2008年9月20日
Chapter-213 夜行雲 / 天の川銀河で発見された新たな構造

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夜行雲

 通常、雲は高度10キロメートル程度に発生していますが、夜光雲はそれよりもはるかに高い高度80キロメートル付近で発生する雲で、太陽の光を受けて青く輝いています。最初に夜光雲が発見されたのはイギリスで1885年のことでした。それ以来、目撃例が相次いでいますが、近年になってやっと衛星による観測が始まったばかりで、いまだなぞが多い自然現象です。

 夜光雲が発見された19世紀末は産業革命の時期と一致していますが、工業の発展と夜光雲の関係についてはまだはっきりしていません。

 不思議なことに、19世紀には、夜光雲を見ることができるのは、緯度が50度以上のスカンジナビアやシベリア、スコットランドなどの地域に限定されていましたが、近年では、中緯度の米・オレゴン州やワシントン州、トルコやイランなどの国々でも見られるようになっています。

 NASAは、2007年4月に打ち上げた中間圏観測衛星AIMによって、夜光雲の大きさや形、雲を形成している氷の結晶などの観測を行っています。観測結果から、夜光雲は極地方が夏を迎える時期に現れること、広範囲に広がって、数日から数時間の単位で大きな変化を見せることなどがわかってきました。また、夜光雲を形成している氷の結晶の粒は40〜100nmで、ちょうど青い光を散乱する大きさであることもわかりました。同時に、30nm以下の大きさで光を散乱しない、目に見えない結晶の存在も明らかとなっています。


国際宇宙ステーションから見た夜行雲(提供:NASA

天の川銀河で発見された新たな構造

 天の川銀河はかつて、レモンのような形の星の集団だと考えられていました。その後、地球から恒星までの距離を測定する方法の発見に伴い、天の川銀河は整った形をした渦巻き銀河であると認識されるようになりました。ところが、より正確な銀河の3次元地図が作成されるようになると、天の川銀河はこれまで想像していた整った渦巻き銀河ではなく、中心付近に棒のような形に集まった星の集団が存在し、4本の腕を持った棒渦巻き銀河であることがわかりました。その後、天の川銀河の周辺には多数の伴銀河のような星の集団があることや、腕は4本ではなく2本であるらしいこと、天の川銀河を取り巻く星のリボンが存在することなど、それまで予想もしなかった天の川銀河の構造が次々に明らかとなりました。

 一方、現在、世界各国の天文学者が協力して、宇宙の地図を作ることを目的とした宇宙全体を網羅する大規模な観測プロジェクトが行われており、これをスローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)と呼びます。

 このSDSSに含まれるプロジェクトの一環として、天の川銀河にある2500万個の星について、星が宇宙空間を移動する速度の計測が行い、速度ごとに星を分類した結果、このたび、天の川銀河の外側を取り巻く星の流れ11本が見つかりました。星の流れはすでに2007年6月に天の川銀河を取り巻く3つのリングとして発表されていましたが、今回さらに11本が見つかったことになり、今までに発見されたものを含めた大小14本の星の流れは、互いに交差するなどして入り乱れ、複雑な構造を見せています。

 リングを形成する星の由来についても検討が行われていますが、14本のうちの1本は、天の川銀河の射手座方向にある伴銀河が天の川銀河の重力によって引き伸ばされたものであるらしいことがわかっていますが、それ以外の流れの具体的な起源は明らかになっていません。


天の川銀河の想像図(提供:NASA


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 ・凍土に眠る遺跡、消失危機
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 ・人工ブラックホール、地球は無事か 学者「心配ご無用」
 ・iPS細胞、作製効率100倍に 米教授がマウスで成功
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Chapter-212 iPS細胞の応用
Chapter-211 長期記憶形成のメカニズムがわかり始めた
Chapter-210 サイエンスニュースフラッシュ 2008年7月 
Chapter-209 太陽電池飛行機
Chapter-208 ナメクジウオ!! 
Chapter-207 波力発電の現状
Chapter-206 サイエンスニュースフラッシュ 2008年6月号 
Chapter-205 植物のノアの方舟 
Chapter-204 iPS細胞が世界を動かす
Chapter-203 サイエンスニュースフラッシュ 2008年5月号
Chapter-202 医学の歴史上最も珍しい10の疾患 
Chapter-201 宇宙の話題を盛り合わせ
Chapter-200 PQQってなに?
Chapter-199 人類は7万年前に絶滅寸前の状態に追い込まれれていた
Chapter-198 サイエンスニュースフラッシュ 2008年4月号
Chapter-197 日焼け止めがサンゴの白化を促すことがわかった
Chapter-196 干からびた生物が元どおりに生き返るメカニズムを解明
Chapter-195 国際宇宙ステーションと「きぼう」
Chapter-194 サイエンスニュースフラッシュ 2008年2月 
Chapter-193 水星探査機ビーナスエクスプレス 
Chapter-192 脳機能に関する最新研究 
Chapter-191 サイエンスニュースフラッシュ 2008年1月
Chapter-190 超弦理論でブラックホール内部の構造が明らかになった
Chapter-189 ブラックカーボンと地球温暖化
Chapter-188 日本人が発明した垂直磁気記録
Chapter-187 サイエンスニュースフラッシュ 2007年12月
Chapter-186 お正月番外編「人を助ける へんな細菌すごい細菌」
Chapter-185 2007年に紹介した話題・その後
Chapter-184 脳機能に関するふたつの最新研究
Chapter-183 サイエンスアゴラ2007を振り返る
Chapter-182 ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立に成功
Chapter-181 光が空間を伝わる様子を3次元の動画として記録・観察に世界で初めて成功 
Chapter-180 サイエンスニュースフラッシュ 2007年10月 


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[この番組の担当は・・・]

ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

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