2009年2月28日
Chapter-230 最近の宇宙の話題 

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すばる望遠鏡が海の材料を発見したかもしれない

 地球は「水の惑星」と言われますが、この豊富な水はどこから来たのでしょうか?
 地球は太陽系形成時にチリの粒が互いにぶつかってくっつきあい、さらにそれらが寄り集まって合体してできたと考えられています。その際、一部のチリには水でできた氷が含まれていました。それらに含まれていた氷は地球の重力に引かれてとどまり、やがて冷えて雨となり、海になったとする仮説があります。
太陽系外の遙か彼方で惑星が生まれつつある原始惑星系円盤での水の存在状態をより詳しく知るための観測が日本の天体望遠鏡「すばる」を使って行われました。
 観測した天体は、地球から650光年離れたところにあるおおかみ座HD142527です。以前の観測から、この恒星の周囲には原始惑星系円盤があり、惑星が生まれつつあることが分かっていましたが、観測結果は予想通りこの惑星系が多数の氷を含んでいることを示していました。これらの氷はこれから誕生するかもしれない地球型惑星の海に海を作り出す可能性もあります。

世界初 人工衛星の出会い頭衝突事故

2009年2月11日午前2時ごろ、米国の商用衛星通信システム「イリジウム」の衛星が1993年に打ち上げられ、10年前に運用を停止していたロシアの通信衛星「コスモス2251」と衝突しました。破壊された両方の衛星は数百個の破片となり、地球を回る軌道上に飛び散りました。これらの破片のような宇宙ゴミをスペースデブリと呼びます。
人工衛星やスペースデブリの衝突は非常に珍しく、今回のような大型衛星同士の衝突は人類史上初めてのことです。過去には、宇宙ごみが米スペースシャトルの貨物室に当たって穴が開いたこともありますし、国際宇宙ステーションの太陽電池パネルが破損し、最近修理されましたがこの原因もスペースデブリであろうと考えられています。また、未だ事故はありませんが、小石のような小さなごみでも、船外活動中の飛行士に当たれば、宇宙服が破損して大事故になりかねないため、今後の詳細な観測が求められています。

宇宙ステーション長期滞在による骨への影響は深刻かもしれない

国際宇宙ステーションに半年間滞在すると座骨の強度が平均14%も低下することが明らかにされました。女性1人を含む13人の宇宙飛行士をCTスキャンで調べた結果、13人のうち3人は半年間の滞在で骨の強度が20〜30%も低下しており、これは骨粗しょう症と診断された高齢女性に匹敵する値です。

地球のすぐ近くに小惑星があるのがまた見つかった

「2009 BD」と名付けられた小惑星が地球と同じ軌道を地球と同じ1年の公転周期で公転していることが明らかとなりました。このような小惑星は「地球共有軌道小惑星」と呼ばれています。これまでに知られている地球共有軌道小惑星としては、1999年から2006年までの7年間、「第2の月」のように地球のまわりを回って、現在は遠ざかっている2003YN107があります。

日本初の無人補給機が公開されました

 国際宇宙ステーションに物資を運ぶ貨物船は現在、ロシアの無人宇宙貨物船プログレスが活躍していますが、日本初の無人補給機「HTV」の1号機の開発が大詰めを迎えています。開発中のH2Bロケットで2009年9月に打ち上げる予定です。 HTVは全長約10メートル、直径約4.4メートルの円筒形で、国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士の食料や日用品、実験装置など一度に約6トンの物資を運ふことができます。

今週のエンディングのお便りコーナーで紹介した「宙(そら)のまにまに」はこちら。とある航行の天文部でのドタバタです。残念ながら科学的な星の話はあまりでてきません。


2009年2月28日発行 第132号の内容
  ・Chapter-230 最近の宇宙の話題
  ・納豆酵素はアルツハイマー治療に有望
  ・美的感覚の男女差
  ・NASAの温室効果ガス観測衛星が南太平洋上に落下
  ・人工衛星衝突事故でHSTがピンチに
  ・近未来の食品加工技術
  ・地球シミュレーターが新型に更新


バックナンバー
   
Chapter-229 ジョージ・ガモフの「不思議の国のトムキンス」 
Chapter-228 ヒラメとカレイの目の位置を決定する仕組み
Chapter-227 シャドーバイオスフィア 
Chapter-226 ジェットコースターの楽しみ方
Chapter-225 再び注目される超伝導
Chapter-224 ピンチになると活躍する遺伝子 
Chapter-223 アルツハイマー病に関する新たな発見
Chapter-222 私達が春を感じる仕組み
Chapter-221 サイエンスニュースフラッシュ 2008年11月号  
Chapter-220 惑星探査機ボイジャー2号末端衝撃波面通過
Chapter-219 絶滅動物を復活させる新技術
Chapter-218 粘菌問題再び
Chapter-217 2008年 ノーベル物理学賞
Chapter-216 2008年 ノーベル生理学・医学賞 
Chapter-215 サイエンスニュースフラッシュ 2008年9月号
Chapter-214 地熱発電の可能性
Chapter-213 夜行雲 / 天の川銀河で発見された新たな構造
Chapter-212 iPS細胞の応用
Chapter-211 長期記憶形成のメカニズムがわかり始めた
Chapter-210 サイエンスニュースフラッシュ 2008年7月 
Chapter-209 太陽電池飛行機
Chapter-208 ナメクジウオ!! 
Chapter-207 波力発電の現状
Chapter-206 サイエンスニュースフラッシュ 2008年6月号 
Chapter-205 植物のノアの方舟 
Chapter-204 iPS細胞が世界を動かす
Chapter-203 サイエンスニュースフラッシュ 2008年5月号
Chapter-202 医学の歴史上最も珍しい10の疾患 
Chapter-201 宇宙の話題を盛り合わせ
Chapter-200 PQQってなに?
Chapter-199 人類は7万年前に絶滅寸前の状態に追い込まれれていた
Chapter-198 サイエンスニュースフラッシュ 2008年4月号
Chapter-197 日焼け止めがサンゴの白化を促すことがわかった
Chapter-196 干からびた生物が元どおりに生き返るメカニズムを解明
Chapter-195 国際宇宙ステーションと「きぼう」
Chapter-194 サイエンスニュースフラッシュ 2008年2月 
Chapter-193 水星探査機ビーナスエクスプレス 
Chapter-192 脳機能に関する最新研究 
Chapter-191 サイエンスニュースフラッシュ 2008年1月
Chapter-190 超弦理論でブラックホール内部の構造が明らかになった
Chapter-189 ブラックカーボンと地球温暖化
Chapter-188 日本人が発明した垂直磁気記録
Chapter-187 サイエンスニュースフラッシュ 2007年12月
Chapter-186 お正月番外編「人を助ける へんな細菌すごい細菌」
Chapter-185 2007年に紹介した話題・その後
Chapter-184 脳機能に関するふたつの最新研究
Chapter-183 サイエンスアゴラ2007を振り返る
Chapter-182 ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立に成功
Chapter-181 光が空間を伝わる様子を3次元の動画として記録・観察に世界で初めて成功 
Chapter-180 サイエンスニュースフラッシュ 2007年10月 


>> 「Mowton(放送終了)」はこちら

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[この番組の担当は・・・]

ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長


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