2009年1月3日
Chapter-224 ピンチになると活躍する遺伝子 

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  微生物は栄養などの必要な環境を整えてやると速やかに増殖を開始します。ただ、実験室での試験管培養などの場合は栄養分などの量に制限がありますので、やがて、定常期と呼ばれる増殖速度が低下する段階を迎えます。このとき細菌は、与えられた環境、たとえば、栄養分の量や培地の入った器の大きさなどですが、そのような環境因子の中で生存できる上限の個体数に到達しています。すると、分裂して新しく誕生する菌と死んでしまう菌の数が釣り合った状態になります。これが定常期で、栄養が不足して菌が飢餓状態に陥ったり、酸素濃度が低下して菌が呼吸困難になったり、タンパク質やDNAに傷が付いたり、壊れたりして、培地の中の菌たちにはハルマゲドンが訪れています。

 この状態で菌の細胞の中で何が起きているのだろうかと言うことを独立行政法人理化学研究所の研究チームが調べました。使った菌は、85℃という高温で生育し、進化の起源に近いと考えられる高度好熱菌サーマス・サーモフィラスという菌です。その結果、これまで誰も発見していなかった、新たな転写因子、つまり遺伝子の活動を制御する仕組みを発見しました。この転写因子は、定常期になると活性化し、菌の生育環境の悪化に対抗するために必要な14個の遺伝子の活動を制御していたということです。

 その14個はタンパク質分解酵素、酸化還元酵素、グルコース脱水素酵素、ヌクレオチド転移酵素などでした。

 サーマス・サーモフィラスは現在地球に生息しているあらゆる動物の共通の祖先に比較的近い種類の最近であると思われていますので、今回この菌で発見されたい電子制御の仕組みは地球の生物に共通の仕組みであるかもしれないと言うことです。このような研究を続けることによって、人間を含めた高等動物における基本的生命現象の理解にもつながると考えてられています。


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バックナンバー
   
Chapter-223 アルツハイマー病に関する新たな発見
Chapter-222 私達が春を感じる仕組み
Chapter-221 サイエンスニュースフラッシュ 2008年11月号  
Chapter-220 惑星探査機ボイジャー2号末端衝撃波面通過
Chapter-219 絶滅動物を復活させる新技術
Chapter-218 粘菌問題再び
Chapter-217 2008年 ノーベル物理学賞
Chapter-216 2008年 ノーベル生理学・医学賞 
Chapter-215 サイエンスニュースフラッシュ 2008年9月号
Chapter-214 地熱発電の可能性
Chapter-213 夜行雲 / 天の川銀河で発見された新たな構造
Chapter-212 iPS細胞の応用
Chapter-211 長期記憶形成のメカニズムがわかり始めた
Chapter-210 サイエンスニュースフラッシュ 2008年7月 
Chapter-209 太陽電池飛行機
Chapter-208 ナメクジウオ!! 
Chapter-207 波力発電の現状
Chapter-206 サイエンスニュースフラッシュ 2008年6月号 
Chapter-205 植物のノアの方舟 
Chapter-204 iPS細胞が世界を動かす
Chapter-203 サイエンスニュースフラッシュ 2008年5月号
Chapter-202 医学の歴史上最も珍しい10の疾患 
Chapter-201 宇宙の話題を盛り合わせ
Chapter-200 PQQってなに?
Chapter-199 人類は7万年前に絶滅寸前の状態に追い込まれれていた
Chapter-198 サイエンスニュースフラッシュ 2008年4月号
Chapter-197 日焼け止めがサンゴの白化を促すことがわかった
Chapter-196 干からびた生物が元どおりに生き返るメカニズムを解明
Chapter-195 国際宇宙ステーションと「きぼう」
Chapter-194 サイエンスニュースフラッシュ 2008年2月 
Chapter-193 水星探査機ビーナスエクスプレス 
Chapter-192 脳機能に関する最新研究 
Chapter-191 サイエンスニュースフラッシュ 2008年1月
Chapter-190 超弦理論でブラックホール内部の構造が明らかになった
Chapter-189 ブラックカーボンと地球温暖化
Chapter-188 日本人が発明した垂直磁気記録
Chapter-187 サイエンスニュースフラッシュ 2007年12月
Chapter-186 お正月番外編「人を助ける へんな細菌すごい細菌」
Chapter-185 2007年に紹介した話題・その後
Chapter-184 脳機能に関するふたつの最新研究
Chapter-183 サイエンスアゴラ2007を振り返る
Chapter-182 ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立に成功
Chapter-181 光が空間を伝わる様子を3次元の動画として記録・観察に世界で初めて成功 
Chapter-180 サイエンスニュースフラッシュ 2007年10月 


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[この番組の担当は・・・]

ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

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