2008年8月9日
Chapter-210 サイエンスニュースフラッシュ 2008年7月

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二酸化炭素排出量削減における技術開発のロードマップ

「低炭素社会づくり行動計画」が2008年7月29日に閣議決定され、二酸化炭素削減のための革新的技術開発の道筋が明示されました。それによると、今後5年間で重点的に資金が投入されるのは、高速増殖炉サイクル技術、バイオマス利活用技術、低燃費航空機・高効率船舶・高度道路交通システムの開発、地球観測、気候変動予測や影響評価への国際貢献などの実施、となっています。
また、2030年頃の実用化をめどに今後予算が確保される新規技術開発の重点領域としては、発電効率が高く低コストな太陽電池、製鉄所でのCO2排出量を約30%削減する技術、燃料電池のコスト削減と耐久性向上による本格普及、空調・給湯機器の二酸化炭素削減に有効な超高効率ヒートポンプの性能改善が目標として掲げられています。
排出された二酸化炭素を大気中に出さずに地中深くに埋める二酸化炭素回収貯留技術については国内排出量の約3割を占める火力発電や約1割を占める製鉄プロセスの大幅削減につながり得る技術として2020年までの実用化を目指す、としています。

単語の切れ目に対応する脳活動の記録に成功

 独立行政法人理化学研究所と独立行政法人科学技術振興機構は、音声の単語と単語の区切りの認識能力を反映して現れる脳の活動を記録することに世界で初めて成功しました。
 連続音声の中に埋め込まれている単語の境界を見つけ、音声を意味のあるまとまりに区切る過程のことを音声文節化といい、言語獲得において重要な能力とされています。すんわち、自分が知らない外国語の音声を初めて聞いたときには、文章に含まれる各単語がどこで切れているかを区別することができません。しかし、繰り返し聞いているうちに単語の境界がわかり、メリハリがついて聞こえるようになります。これが音声分節化ですが、そのメカニズムは解明されていませんでした。
 研究チームは、人工的な単語を数個作成し、それらが切れ目なくランダムに繰り返されるような連続音刺激を作り、実験ボランティアにこの連続音刺激を聞かせながら、脳の活動を記録しました。その結果、パターン化された人工言語の単語の区切りを認識できるようになるとひとつひとつの単語の始まりの部分で強い脳の活動が観察されました。また、脳の活動の度合いは、単語の識別能力が高い人ほど大きく、単語を識別できない人は脳の活動に変化はありませんでした。この結果は、脳の活動度合いと単語の識別能力に相関があることを示しており、言語学習の進行過程、学習の達成度を示す重要な指標となりうることを裏付けるものでした。

系外惑星、ついに300個時代に突入

太陽以外の恒星をまわる惑星は2008年7月7日現在、総計307個発見されています。
最近の太陽系外惑星の発見で着目すべき点は、恒星の光を惑星がさえぎるトランジット惑星が50個を超えたことです。地球と惑星を持つ恒星を結ぶ直線の中に惑星が入ると、恒星から直接届く光と、惑星にもしたい気があればその大気を通り抜けた光とを同時に観測することができます。そのデータによって、惑星の大気の成分がわかる可能性がありますし、惑星が反射する光を観測できれば植物の有無などもわかる可能性もあります。
このような観測によって、太陽系惑星とは全く異なる惑星が大量に発見され、惑星形成のシナリオは多様であることがわかってきました。ただし、太陽系外惑星を直接写真に撮ることにはまだ誰も成功していません。惑星の写真撮影一番乗りについても世界各国でプロジェクトが進行しており、日本でも、2008年度末からは新たに開発した撮影装置をすばる望遠鏡に装着し、太陽系外惑星や惑星系の形成過程であるガスやチリの円盤を探すプロジェクトが始まることになっています。

北京オリンピックで携帯型音声翻訳システムの実証実験

 総務省の政策に基づき、すべての人と人とが時間や場所、言語などの条件を超えて交流することによって新たな価値を産み出そうとする「ユニバーサルコミュニケーション技術」の研究開発が2006年から推進されています。その一環として2008年度から多言語音声翻訳、機械翻訳、音声対話などの音声・言語処理などの統合的研究開発が「MASTARプロジェクト」として始まりました。その一環として、音声翻訳の研究開発ならびに成果展開の推進を目的とした北京市内における音声翻訳モニター実証実験が行われます。
この実験では、独立行政法人情報通信研究機構が開発した「携帯電話音声翻訳サービス」を使用します。これは、海外旅行の会話を中心とした日常会話を携帯電話に向かって話しかけると、日本語から中国語へ、中国語から日本語への双方向の翻訳結果が音声で再生されるものです。ボランティアはJTB北京オリンピック観戦ツアーに参加する日本人旅行者50名程度で、移動、観光、ショッピング等におけるコミュニケーション手段として音声翻訳機能を利用してもらうことになっています。
今回の実証実験のために、北京市内の観光、ショッピング、移動、食事に用いられる数千語の固有名詞辞書が新たに整備されたほか、携帯電話向け音声翻訳では世界で初めてユーザの声の特徴を自動で登録する機能、場所やシーンにより固有名詞辞書の語彙を切り替える機能、翻訳結果の音声を合成する機能、翻訳結果を逆方向に翻訳して翻訳内容を確認する機能(例えば、日本語→中国語→日本語)を実現したということです。


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今週発行の第101号の話題は・・・・
 ・北極の氷は今年の夏には完全に融けてしまうかも
 ・凍土に眠る遺跡、消失危機
 ・1つの恒星に、3つの「巨大地球」
 ・地球上で人工的にブラックホールを造ると・・・・
 ・人工ブラックホール、地球は無事か 学者「心配ご無用」
 ・iPS細胞、作製効率100倍に 米教授がマウスで成功
 ・片目で奥行きを認識できる仕組み
 ・雨を作る細菌

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バックナンバー
   
Chapter-209 太陽電池飛行機
Chapter-208 ナメクジウオ!! 
Chapter-207 波力発電の現状
Chapter-206 サイエンスニュースフラッシュ 2008年6月号 
Chapter-205 植物のノアの方舟 
Chapter-204 iPS細胞が世界を動かす
Chapter-203 サイエンスニュースフラッシュ 2008年5月号
Chapter-202 医学の歴史上最も珍しい10の疾患 
Chapter-201 宇宙の話題を盛り合わせ
Chapter-200 PQQってなに?
Chapter-199 人類は7万年前に絶滅寸前の状態に追い込まれれていた
Chapter-198 サイエンスニュースフラッシュ 2008年4月号
Chapter-197 日焼け止めがサンゴの白化を促すことがわかった
Chapter-196 干からびた生物が元どおりに生き返るメカニズムを解明
Chapter-195 国際宇宙ステーションと「きぼう」
Chapter-194 サイエンスニュースフラッシュ 2008年2月 
Chapter-193 水星探査機ビーナスエクスプレス 
Chapter-192 脳機能に関する最新研究 
Chapter-191 サイエンスニュースフラッシュ 2008年1月
Chapter-190 超弦理論でブラックホール内部の構造が明らかになった
Chapter-189 ブラックカーボンと地球温暖化
Chapter-188 日本人が発明した垂直磁気記録
Chapter-187 サイエンスニュースフラッシュ 2007年12月
Chapter-186 お正月番外編「人を助ける へんな細菌すごい細菌」
Chapter-185 2007年に紹介した話題・その後
Chapter-184 脳機能に関するふたつの最新研究
Chapter-183 サイエンスアゴラ2007を振り返る
Chapter-182 ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立に成功
Chapter-181 光が空間を伝わる様子を3次元の動画として記録・観察に世界で初めて成功 
Chapter-180 サイエンスニュースフラッシュ 2007年10月 


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        iPS細胞ってなんですか?
 2008年8月9日(土曜日) 10:00〜11:30
 山口県下関市立彦島図書館(地図) 2階視聴覚室
 入場無料・事前申込み不要・途中入退室可
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    何がスゴイか? 万能細胞 (技術評論社)
     
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[この番組の担当は・・・]

ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

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