2010年5月1日
Chapter 288 良い眠りで体をメンテナンスしましょう

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 成人の睡眠時間は7時間程度ですが、ナポレオンは4時間程度の睡眠だったといわれていますし、アインシュタインは10時間以上寝ていたと言われています。どの程度の睡眠時間が適当かは個人差がありますが、少なくとも完全に眠らない状態では生きていけません。ラットやイヌを使って無理矢理眠らせないようにする実験を行うと脳細胞が著しいダメージを受けいずれも一ヶ月以内に死んでしまうことがわかっています。人間の場合も睡眠が不足すると注意力が散漫になり、やがて幻覚が出現するようです。

 人間の場合、眠りには「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類のパターンがあります。レム睡眠時は全身の筋肉は眠っていますが、大脳は活性化していて脳は起きている状態に近くなっています。これに対してノンレム睡眠は大脳皮質も静かになって眠っています。体温や意識水準も低下し、脳はこのときに休息をとっているようです。

 ノンレム睡眠は動物の種類によって様子が異なっていて、人間やサルではノンレム睡眠はその深さによって4段階に脳波の状態が変化しますが、ラットは1通りしかありません。また、は虫類、両生類、魚類ではノンレム睡眠がないことも知られています。つまり、ノンレム睡眠は恒温動物に特徴的であり、これは脳の進化によって眠りの内容もより高度なものに変化したことを示しています。

 睡眠が関係する病気は白昼突然崩れ落ちるように寝むってしまうナルコレプシーや不眠症、睡眠時呼吸障害など様々ですが、現在では一般人の20パーセントの人が睡眠に関して何らかの問題を自覚していると言われています。不眠症の原因はそのほかの病気が原因であるものや不適切な生活習慣が原因であるものなど、一つの疾患でもその原因がどのようなものであるかによって様々なバリエーションがあります。

 睡眠関連の疾患は軽視されがちですが、アメリカで睡眠関連呼吸障害の患者を18年間追跡調査したところ、患者の4割以上が死亡してしまいました。原因は睡眠不足による事故や心筋梗塞、脳梗塞などで、決して侮れない病気です。睡眠は大脳が休息するだけではなくて、日中の活動による身体の損傷を回復し、免疫機能などのホメオスタシスを調整する機能も担っています。睡眠は心と体のメンテナンスであるといえます

今回の番組は、雑誌「化学と工業」2010年4月号に掲載された「睡眠のメカニズムに迫る」と題した記事を元に制作しました。


ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタ

▼使える水は意外と少ない

 「水ビジネス」というビジネスがあります。世界中のあらゆる場所に安全な水を安定的に供給すること市場が現在60兆円とされますが、2025年には100兆円規模に拡大するといわれます。地球は水惑星といわれることもあります。地球上に存在する水の量は、およそ14億立方キロですが、そのうちの98%は海水で占められ、淡水は残りの2%。しかも人の利用が容易な水となると、地球上の水のわずか0.01%(約10万立方キロ)にすぎ
ません。

▼髪の毛からその人のドラッグ歴がわかる

 香港科技大学の研究者らがトリプル四重極LC/MSという分析装置を使用して、毛髪中のドラッグを分析する方法の開発に成功しました。毛髪を使用したテストの利点は採取が比較的簡単で、必要な毛髪はわずか 5〜10 本であること、対象者の過去 3 か月以上の薬物摂取履歴を追跡でき、ドラッグを検出する感度も1,000倍高くなること、テストの 7 日前から少なくとも 3 か月間の薬物摂取履歴を追跡できること、常用性の程度や、その期間中の薬物摂取パターンを判断することができることなどがあげられます。

▼コウテイペンギンの生態調査は宇宙から

 南極に生息するペンギンの全個体数調査を人工衛星から撮影した高解像度写真で検証する試みが行われることになりました。このような手法でペンギンの調査を行うことによって、ペンギンが南極のどのような場所に生息しているかがすべて明らかになり、南極全体に影響を及ぼす気候と海洋の微妙な変化や、自然環境の変化や商業漁業の影響によって増減する個体数を把握できます。ちなみに、体長1.2メートル、体重40キロのコウテイペンギンは、ちょうど1ピクセル(画素)の大きさになるということです。

▼Muse細胞:第3の多能性幹細胞、皮膚から発見

 大人の皮膚や骨髄の中に、さまざまな細胞になる能力を持つ多能性幹細胞があることを、東北大と京都大などの研究チームが発見し、分離・培養に成功しました。「Muse(ミューズ)細胞」と命名されたこの細胞はES細胞、iPS細胞に続く多能性幹細胞の可能性があります。既知の2種類に比べ増殖率は劣るものの、がん化の恐れは低い可能性があり、医療への応用が期待されます。


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バックナンバー
   
Chapter 287 腸内細菌が食生活に与える影響 
Chapter 286 宇宙帆船「イカロス」間もなく打ち上げ  
Chapter 285 人間とチンパンジーを分けた遺伝子の変異 
Chapter 284 日本の科学研究ビッグプロジェクト 
Chapter 283 すぐそこにあった水惑星 
Chapter 282 高速増殖炉「もんじゅ」とは? 
Chapter 281 宇宙の話題盛り合わせ  
Chapter 280 ウェルナー症候群とウェルナーヘリカーゼ   
Chapter 279 レアアースに頼らず生物多様性を守る日本で開発された技術  
Chapter 278 ツタンカーメンの死因
Chapter 277 最近の人工衛星の話題 
Chapter 276 1年中咲き続けるサクラの開発に成功 
Chapter 275 マイクロキメリズム 
Chapter 274 生命科学に関する最新の話題を盛り合わせ
Chapter 273 レスベラトロール  
Chapter 272 最近発見された生物  
Chapter 271 2010年はリンの貴重さに思いをはせる年にしましょう  
Chapter 270 ヴォイニッチの科学書で振り返る2009年科学の話題 後編  
Chapter 269 ヴォイニッチの科学書で振り返る2009年科学の話題 前編  
Chapter 268 臭わない病気、聞こえない病気に関する最新情報  
Chapter 267 プランクトンが住みにくくなる北極海  
Chapter 266 宇宙でがんばっている探査機たちに思いをはせる  
Chapter-265 伝統医学
Chapter-264 軌道エレベーターと宇宙太陽光発電 
Chapter-263 最近耳にしなくなったオゾンホールの現状と地球温暖化との関係
Chapter-262 金平糖のサイエンス 
Chapter-261 30分でわかるノーベル賞2009  
Chapter-260 リチウムイオン電池

>> 「Mowton(放送終了)」はこちら

Science-Podcast.jp 制作






科学コミュニケーター 中西貴之(メール
アシスタント BJ

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ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長

 


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