2008年10月11日 2008年のノーベル生理学・医学賞はHIV・エイズウイルスを発見したパスツール研究所のフランソワーズ・バレシヌシ教授61歳と世界エイズ研究予防財団のリュック・モンタニエ博士76歳の二人と、子宮頸ガンを引き起こすHPV・ヒト・パピローマウイルスを発見したドイツ・ガン研究センターのハラルト・ツアハウゼン名誉教授72歳に授与されることが決まりました。HIVとHPVの研究に関連はありませんが、いずれも社会問題化した病気の予防や治療法開発への貢献という点は共通しており、今回の同時受賞となりました。 賞金は1000万スウェーデン・クローナ、日本円で約1億5千万円で、HPVのツアハウゼン名誉教授が半分を受け取り、HIVのバレシヌシ教授とモンタニエ博士が1/4ずつを受け取ります。授賞式は2008年12月10日、ストックホルムで開かれます。 HIVとはヒト免疫不全ウイルスと呼ばれ、外部から侵入した有害生物などから人間の体を守る役目をしている免疫細胞に感染し免疫細胞を破壊して、患者の抵抗力を失わせるウイルスです。HIVが発見されたのは1983年のことで、当時は二人ともパスツール研究所に所属していました。 起源はサルなどの霊長類を宿主とするサル免疫不全ウィルスが、遺伝子の変異を繰り返すうちに人間へ感染することのできる種が誕生したと考えられています。サル免疫不全ウイルスとHIVの遺伝子を比較すると、実際にその遺伝子はチンパンジーなどに感染するウイルスと非常によく似ていました。またHIVにはHIV-1とHIV-2の2種類が存在し、HIV-1はチンパンジー由来、HIV-2はマカクザル由来であると考えられます。HIV-1とHIV-2の遺伝子の一致度は60%しかなく、二つの全く異なるルートで人間に感染するHIVが誕生したようです。 もう一つの受賞対象であるHPV・ヒトパピローマウイルスは100種類以上の仲間が知られている、古くから人間に感染していたウイルスで、HIVがボールのように丸いカプセルの中に遺伝子が収納されているのに対し、HPVはカプシドと呼ばれる正20面体のカプセルの中に遺伝子が納めらいます。 HPVは子宮頸ガンなどで良く発見されるウイルスで、その遺伝子には発ガンの原因物質として、人間のガン発生を抑制する遺伝子にとりついてこれを破壊するタンパク質など、複数の発ガンに関連する遺伝子と相互作用することで人間にガンを発症させます。
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