サイエンスアゴラ2007
2007年11月17日
Chapter-181 光が空間を伝わる様子を3次元の動画として記録・観察に世界で初めて成功
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光の速度は有限ですから、本来、自動車が走行するのと同じように光も空間をある速度で移動しているはずです。けれど、光は何かに衝突しないと見えませんので、光の速度の速さと相まってあまり光が目の前を移動しているということを考えたことはないと思います。
ところが、JST科学技術振興機構と京都工芸繊維大学の研究チームは光が空間の中を移動していく様子を世界で初めて三次元の立体映像として連続して記録・再生することに成功しました。記録された光はある瞬間光がどの位置をどのような姿で飛行しているのかを見ることができ、スローモーションで再生したり、コマ送りのように移動の経路を取り出して観察することも出来ます。
今回の研究は、光の動きを観察するという知的好奇心だけでなく、産業上非常に重要な意味を持ちます。というのも、光はあらゆる先端技術領域で使用されているからです。たとえば、光通信による、大容量高速ネットワークの普及、レーザー加工技術を用いた高精度微細加工技術の実用化、バイオ・医療技術におけるレーザー光を用いた手術技法の開発などです。これらの技術をもとにして、今後さらなる画期的な発見や技術の開発も期待されています。
ホログラムへの記録は、ゼラチンと水とショ糖を混ぜて作ったゼリーを封入したガラス容器の中を224フェムト秒という非常に短い時間だけ発光するパルスレーザーが通過する際に拡散される光をホログラム記録材料でキャッチすることによって行われました。
ホログラムの中には光パルスの移動が3次元で連続して記録されています。観察の際は、ホログラムに対して、スポットを大きく広げたレーザーの連続光で照明しつつ、観察したい場所を見つめると、そこに記録した映像が浮かび上がりますが、それは、その瞬間にその場所を伝播している光の3次元静止画です。また、目線をそのままホログラムの上で移動させると、その動きに応じて光が伝播するようすがスローモーションで観察できます。
さらに、このフェムト秒光パルスを凸レンズを通過させたところ、光が1点に集光した後に広がっていく様子もホログラムに記録することに成功しました。いずれも産業分野への技術展開が期待される世界初の画期的な成果です。
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