2009年1月10日
Chapter-225 再び注目される超伝導
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超伝導は、その性質を持つ特殊な物質が超低温に冷やされた時に、物質の中を電子が何の障害物もなく通り抜けることができるようになり、その結果、電気抵抗がゼロになったり、物質を磁力線が避けるようになったりする現象です。
電気抵抗がゼロになるという現象には様々なメリットがあります。電気抵抗がゼロとなると、一度流れ始めた直流電流はロスなく流れ続けますので、超伝導物質でコイルを作ると非常に強力な磁石になります。超伝導磁石はすでにMRIと略される医療用核磁気共鳴画像撮影装置やリニアモーターカーの動力源として実用化されています。その他、非常に高速で動作するコンピューターなど多くの分野への応用が期待されますが、最大の問題点は、非常に低温に冷却をしなければならないという点です。そこで、より高い温度で超伝導状態となる物質を探す研究が続けられています。
高温の目安は液体窒素程度です。液体窒素は沸点が-196度ですが、化学の実験室では比較的一般に用いられている冷却剤ですので、液体窒素で冷やすことができる程度の温度であれば許されるとされています。
1987年頃には-180度前後で電気抵抗がゼロになる物質がいくつか発見され、液体窒素で冷却した超伝導が実用化されました。ところが、なかなかブレイクスルーとなる研究成果は出ず、より高温で機能する超伝導物質を探し求める研究はあっという間に行き詰まってしまいました。
温度記録は1986年に銅を含む酸化物で一挙に-113度に到達した後、記録更新されていません。この銅をベースとした物質は1960年代に登場した技術を基本としています。
超伝導物質探しは40年以上もブレイクスルーがない時代が続きましたが、2008年、東京工業大学の細野秀雄教授らのグループが超伝導物質となる鉄化合物を発見しました。鉄はこれまで、超伝導状態になりにくいと考えられていたダークホースで、発見したのは鉄と批素の化合でできた薄膜とランタンと酸素でできた薄膜が交互に積層した物質において、酸素の一部をフッ素に置き換えた、クリームウエハースのような物質でした。2008年2月に発表された当初、電気抵抗がゼロになる温度は-250度で強力な冷却を必要としましたが、鉄系という新たな物質候補が発見されたことは大きな刺激となりました。
▼小ネタ
・2009年はガリレオ・ガリレイが行った人類初の天体望遠鏡による天体観測(1609)から400年を記念して「世界天文年」とされています。
・1月21日は日本の温室効果ガス観測技術衛星GOSAT改め「いぶき」打ち上げ(H-2A)
同時に「まいど1号」などのピギーバック衛星の打ち上げを実施
・2月12日には、若田光一飛行士が3度目のシャトルフライトに出発し、国際宇宙ステーションで大型太陽電池パネルの取り付けや日本の宇宙実験室「きぼう」の船外プラットフォーム等の取り付けを行い、日本人初の3ヵ月長期滞在を実施。
・2009年年末にはロシアの宇宙船ソユーズに野口聡一飛行士が搭乗して国際宇宙ステーションに向かい、その後6か月の長きにわたって国際宇宙ステーションで生活。
・2月、小惑星イトカワに着陸後トラブルを起こして満身創痍の探査機「はやぶさ」イオンエンジンを再始動して、地球への帰還軌道へ。地球帰還予定は2010年6月。
・月探査機「かぐや」ミッション最終年上空50kmから月の磁場を観測後、今年中に月表面へ衝突。
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