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2009年4月4日
Chapter-233 宇宙に吠える巨大モンスター  

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 宇宙空間に点在する銀河の中心にはいずれも重さが太陽の100万倍から1億倍もある超巨大ブラックホールがあることがわかっています。天の川銀河の中心にも、重さが太陽の約400万倍もある超巨大ブラックホールがあり、「いて座Aスター」と名付けられています。

 京都大学理学部宇宙物理学教室、国立天文台、名古屋大学、ケルン大学、アンダルシア宇宙物理学研究所の共同研究チームがハワイにある日本のすばる望遠鏡を使っていて座Aスターの観測を行った結果、このごく近くで起きているフレアと呼ばれる爆発現象の様子を詳細にとらえることに成功しました。今回の観測結果ほどダイナミックな超巨大ブラックホール周辺の様子をリアルタイムで観測に成功したのは初めてのことです。

 今回観測されたのは、ブラックホールを円盤状に取り巻くガスやちりの動きです。それらはブラックホールに近いところから徐々にブラックホールに吸い込まれています。この時、円盤内でのガス同士の摩擦熱によってガスは非常に高温になりエネルギーを発します。地球にはそのエネルギーが赤外線として届いていますので、それを観測することによって、ブラックホールのごく近くで何が起きているのかを知ることが可能です。

 数時間にわたるブラックホール周辺の観測で確認されたフレアは暗いブラックホールが急に明るく輝く現象です。4時間弱の観測時間で3回のフレアが確認されましたが、これはまさにブラックホール周辺の円盤が時間スケールでダイナミックな活動をしていることを示しており、この観測データを詳細に解析することによって様々なことがわかります。

 その一つが銀河中心ブラックホールの大きさです。ブラックホールの大きさはその中心から「事象の地平線」までの距離を半径として考えます。ブラックホールはその巨大な重量によって周辺の空間をゆがめています。空間のゆがみはブラックホールに近づくほど大きくなり、光の進路さえ曲げてしまうのですが、ブラックホールの中心に近づき、空間のゆがみがある段階を超えると光の進路はブラックホールに向かって落ちるように曲げられ、光さえ逃げることができなくなります。この位置のことを事象の地平線といいます。

 今回の観測結果から、ブラックホールの中心から事象の地平線までの距離、つまり、天の川銀河ブラックホールの半径は1200万km、太陽のおよそ20倍の大きさだとわかりました。さらに、刻々と変化するフレアの偏光から周辺の円盤が高速で回転していることもわかりました。

 もし、太陽の位置にいて座Aスターがあったとして、地球からそれを眺めた場合、空には太陽の20倍の大きさにブラックホールが広がり、真横方向からみた巨大なチリの円盤が空を二つに分断するように横たわって回転しています。その円盤は非常に高温で突然光り、あっという間にブラックホールに吸い込まれて消え去りますがその時には銀河の果てまでも届くような強烈なエネルギーが放出されます。銀河の中心ではそれが1時間に1回以上もの頻度で毎日繰り返されているものすごいことになっているようなのです。


2009年2月28日発行 第132号の内容
  ・Chapter-230 最近の宇宙の話題
  ・納豆酵素はアルツハイマー治療に有望
  ・美的感覚の男女差
  ・NASAの温室効果ガス観測衛星が南太平洋上に落下
  ・人工衛星衝突事故でHSTがピンチに
  ・近未来の食品加工技術
  ・地球シミュレーターが新型に更新


バックナンバー
   
Chapter-232 産総研が開発したHRPシリーズの最新型ロボット
Chapter-231 他人の不幸は蜜の味
Chapter-230 最近の宇宙の話題
Chapter-229 ジョージ・ガモフの「不思議の国のトムキンス」 
Chapter-228 ヒラメとカレイの目の位置を決定する仕組み
Chapter-227 シャドーバイオスフィア 
Chapter-226 ジェットコースターの楽しみ方
Chapter-225 再び注目される超伝導
Chapter-224 ピンチになると活躍する遺伝子 
Chapter-223 アルツハイマー病に関する新たな発見
Chapter-222 私達が春を感じる仕組み
Chapter-221 サイエンスニュースフラッシュ 2008年11月号  
Chapter-220 惑星探査機ボイジャー2号末端衝撃波面通過
Chapter-219 絶滅動物を復活させる新技術
Chapter-218 粘菌問題再び
Chapter-217 2008年 ノーベル物理学賞
Chapter-216 2008年 ノーベル生理学・医学賞 
Chapter-215 サイエンスニュースフラッシュ 2008年9月号
Chapter-214 地熱発電の可能性
Chapter-213 夜行雲 / 天の川銀河で発見された新たな構造
Chapter-212 iPS細胞の応用
Chapter-211 長期記憶形成のメカニズムがわかり始めた
Chapter-210 サイエンスニュースフラッシュ 2008年7月 
Chapter-209 太陽電池飛行機
Chapter-208 ナメクジウオ!! 
Chapter-207 波力発電の現状
Chapter-206 サイエンスニュースフラッシュ 2008年6月号 
Chapter-205 植物のノアの方舟 
Chapter-204 iPS細胞が世界を動かす
Chapter-203 サイエンスニュースフラッシュ 2008年5月号
Chapter-202 医学の歴史上最も珍しい10の疾患 
Chapter-201 宇宙の話題を盛り合わせ
Chapter-200 PQQってなに?
Chapter-199 人類は7万年前に絶滅寸前の状態に追い込まれれていた
Chapter-198 サイエンスニュースフラッシュ 2008年4月号
Chapter-197 日焼け止めがサンゴの白化を促すことがわかった
Chapter-196 干からびた生物が元どおりに生き返るメカニズムを解明
Chapter-195 国際宇宙ステーションと「きぼう」
Chapter-194 サイエンスニュースフラッシュ 2008年2月 
Chapter-193 水星探査機ビーナスエクスプレス 
Chapter-192 脳機能に関する最新研究 
Chapter-191 サイエンスニュースフラッシュ 2008年1月
Chapter-190 超弦理論でブラックホール内部の構造が明らかになった
Chapter-189 ブラックカーボンと地球温暖化
Chapter-188 日本人が発明した垂直磁気記録
Chapter-187 サイエンスニュースフラッシュ 2007年12月
Chapter-186 お正月番外編「人を助ける へんな細菌すごい細菌」
Chapter-185 2007年に紹介した話題・その後
Chapter-184 脳機能に関するふたつの最新研究
Chapter-183 サイエンスアゴラ2007を振り返る
Chapter-182 ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立に成功
Chapter-181 光が空間を伝わる様子を3次元の動画として記録・観察に世界で初めて成功 
Chapter-180 サイエンスニュースフラッシュ 2007年10月 


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 2009年4月11日(土曜日) 10:00〜11:30
 山口県下関市立彦島図書館(地図) 2階視聴覚室
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第9回 かもし力2
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[この番組の担当は・・・]

ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長


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