2008年5月17日
Chapter-200 PQQってなに?
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PQQと略されるピロロキノリンキノンは微生物の成育を促進したり、微生物の能力を高めたりする効果があることを利用して、酢などの工業的発酵生産の効率を高める添加物として利用されています。
PQQは哺乳類にも必須であるらしいことがわかっていて、PQQを除去したエサでマウスを育てると幼弱期の成長が悪く繁殖能力や免疫力も低く、さらに、皮膚や血管壁のもろい異常なマウスに成長することが報告されています。
長年、PQQを作ることができるのはごく一部の微生物に限られると考えられている一方で、マウスでの研究では全身の細胞にPQQが存在していることはわかっていました。また、植物性の食品にPQQが多く含まれていることが確認されているので、ほ乳類では植物を食べることによってPQQを摂取しているのではないかと考えられていました。ところが、植物でのPQQ合成については研究が遅れていたため、植物の持つPQQは共生してる微生物が作っているのではないかと長年考えられていました。
そこで、理化学研究所の研究者たちは植物がPQQを合成を合成できるかどうかを確認するために、抗生物質で微生物を除去したシロイヌナズナを生育させ、PQQの有無を調べたところ、微生物が存在していないにもかかわらずシロイヌナズナにはPQQが存在していることがわかりました。このことは植物がPQQを合成していることを示す初めての報告となりました。
植物がPQQを作る意義を調べるために、肥料としてPQQを追加的に与えた場合と植物が自分で作り出したPQQだけで生育する場合を比較し、植物にどのような違いが現れるかを観察しました。その結果、塩分濃度を高め、植物にストレスを与えた状態においてPQQを添加するとストレスに対する抵抗性が明らかに増加し、通常なら20%のシロイヌナズナしか生き残れないような高い塩分濃度においても、PQQを添加することによって最高で70%の生存率を示すことが実験でわかりました。
また、PQQ添加によって増強されるストレス耐性は塩分濃度だけでなく、高い温度や強い光、有機溶媒など、人工的な要因も含む多くのストレスに対して抵抗性が増すことがわかりました。また、植物の種類もシロイヌナズナだけでなく、イネや豆科の植物においても同様の効果が確認できたということです。
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