわかっていますが、これら無数の体内時計を同期させているマスタークロックは脳の中の「視交叉上核」というところにあることがわかっています。 マウスなど夜行性の動物の場合、いつでもエサがある状態で飼育すると、昼は眠って夜にエサを食べるという野生状態と同じ行動パターンを取ります。しかし、エサが昼間の一定の時間帯でのみ食べることができるような飼育をすると、マウスは行動パターンを変化させ、エサのある昼間に行動しエサを食べるようになることが知られています。 これも時計遺伝子によって成業されているのだろうと思われましたが、不思議なことに視交叉上核を人為的に破壊したマウスで同様の実験をしてもエサを食べる周期は変わりませんでした。つまり、エサを食べろと指示するいわゆる腹時計はマスタークロックである視交叉上核とは別の場所にあるらしいのです。けれど、その詳細についてはこれまで全く不明でした。 今回研究チームは、エサをあらかじめ大量に与えておき食べたいときに食べられる状態で飼育したマウスと昼間の一定の時間帯でのみエサを食べることのできる環境で飼育されたマウスからそれぞれ脳を取り出して、時計遺伝子の活動を時間ごとにあらゆる脳部位でくまなく比較しました。その結果、昼間の限られた時間だけエサを食べられるマウスでは脳内の視床下部背内側核と呼ばれる場所において、ある種の時計遺伝子が24時間周期でスイッチオン・オフし始めることを見出しました。この部分は野生のマウスでは機能していない部分でした。 つまり、本来の野生状態に近い環境にマウスがある場合にはマスタークロックである視交叉上核の指示によってエサを食べる行動を取るけれども、人為的に環境が変えられてしまうと、視床下部背内側核のクロックが視交叉上核からの制御指示に反してマウスが生存するために必要なエサを食べる周期の指令を出すということになります。 ただし、24時間という大きな時間の流れは依然としてマスタークロックによって支配されていると思われますので、この結果から、生き物がエサを食べる周期というのは、野生状態では視交叉上核のマスタークロックによって制御されているものの、その状態ではエサを食べることのできない緊急事態にはマスタークロックの作り出す時間情報を視床下部背内側核が読み取って、視床下部背内側核にメモリーされたタイムテーブルに従ってその動物にエサを食べる行動を起こさせているということが解明されました。 [最新科学おもしろ雑学帖で今回の番組関連する話題は] |