2007年10月27日
Chapter-178 2007年ノーベル物理学賞
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2007年10月9日にノーベル物理学賞が発表されました。対象となった研究は「巨大磁気抵抗効果の発見」。受賞者はフランス パリ南大学アルベール・フェール教授と独ユーリヒ固体物理研究所ペーター・グリュンベルク教授です。
フェール教授は1988年、鉄とクロムを薄い膜にして何重にも重ねた物質にマイナス269度という低温で磁石の磁気をかけると電気抵抗が50%も変わることを発見しました。この現象が巨大磁気抵抗効果です。グリュンベルク教授も同じ1988年に、クロムを鉄で挟んだ3層の物質が、室温でも1%程度の巨大磁気抵抗効果を示すことを確認しました。つまり、磁気によって電気抵抗が変わること、しかもそれが室温で起きることが非常に大きな発見でした。
鉄などある種の金属は、磁石が近くにあると電気の流れやすさを変える「磁気抵抗」という性質を持っており、ハードディスクのヘッドはそれを利用してディスク上の磁気情報を読み取ります。巨大磁気抵抗は、電気を流す金属部分に工夫があります。金属をそのまま使うと磁気抵抗の変化は数パーセントですが、厚さが1ナノ・メートル程度の非常に薄い金属の膜を重ねるとその変化は数十パーセントにもなり、しかもわずかな磁気の変化でも電気抵抗が大きく変わります。これをハードディスクのヘッドに採用することによって超高感度な読み取りができるようになりました。
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