2007年9月29日
Chapter-175 ディスレクシア
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ディスレクシアとは病気の名前です。
ディスレクシアは知的能力は正常であるにもかかわらず、文字が読めないという病気で発症のメカニズムも医薬品や外科的手術による治療方法も見つかっていません。ディスレクシアは先天的なもので、小学校に入学し授業を受けるのに支障が生じることによって親や教師が子供の異常に気づくケースがほとんどです。アメリカでの発症率は文献により差があるものの10〜15パーセントと非常に高いことが知られています。日本では詳細な調査は行われていませんが、音読が上手にできない小学生のうちの半分はディスレクシアであるという説や、小学生の7〜10パーセントがディスレクシアであるという説などがあります。
症状の特徴として、本を読むことはできるものの、著しく遅い、読み間違いが多い、正しい発音で音読ができない、文字を書くことにも困難を伴う、書き間違いが多いなどが挙げられますが、完全に文字が読めなくなる失読症状とは異なるとされます。また、場合によっては左右や前後の区別がよくわからないという症状が出ることもあり、アルファベット小文字の「b」と「d」のような鏡像が判別できなかったり、ひらがなの「こ」と「い」が判別できなかったりします
字が読めないことが原因で、知的障害者のような症状を呈する場合や、多動症のように見える注意の集中困難などを合わせ持つ場合もあるため、経験の少ない医師によってこれらの疾患に誤って診断され、ディスレクシアには効果のない誤った治療を施されることもあります。ディスレクシアは早期に発見し、文字を読むトレーニングを積むことによって機能を回復させることができる疾患です。
fMRIなどを用いた最近の研究で、ディスレクシア患者は脳の言語に関する脳の領域が文字を読んでも全く反応しておらず、単語の分析と文字を音に変換する脳の部位の機能をほぼ完全にど失っていることがわかっています。
さらに、ディスレクシアには使用する言語の違いに伴う症状の違いも確認されています。漢字のような意味を表す文字に対する症状とアルファベットのような音を表す文字に対する症状では、人間が文字を認識するメカニズムが両者で異なることが原因で、異なる症状を呈します。そのため、日本語と英語のバイリンガルの子供にディスレクシアが発症した場合、多くのケースで英語にのみディスレクシア症状を呈して英語の会話は普通にできても文章は読めず、一方では日本語では全く障害が出ていないということもあります。
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