2008年8月23日 記憶はその保持される時間によって短期記憶と長期記憶の2種類があります。今回の話題の中心となる長期記憶は、これに対して比較的長い時間保持される記憶で、復唱や既存の知識などと関連して記憶に組み込まれることによって長時間保持されると考えられています。 ラットを使った最近の研究で、私たちが新たに体験したことを長期記憶に組み込む仕組みの一端が明らかになりました。脳は眠っている間にその日に起こった出来事を実際の時間経過の数倍の速さで「再生」し、長期記憶として固定していることが、実験から示唆されたというのです。 アメリカ・アリゾナ大学のマックノートン教授らは、ラットを箱の中に入れ、箱の中に設定した数カ所のチェックポイントを50分の観察時間に一筆書きのように連続して走っていくように訓練しました。一筆書きで走り終えたラットには、最大で1時間の睡眠をとらせ、走っている時と眠っている長期記憶に関する脳細胞の活動状況をモニターしました。その結果、ラットが教えられたとおりの一筆書き走りを行っている間、特徴的な脳の活動パターンが観察されましたが、その後の睡眠時にも同様の活動パターンが現れ、しかも、その活動パターンはあたかも早送りをしているように6〜7倍の速さで変化していたということです。 ただし、そのような高速処理が長期記憶を転送している間中続いているかと言えばそうではなく、睡眠中に起きているときに体験したことを再生する際の脳の活動は1秒未満で途切れる断続的なものであることもわかりました。つまり、情報がいくつかの記憶の小さなパッケージに分割されて、転送されているということのようです。 人間においても睡眠中に同様の情報処理が行われていることは間違いことと考えられ、この処理は夢にも関係している可能性があります。
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