2009年10月31日
Chapter-262 金平糖のサイエンス
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日本物理学会誌 Vol.64, No.10, 2009より
金平糖は、砂糖水で作る、表面に凹凸の角があるお菓子です。日本へはポルトガル人が1550年にカステラと共に南蛮菓子として伝えました。
金平糖の作り方
・大きな中華鍋を加熱する(中華鍋は必須ではなく、ロータリーエバポーレーターでも可)
・ザラメの粒を1000個以上鍋の中に入れる
・鍋の過熱を続けながら、回転によって攪拌する
・攪拌しながら飽和濃度に近く粘度の高いショ糖溶液を上から加る
・ザラメを核に金平糖が成長を始める
・ショ糖液は金平糖の表面が乾く頃合いを見計らいながら育成の間継続的に補給する
・やがて表面におなじみの角が生え始める
・数十時間後に立派な角が生えた金平糖ができあがり
金平糖の形について科学的な研究が行われ始めたのは1980年代に入ってからで、この頃流行したフラクタルやカオスに関する研究と関係があり、角成長を数式で解析したり、コンピューター上で再現するシミュレーションモデルなどにかんする研究が盛んに行われました。
金平糖に角が生える現象は、雪のような結晶の成長で見られる凸凹と基本的に同じもので、金平糖や雪が成長する過程でノイズによって生じた小さな形状のムラがさらに増幅されるメカニズムによって説明されます。外側にとがった場所にはより多くのショ糖が集まるのが化学的な決まりがあり、その逆にへこんだ部分にはショ糖はあまり流れ込まない化学的な決まりもありますので、いったん角になった部分はますます成長することになります。
金平糖を実験室で成長させる実験結果によると、ザラメを構成するショ糖の結晶は単斜晶系と呼ばれるマッチ箱のような形をしており、ザラメから金平糖を成長させると最初はマッチ箱の両端から角を出すようないびつな形で成長を開始し、成長しながら球に近づいていく様子が観察されました。最初に生える角の本数は粒の大きさに関係なく90本くらいからスタートし、成長に伴って角の数は減少し、最終的には20〜24本の角を持つ金平糖が最も多くなります。また、成長の各段階で金平糖を計測したところ、粒子の大きさと角の間隔には比例関係があり、粒径が4mmの時には角の間隔は1mm、粒径が7mmに成長すると角の間隔は3mmとなっていました。一方で、どのような因子が角の長さを決定するのかについてはいまだによくわかっていません。
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