2008年6月14日
Chapter-203 サイエンスニュースフラッシュ 2008年5月号
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ガムを噛むと作業記憶が回復することをfMRIで確認
A、D、B、A、C...などという文字を2秒間隔で順番にスクリーンに1秒間表示し、2つ前(あるいは3つ前)の文字と同じ場合にボタンを押す作業を行ってもらい、正解率とともに活性化している脳の部位をfMRIで計測するという手法を用いました。脳活動の差は、ガムをかむ前に2回行い、3回目に無味、無臭のガムをかんで、その後にまた同様の文字を当てる作業を行った。
その結果、ガムをかむことは集中力を増強させるだけではなく、脳の活動に影響を及ぼし作業の正解率を回復させる効果があることがわかりました。このようなチューイング効果のfMRI計測に成功したのは世界でも初めてのことです。
(放射線医学総合研究所・神奈川歯科大学)
カーボンナノチューブはリスクを良く理解して産業利用
未来素材として注目を集めているカーボンナノチューブ技術を用いた製品はアスベストに似た健康被害を及ぼす可能性があると英エジンバラ大学の研究グループが発表しました。カーボンナノチューブ技術を用いた素材はアスベストに似た健康被害を及ぼし、肺がんなどを誘発する危険性が高いと論じています。
地球の生命、宇宙から来た…? 「きぼう」で検証実験
東京薬科大の研究チームが、地球の生命は宇宙からやってきたのか? という疑問に答える宇宙実験を日本の有人宇宙施設「きぼう」を使って行う計画を立てています。宇宙空間をただよう微生物や有機物を捕まえて分析しようとするこの計画は、早ければ2011年にも実現する見通しです。
地球で最初の生命は、40億〜35億年前に海で生まれたとの説が有力ですが、一方で、生命の起源は地球以外にあると考える「パンスペルミア説」も真剣に検討されています。そこで、この長年の疑問を解決するデータを収集するために研究チームは、専用シート(10センチ角)を開発し、「きぼう」に置き、宇宙空間をただようちりや微生物、有機物を集めようとしています。
1〜5年後にシートを回収し、微生物の遺伝子やちりに付着したアミノ酸の種類を分析して地球のものかどうか判定することになっています。
恐怖記憶を書き換える治療に伝わる研究成果
強い恐怖体験などで起きる心的外傷後ストレス障害(PTSD)には曝露療法という治療方法があります。
暴露療法は、恐怖体験をわざと思い出すことで記憶を不安定化と呼ばれる状態にします。不安定化とは、普段は書き換えられない恐怖の記憶を、あえて元の体験を思い出すことで、固定されていた記憶が一時的に書き換え可能な状態に“引っ張り出される”ことがある現象のことです。そのとき「事故は過去の出来事であり、いまは恐れる必要がない」と患者に認識させれば、恐怖記憶が正しく意味づけされて書き換わり、不必要におびえることもなくなるとされています。
研究者らは、マウスを使った実験で神経の情報伝達を制御する「L型電位依存性カルシウムチャンネル」と「内因性カナビノイド受容体」の二つの受容体に注目し、薬を与えて二つの働きを妨げると、恐怖記憶が不安定化しませんでした。つまり、これらが妨害されている状態では曝露療法に効果がないということを示しています。この結果は「逆にこれらの受容体を活性化すれば、記憶を効率よく不安定化して、恐怖記憶が消せる」ことを示唆しており、今後の曝露療法の薬による支援が可能かもしれません。
高カロリーがおいしい理由
油脂は味もにおいもないのに油脂分の多い食品がおいしく感じるのはなぜでしょうか。
京都大農学部のグループは、油脂をマウスに与えるとやみつきになることを発見しました。やみつきになったマウスに、消化されないカロリーゼロの油を与えたところ、こちらの油にはマウスは関心を示しませんでした。そこで、マウスの胃にカロリーの高い油脂を直接入れ、カロリーのない油脂を与えると今度は飽きずになめ続け、胃にカロリーが入ることがやみつきが起きる条件の一つであることがわかりました。
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