2009年11月7日
Chapter-263 最近耳にしなくなったオゾンホールの現状と地球温暖化との関係
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オゾン層は成層圏に含まれる高度20キロから30キロの範囲のオゾン濃度が高くなっている場所のことです。オゾン層によって地球上の生態系は太陽が出す紫外線から守られているとされています。大気中オゾン濃度は生成と分解の両方の化学反応が起きてバランスがとれていますが、局所的にオゾン濃度が非常に低くなり、穴が開いたような状態になったのがオゾンホールです。冬の南極大陸上空には極夜渦(きょくやうず)と呼ばれる空気の渦巻きが形成され、その中に封じ込められたオゾンが急速に分解されるため、オゾンホールは南極上空で特徴的に現れます。
オゾンホールが人類に重大な影響を及ぼす可能性があり、かつ、オゾンホールの形成が人類の活動によって放出された物質で加速していることが指摘されたのは1980年ごろのことでした。この事実を受けて1987年の「モントリオール議定書」において、オゾン層破壊に関与する物質の製造を段階的に中止することが決定しました。その結果、大気中のオゾン層破壊物質濃度は低下に向かっていますが、依然としてオゾンホールの出現は続いています。
予想通りにオゾンホールの縮小が進行しない原因の一つとして考えられているのが温室効果ガスの作用です。温室効果は大気中オゾン濃度の上昇させる作用と減少させる作用の両方を持つことが知られています。つまり、温室効果ガスは熱を大気圏の下層に封じ込めるため、成層圏の気温は低下し、オゾン層を破壊する化学反応の進行が遅くなることによってオゾン層の破壊は抑えられます。同時に、成層圏の気温が低いほど雲の中に氷の粒がたくさん形成されます。オゾンの分解は氷があることによって数十倍から数百倍に加速するため、オゾン層の破壊も加速されます。さらにオゾン層の増減地震も気候変動に影響を与えますので、その解析は非常に複雑になり、オゾン層の増減が今後どのようになるのかについてはよくわかっていません。
大気中のオゾン濃度は増加傾向にありますが、現状では南極大陸上空のオゾンホールには回復する兆しが現れていません。南極上空大気中のオゾン層濃度は最も低下したのは近年では2006年でしたが、その時点ではオゾン層破壊物質の量は減少に転じており、オゾン層破壊物質濃度とオゾン濃度は単純に相関していません。オゾン層の破壊によって地表に到達する紫外線量が増加すると皮膚ガンの発症率が上昇します。ただし、紫外線を浴びてから皮膚ガンが発生するまで数十年かかるとされていますので、過去のオゾン層破壊による皮膚ガン発生のピークは今後やってくると思われています。
ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタ
▼青いバラついに発売
Chapter-54で紹介したサントリーフラワーズ社の青いバラがついに開始となりました。パンジーの遺伝子をバラに組み込む遺伝子組み換えによって作り出されたこのバラは「サントリーブルーローズ アプローズ」と命名され、花言葉は「夢かなう」です。>>公式サイト
▼月の地下に大空間か?
JAXAが月探査機かぐやのデータを解析したところ、月の地下に表面にあいた縦穴から続く、巨大な地下空洞があるらしいことを発見しました。月でこのような縦穴が見つかったのは初めてのことです。地下空洞についてはまだはっきりとしたことはわからないのですが、地表に直径60〜70メートルの穴があり、そこから約60メートルの縦穴が続いて、その先に天井の高さが20〜30メートル、地面の幅が400メートル、奥行きは最大で数十キロメートルの広さがある可能性があり、もしこの規模の空洞があれば、宇宙からの有害なエネルギーや隕石の衝突を避けることができるため、有人月探査における月基地に候補になりうるということです。
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