2011年7月9日 今回の研究は遺伝の実験によく用いられるショウジョウバエ使って行われました。普通のショウジョウバエは、眼の赤色色素を合成する遺伝子が活性化して赤眼になります。遺伝子はすべての遺伝子が常に使われているわけではなく、遺伝子の修飾で意図的に使用停止にされることもあり、この赤目遺伝子を使用停止にしたショウジョウバエは白眼になります。つまり、子供ショウジョウバエの目の色を観察することによって、その遺伝子が普通に機能しているか、修飾によって停止しているかを簡単に判断ができるということです。 研究グループは、ショウジョウバエの受精卵に熱や浸透圧のショックを与える実験を行いました。すると、興味深いことに、熱や浸透圧のストレスを受精卵が成長する発生の初期段階で与えると、もともとは使用停止になっていた赤目遺伝子が活性化すること、またその状態は子供に遺伝することが目の色の観察から分かりました。 今回発見された現象は、1809年、ラマルクによって提唱された「獲得形質の遺伝」という考え方に似ています。ラマルクはキリンは高い枝にある木の葉を食べようとして、いつも首を伸ばしていたので首が長くなったと考えました。この考え方は1859
年にダーウィンの自然選択説が発表され、生物の進化論における主流となってからは、多くの科学者は獲得形質の遺伝という考えには否定的です。そのため、今回観察された現象が生物の環境適応や進化にどのように影響するのかについても新たな知見を得られると研究者らは期待しています。 ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。)
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