【ヴォイニッチの科学書《有料版》番組要旨】 このような環境でどのような方法での自然エネルギーの利用が有効なのかを研究者らは考察し、太陽光と風力による発電にヒートポンプによる熱供給を組み合わせる方法がシミュレーションされました。 南極の風は比較的強く、東京の年間平均風速が秒速3〜4メートルであるのに対し、昭和基地では最も風が弱くなる夏期でも秒速5メートルの風が吹き、それ以外の季節は平均でも秒速10メートル近い風が吹き、これは日本国内で風力発電に非常に適している地域とされている宗谷岬周辺と同等です。一方、日照量については、5月〜7月の冬の3ヶ月間は太陽が昇らないために日照量はゼロとなりますが、逆に、11月から1月は太陽が沈まないために東京の4倍もの日射量があり、年間では東京に太陽光発電を設置するのと同等の効果が期待できます。さらに、安定したエネルギーと熱の供給のためには現状のディーセル発電機およびボイラーと併用することになります。 専門家による詳細なシミュレーションによると、現状の170kWの消費電力のうち、30kWを太陽光発電、70kWを風力発電に置き換え、残りは自然エネルギーの出力変動を吸収する意味も含めディーゼル発電を併用することが最も効率と安定性が良さそうです。この場合、年間の積算消費電力に占める太陽光発電は20パーセント程度にとどまり、パネルの増設でさらに出力を上げられそうではありますが、年間の気候の変化などを考慮すると、あまり太陽光発電の比率を上げることは望ましくないという結論が出されています。 この条件での年間化石燃料の節約量は約60キロリットルで、昭和基地での全消費量の約10パーセントを節約することが可能です。風車と太陽光によって余剰に発電される電力や廃棄される余剰なヒートポンプの熱を蓄える設備を導入することによって化石燃料消費量はさらに削減できそうです。今後は、昭和基地のような過酷な環境で風力発電装置や太陽光発電パネル、ヒートポンプなどの装置がどの程度安定して稼働するか、あるいは寒さへの対策を施した機器の開発が必要です。 (電気学会論文誌B Vol.131 No.9 「昭和基地における再生可能エネルギー導入に関する基礎検討」) ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。)
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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。
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