2011年7月2日 どちらの型になるかは遺伝子で決まっています。遺伝子で決まると言うことは親から子へ遺伝し、家系や人種によって異なると言うことです。カサカサ型とネバネバ型の分布を地球スケールで見ると日本やアジアはカサカサ型、欧米はネバネバ型と言えます。日本では全人口の88パーセントがカサカサ型ですが、日本の中でも地域性があって、カサカサ型遺伝子を持っている比率が最も高いのが京都府で98パーセント、最も低いのは岩手県の72パーセントです。 海外では中国内陸部と韓国はほぼ100パーセントがカサカサ型。タイは74パーセント、インドネシアでは51パーセントと南へ行くにつれてカサカサ型の比率が下がっていきます。東へ方向を変えて太平洋を渡ると北米は50パーセントと日本よりも低下し、南米ではカサカサ型は数パーセントしかいません。一方、ユーラシアを西に進むとカサカサ型はカザフスタンで38パーセント、ロシアで25パーセント、フランスでは21パーセントでアフリカに到達すると南米同様に数パーセントに低下します。 耳あかに関する研究によると、もともと人間の耳あかはネバネバ型でした。ところが、数万年前に中国北部やモンゴルの周辺で遺伝子の突然変異に伴いカサカサ型の耳あかが生まれ、カサカサ型の人の移住に伴って周辺地域に広がったと考えられています。人類の祖先が東アフリカから世界へ広がり、その中の中国北部に移動し黄色人となった祖先の中でカサカサ型の耳あかが生まれました。カサカサ型の耳あかが有利だった理由は分かっていませんが、可能性としては寒冷気候への適応や感染症への対応などが考えられます。 耳あかのタイプを決める遺伝子はすでに発見されていて「ABCC11」と言う遺伝子で、この遺伝子の塩基配列のうちわずか1箇所の違いで耳あかのタイプが決まっていることもわかっています。不思議なことにABCC11遺伝子は、耳あかのタイプを決めているだけでは無く、細胞の中に入ってきた薬物を細胞の外に出す機能にも関わっていて、ネバネバ型の方が細胞内に侵入した薬物を排出する能力が勝っていることがわかっています。その結果、カサカサ型の人とネバネバ型の人とで病気を治すために飲んだ薬の効き方も違うことになります。ネバネバ型の人は細胞の中から積極的に薬を外に出してしまうので薬が効きにくい可能性がありますし、カサカサ型の人は逆に細胞の中に薬が蓄積してよく薬が効くのを通り越して副作用が出てしまうかもしれません。 ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。)
|
Science-Podcast.jp
制作
このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。
|