2011年9月10日 使い方としては、例えば、神経細胞に蛍光で光るタンパク質の目印をつけた実験動物の脳をScale 溶液に浸すと蛍光を残した状態で透明にすることができます。ですので、脳組織の深部にまで広がる蛍光による神経回路の詳細な3 次元構造を観察が可能になります。このScaleという薬品は保湿クリームや肥料に広く使われている尿素をもとにして、処理した組織内の光散乱を最小限に抑える作用を持っており、それによって試料をゼリーのように透明化します。 これまでは、神経回路の構造を高い解像度の画像で観察するためには、脳組織をスライスして写真を何枚も連続的に撮影し、それらをコンピューター上で積み上げて再構成することが必要でした。けれど、脳を実際に薄くスライスするには大変な労力を伴いますし、生きていた時を再現するように正確に三次元画像を再構成するのは困難です。 これまでも光の散乱を取り除く透明化試薬はいくつか発明されましたが、それらは有機溶媒がもとになっていたため、観察したい組織を傷めてしまうという問題がありました。 また、一度透明化した生体試料もScale試薬を洗い流すことによって簡単に元の状態に戻せることもわかっています。スケール技術は今回紹介した脳研究以外にもいろいろな組織に適用可能です。動物種もマウスだけではなく、ラット、ブタ、サルの試料も透明にできますし、おそらく人の試料にも適用できるものと思われます。さらにスケール試薬の組成は非常に簡単なうえ、試料の性質に合わせて組成を変えても機能しますので、研究グループは、生体試料の多様性を考慮し、組成の異なるバリエーションScaleA2、ScaleU2、ScaleB4
試薬を開発しました。 ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。)
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