2011年9月17日 鉄原子は、原子半径の大きいエネルギー的に安定な状態である高スピン状態と、原子半径が小さく不安定な低スピン状態の両方をとることができます。温度が高くなった鉄を原子レベルで見ると、体積を増やそうとする現象と体積を小さくしようとする現象が同時に起きていることが分かります。つまり、温度が高まるほど不安定な底スピン状態の密度が増えることで原子が縮もうとします。一方、温度が上昇すると原子の熱振動が激しくなり、原子同士の衝突を避けるために原子間の距離が伸びます。これは普通の意味での熱膨張です。 インバー効果は、これら2つの効果がちょうど相殺されて、熱膨張がなくなるというものです。温度変化による熱膨張を示す原子間距離を鉄原子、ニッケル原子それぞれについて調べると、鉄原子周囲の原子間距離はほぼ変わらないことからほとんど熱膨張がなく、ニッケル原子周囲の距離は温度上昇に伴って長くなり、熱膨張がはっきりと観測されました。ただし、インバー合金のニッケルの熱膨張をそうでない金属ニッケルの場合に比べるとかなり小さいことがわかりました。 ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。)
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