2010年4月3日
Chapter 284 日本の科学研究ビッグプロジェクト

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 日本の科学技術ですが、仕分け作業などで予算を削減されて、しょんぼりという雰囲気もありますが、日本には大きな科学プロジェクトの計画がたくさんあって、決して世界最先端の研究が下火になったりしたりはしないのです。今回は、これからものすごい発見が期待される日本および、日本が関わっている世界のビッグプロジェクトのいくつかを紹介します。

次世代高機能MRI 

 MRI (磁気共鳴画像)は、人間の体に傷をつけることなく生きた体の画像診断を行うことができ、医療分野で必須の診断機器として用いられ、癌・心臓疾患・脳疾患をはじめとする様々な疾患の早期診断を可能とし、治療法の決定に大きく貢献している装置です。

 現在、診療で用いられているMRI 装置は、1.5 テスラ―という磁石の強さの装置が主流ですが、磁場を強くすると性能が向上し、より高い解像度でよりリアルタイムに映像を得ることができるようになります。そうすると、病気の部分のより詳細な構造や状態の変化の追跡ができるようになります。

核融合の研究 

 21世紀のエネルギー環境問題の解決策の一つとして、核融合エネルギーの早期実現は重視されている研究課題です。今のところ、2030 年代に核融合発電原型炉を稼働させるための研究開発が進められています。原型炉の設計には、核融合反応を安定的に維持し続けることができることを実証しなければならず、そのための研究が世界のいくつかの核融合装置で進められています。特に、日本で開発された大型ヘリカル装置は核融合発電の有効性を実証するために必要な定常性を照明する世界唯一の装置で、このヘリカル方式が原型炉の要件を満たすことを示すことを実証する研究が計画されています。


地下生物圏探査計画 

 最近の研究で地下数kmもの深い場所にまで莫大な微生物生命圏が存在することが分かってきました。とくに海底下の地層に住む生物は注目を集めていて、「ジオバイオテクノロジー」と名付けられた、そのような生物による物質循環のメカニズムを理解しようとする研究が盛んです。このような物質循環は現在の地球環境だけでなく、地球上でのこれまでの生物進化にも大きく関わっている可能性があり、地下深部を含めて循環する炭素を中心とした物質循環の実体とその進化について検証することを通じて、いままで主に地上の生物を中心に検討されてきた地球と生物の相関関係の枠組みを大きく変更することになるものと思われます。

世界最大の直線加速器の建設 

 アジア・欧州・北米3極の素粒子物理研究者の国際協力による、世界最大の直線加速器建設の計画があります。国際リニアコライダー(ILC)と呼ばれるこの装置が完成すれば、素粒子同士である電子と陽電子の衝突により全エネルギーが素粒子反応に用いられ、この特性により新しい物理原理を直接決定することができものと思われます。さらに、極初期の宇宙の状態を再現し、宇宙の真空の構造、暗黒物質の正体、宇宙初期当時の物理法則を解明することで宇宙の進化の大きな謎に迫ります。建設総額は約6700億円、運転期経費は年間約200億円と見積もられ、研究に参加する各国で分担されます。

30m 光赤外線望遠鏡計画 

 1999年に完成したすばる望遠鏡は口径8.2mで、現在も様々な発見を続けていますが、2020 年代には望遠鏡は主役が口径30mクラスになるものと思われ、30mクラスの光赤外線望遠鏡をハワイに国際協力で建設することが計画されています。

 日本はカリフォルニア大学等により予備検討が進められてきた30mTMT計画に参画する方針を固め、建設予定地はハワイ島マウナケア山頂のすばる望遠鏡に隣接する地点に定まり、分担内容の具体化など準備作業を進めています。完成すればすばる望遠鏡に比べて約4倍の空間解像力、13倍の集光力、最大で約200倍の観測効率を実現し、観測限界等級は、現在の28 等相当から最大33 等相当にまで高感度化することができます。

ちょきりこきりヴォイニッチ
今日使える科学の小ネタ。

▼大型低温重力波望遠鏡計画 

 アインシュタインは一般相対論で光速で伝わる重力波を予言しました。重力波の存在は確実と考えられているものの、まだ検出に成功した人はいません。これまで私たちは宇宙を観測する際に赤外線や紫外線、可視光線や電波などの電磁波をもっぱら使用していました。ところが、重力波は宇宙を観測するという観点からは類似する観測対象であるにもかかわらず、電磁波とは全く独立な情報が重力波によって得られます。人類がアンテナや受信機を発明して可視光以外の電磁波をキャッチすることができるようになって、宇宙に対する見方が劇的に変化し、多角化したのと同様に、重力波を観測する装置を発明することができれば、新たな天文学の創成を意味します。

 そこで、日本では理論的に正しい重力波望遠鏡を建設し、年に数回から数十回発生しているといわれる中性子星やブラックホールなどが関係する強い重力変動のもとで発生する重力波の検出に挑戦しようとしています。また重力波は、将来的には宇宙初期のインフレーションなどを起源とする宇宙背景重力波も観測対象とする壮大な計画であり、私たちの住む膨張宇宙の誕生についてのほぼ唯一の直接観測手段となるものと思われます。


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バックナンバー
   
Chapter 283 すぐそこにあった水惑星 
Chapter 282 高速増殖炉「もんじゅ」とは? 
Chapter 281 宇宙の話題盛り合わせ  
Chapter 280 ウェルナー症候群とウェルナーヘリカーゼ   
Chapter 279 レアアースに頼らず生物多様性を守る日本で開発された技術  
Chapter 278 ツタンカーメンの死因
Chapter 277 最近の人工衛星の話題 
Chapter 276 1年中咲き続けるサクラの開発に成功 
Chapter 275 マイクロキメリズム 
Chapter 274 生命科学に関する最新の話題を盛り合わせ
Chapter 273 レスベラトロール  
Chapter 272 最近発見された生物  
Chapter 271 2010年はリンの貴重さに思いをはせる年にしましょう  
Chapter 270 ヴォイニッチの科学書で振り返る2009年科学の話題 後編  
Chapter 269 ヴォイニッチの科学書で振り返る2009年科学の話題 前編  
Chapter 268 臭わない病気、聞こえない病気に関する最新情報  
Chapter 267 プランクトンが住みにくくなる北極海  
Chapter 266 宇宙でがんばっている探査機たちに思いをはせる  
Chapter-265 伝統医学
Chapter-264 軌道エレベーターと宇宙太陽光発電 
Chapter-263 最近耳にしなくなったオゾンホールの現状と地球温暖化との関係
Chapter-262 金平糖のサイエンス 
Chapter-261 30分でわかるノーベル賞2009  
Chapter-260 リチウムイオン電池
Chapter-259 iPS細胞の応用研究
Chapter-258 月での水の存在
Chapter-257 早起き遺伝子と恐がり遺伝子
Chapter-256 グラフェン
Chapter-255 地球温暖化とちょこっと発電 
Chapter-254 水素から電子を取り出す新しい触媒の発見 
Chapter-253 水にも構造がある 
Chapter-252 食べものと体内時計の関係
Chapter-251 金縛りについて
Chapter-250 国際宇宙ステーション日本実験施設きぼう  
Chapter-249 脳神経科学の話題  
特別番組 山口県立山口図書館 ちょこっとサイエンス講座「宇宙人はなぜそのヘンを歩いていないのか?」 
Chapter-248 サリドマイドの生化学 
Chapter-247 太陽系外惑星探査の歴史と現状 
Chapter-246 氷核活性細菌
Chapter-245 一卵性双生児の最新科学 
Chapter-244 ダークマターとダークエナジー
Chapter-243 フローティングタッチディスプレイ
Chapter-242 トランスジェニックコモンマーモセット
Chapter-241 食感とおいしさの関係
Chapter-240 獲得形質の遺伝に似た現象
Chapter-239 マルチバースと人間原理


>> 「Mowton(放送終了)」はこちら

Science-Podcast.jp 制作






科学コミュニケーター 中西貴之(メール
アシスタント BJ

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ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長

 


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