2007年11月3日
Chapter-179 2007年ノーベル化学賞
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2007年ノーベル化学賞は金属触媒を原子レベルで解明した独マックスプランク協会フリッツ・ハーバー研究所のゲルハルト・エルトゥル名誉教授(71)に授与されると発表されました。
触媒とは、あるものを別のものに化学的に変換する際に、その反応がより速やかに進行するよう手助けをする物質のことです。
触媒を使うと、普通は起こりにくい化学反応がより進行しやすくなります。触媒作用自体は大昔からそれとは知らずに人間は活用していましたが、化学反応としてそれが理解されたのは19世紀前半のことでした。エルトゥル博士はこのような触媒の働きを原子レベルで解明することによって産業の進展に貢献しました。
肥料の原料として重要なアンモニアは空気中の気体窒素からハーバー・ボッシュ法と呼ばれる方法で生産されます。この時には固体のままで働く触媒をもちいますが、これを「不均一系触媒」と呼びます。なお、これに対する言葉として「均一系触媒」がありますが、これは水などの液体にとけて働く酵素のような触媒を指します。
エルトゥル博士は1960年代から不均一系触媒反応のメカニズムを解明する研究に取り組み、ハーバー・ボッシュ法において鉄の表面に窒素分子や水素分子がどのように吸着し、反応するのかを明らかにしました。その結果、金属の表面で起きる触媒反応を理論的に計算することが可能になったため、半導体や燃料電池の製造、金属の腐食、オゾン層破壊の仕組み解明など、多方面で活用されるに到りました。
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