2008年2月16日 脳では非常に複雑な情報処理が行われています。例えば、脳の中の海馬という場所は記憶をつくる役目を担っていますが、記憶の手掛かりとなる臭いや眼で見たものは細胞の先端で情報処理されますし、処理された情報は細胞の根っこのあたりでやり取りが行われることが解剖学的な研究からわかっています。このように類似した情報を処理する神経細胞は同じ場所に上手に束ねられています。神経の細胞に存在するタンパク質でできた連結器の形態によって連結できる相手が制限される機能によって、神経細胞同士が無差別に情報交換しないように、情報の区画化が行われているようです。 神経細胞を伝わる情報は多くの細胞をリレーしますが、細胞と細胞の間には隙間が空いていて、この空間を情報伝達物質と呼ばれるものが移動して隣の細胞に情報を伝えます。この情報の調節にはタンパク質が分解されるプロセスが重要であることがわかりました。シナプスでの情報伝達に必須のタンパク質はたくさんあるのですが、その中に、RIM1と名付けられたタンパク質があって、RIM1を破壊することによって情報量を制限し、情報の整理につながることがわかりました。 実際に、神経における情報の過剰放出による輻輳や脳内の情報伝達異常が脳梗塞、アルツハイマー病、統合失調症、うつ病などの脳神経疾患で起きていることが知られています。そこで、今後、このような脳のメカニズムを更に解明することによって脳神経疾患の発症メカニズムの解明や今後の新しい治療法の開発につながることが期待されます。
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