2009年10月17日
Chapter-260 リチウムイオン電池
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リチウムイオン電池は1987年にブリヂストン・セイコー電子のグループによって世界で初めて実用化、1991年にソニーによって現在の構造の原型が実用化され、今ではモバイルPCなどで身近な存在になっていますが、今後は自動車・鉄道・航空・宇宙などの運輸産業用、ロボット産業などの電源として普及することが期待されています。リチウムイオン電池は正確にはリチウムイオン二次電池といいます。二次電池というのは充電と放電を繰り返すことのできる電池のことです。一方で、乾電池のように放電したらおしまいになる電池のことを一次電池といいます。
リチウムイオン電池は電極にリチウムを含む材料を使って正と負の二つの電極で起きる酸化還元反応を利用して電力を取出します。リチウムは酸化還元反応が強力で、軽い金属なので、高容量で軽量の電池を開発するのに非常に有利な材料です。
リチウムイオン電池の根幹となる部品は4つで、負極、正極、セパレータ、電解液です。
負極はリチウムを挿入した炭素系材料でできた電極、正極はコバルト酸リチウムでできた電極です。いずれも高い出力を得るために様々な工夫がなされ、たとえばパソコンなど小型用の電池の正極ではコバルトの一部をニッケルやマンガンで置き換え容量を増やす電極が使われています。また、自動車用や大型電池など安全性が重視される場合はオリビン鉄と呼ばれる物質が注目されています。
負極と正極が直接接触するとショートしますので、両者の物理的な接触を防ぐために使われているのが20〜50μメートルの厚さのセパレータと呼ばれる膜です。リチウムイオンはこの膜をできる限りスムーズに通り抜ける必要があるため、イオンが通り抜ける非常に小さな穴が開いています。
リチウムイオン電池の内部を満たすのが電解液です。電解液には、電解質として六フッ化リンのリチウムイオン塩が1M程度の濃度で含まれており、そこに電池の性能を改善するための物質が加えられています。電解液の添加剤をどのようなものにするかによってリチウムイオン電池の性能は大きく変化しますので、電解液の開発競争は過酷ですが、世界中で使用される電解液のほとんどは日本国内メーカーによって開発・生産されています。さらに、電解液を高分子に吸収させたゲルポリマー系と呼ばれる電解液が1999年に実用化され、ポリマーリチウムイオン電池と呼ばれています。
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