2008年2月2日
Chapter-190 超弦理論でブラックホール内部の構造が明らかになった
(前回の放送|トップページ|次回の放送)
ブラックホールを直接観測することはまだ成功していませんので、これまでその内部がどのようになっているのかは全くの謎でした。ところが、最近、素粒子の究極理論とされる超弦理論(ちょうげんりろん)を用いてブラックホールの内部構造をコンピューターシミュレーションすることに成功した研究者が現れました。
超弦理論の予測するブラックホールの内部構造を表す概念図(弦の凝縮状態)。(プレスリリースより引用)
弦を輪ゴムに見立てて、超弦理論でブラックホールを表現すると、ブラックホールの内部は、たくさんの輪ゴムがブラックホールの中心に集まり、それぞれの輪ゴムのどこか一カ所だけがブラックホールの中心に固定されて、その状態で輪ゴム1本ずつがばたばたとたなびいている状態となっています。このように弦が集まった状態のエネルギーを計算したところ、ある温度領域では理論物理学から導かれるブラックホールのエネルギーの振る舞いと計算結果が一致することが示されました。この領域は一般相対性理論が適用可能な、私たちにとっての常識的な世界を意味しています。つまり、ブラックホールはこのようなものである、というすでに確立されている考え方と、今回、弦の凝縮状態という新しい概念で計算したブラックホールの状態が一般相対性理論が有効となる低い温度の条件下で一致したと言うことです。
「弦の凝縮状態」のエネルギーを温度に対してプロットした図。実線がホーキング博士の理論に基づいて計算されるブラックホールのエネルギーを表す。一般相対性理論に基づく計算が有効になる低温領域において、両者が近づいていく様子が確認された。
(プレスリリースより引用)
参考資料
大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
独立行政法人理化学研究所
プレスリリース 2008年1月16日号
|