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2009年9月19日
Chapter-256 グラフェン
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2010年ノーベル物理学賞が独自の方法でグラフェンをつくり出し、その性質を明らかにした英マンチェスター大学のアンドレ・ガイム教授とコンスタンチン・ノボセロフ教授に贈られました。これを記念して、グラフェンを紹介した Chapter-256 の音声ファイルと配付資料を無料公開中です。ダウンロードしてご利用下さい。 |
グラフェンは炭素原子だけででできた原子1個分の厚さしかない世界で最も薄い板状の素材です。あまり耳にすることのない名前ですが、実は身近なところに存在しています。たとえば、グラフェンを何層にも積み重ねたものが鉛筆の芯です。
グラファイトが材料として優れた性質を持つことは以前より予想されていましたが。鉛筆の芯のようなグラフェンのかたまりからグラフェンを1枚ずつバラバラにすることができず、研究は進んでいませんでした。2004年、イギリス・マンチェスター大学の研究チームが粘着テープを使ってグラファイトを引き裂くという方法でグラフェンの作製に成功したことをきっかけに、産業への応用が注目されています。
グラフェンの主な特徴は次の３つです。
・あらゆる物質の中で最も薄い
・非常に丈夫なのにしなやかに曲がる
・電子が素早く移動できる
不純物が含まれていないグラフェンは、原子構造が極めて規則正しいため、その他のどのような物質よりも電子の移動速度が速くなります。同様の性質を持つものに超伝導物質があります。グラフェン中の電子の移動速度は超伝導物質には劣りますが、超伝導物質が極低温に冷却しなければその性質が表れないのに対し、グラフェンは室温で電子の高速移動が起きますので、このような材料でLSIなどを作れば、処理速度は大幅に向上するはずです。
また、丈夫なのにしなやかな点は航空宇宙材料に用いる強固な複合材料の素材にも適しているものと思われます。カーボンナノチューブと組み合わせ、軌道エレベーターの材料に使うことができるかもしれません。
ちょきりこきり
今日使える三行科学
▼石炭から樹脂を製造する新技術を三菱化学が開発
・石炭を蒸し焼きにしてコークスを製造する過程で出るコークス炉ガスを利用する。
・コークス炉ガスを触媒で反応させてメタノールを生産。これをジメチルエーテルに転換し、ここから樹脂の原料のプロピレンを製造する。
・石油を使うより二酸化炭素排出量を抑えられる。
▼国内初の波力発電所を出光・三井造船・日本風力開発が共同で建設
・太平洋沿岸の沖合10キロメートルの波で海面が上下するときのエネルギーでタービンを回して発電する。
・発電コストは太陽光より安い。
・建設地はまだ決定していないけれど、候補地を5カ所まで絞っており早急に決定する。
▼電源開発が地熱発電事業を拡大
・宮城県大崎市ですでに稼働している地熱発電所で新しい井戸を掘って出力を2割増強する。
・2020年稼働を目指し、秋田県湯沢市で地熱発電所を建設するための調査井戸を掘る。
・地熱発電所は火山国日本にふさわしく、二酸化炭素排出が推力に次いで少なく、石炭火力の65分の1。風力や太陽光のように、天気や昼夜の影響を受けない。
▼円周率を何万桁も覚える方法
・何万桁も円周率を覚えられる日本人がいるが、決して超人ではない。
・円周率を語呂合わせで覚えている。
・円周率の達人の語呂合わせが普通の人と違うところは、一つの数字にものすごくたくさんの音を当てる仕組みを独自に開発していることだった
▼JAXAが世界初のソーラーセイル探査機を2010年度に打ち上げ
・宇宙空間で帆を広げ、太陽の光の粒子を受けて進む
・帆に太陽電池を貼り付けて、電力もまかなう
・将来は木星探査くらいまではソーラーセイルで行いたい
▼理化学研究所が植物の背の高さを決める遺伝子GLT1を発見
・植物の成長がその種類ごとにほとんど同じ大きさで止まる理由はわかってなかった。
・GLT1は植物の成長を抑えるので、この遺伝子を壊すと植物の細胞が2倍くらい大きくなった
・GLT1を操作して品種改良することで、より便利な植物が作れそうだ
▼脂肪を作ることをやめさせる物質ファトスタチンを京都大学が発見
・ファトスタチンは脂肪量を感知するセンサーに結合し脂肪酸を作ることを指令する遺伝子の機能を停止させる。
・ファトスタチンをネズミに与えると過食による肥満、糖尿、脂肪肝が抑制された。
・ファトスタチンのような物質が糖尿病や脂肪肝などの代謝疾患の治療薬として有効である可能性がある。
▼上に伸びる雷
・雷雲から上に伸びる特殊な巨大稲妻「巨大ジェット（gigantic jets）」というものが存在する
・デューク大学の研究チームが、高度64キロの成層圏まで到達する巨大ジェットの写真撮影に成功。
・稲妻が上に伸びれば空気が薄くなるのでエネルギーが急速に衰退するはずなのに、これほど巨大な稲妻が成層圏に達する仕組みは謎。
Science-Podcast.jp
制作
科学コミュニケーター 中西貴之（メール）
アシスタント BJ
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［この番組の担当は・・・］
ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
1965年生まれ
島生まれの島育ち
応用微生物学専攻
現在化学メーカーの研究所勤務
所属学会 日本質量分析学会 他
日本科学技術ジャーナリスト会議会員
ナビゲーター BJ
インターネット放送局くりらじ局長
