【ヴォイニッチの科学書《有料版》番組要旨】

2011年10月08日
Chapter-361 浸透圧発電 

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 長崎市の水処理プラントメーカー協和機電工業と長崎大、東京工業大は海水と淡水を使った浸透圧発電実証プラントを稼働させています。原子力発電のリスクが問われる中、再生可能エネルギーを利用した発電システムの一つとして注目を集めています。

 水は通すけれど塩化ナトリウムは通さない膜の両側に海水と淡水をそれぞれ蓄えます。そうすると、塩濃度の高い側に淡水が移動しようとします。この時の浸透圧差によって生じる水流でタービンを回して発電するのが浸透圧発電です。もともとは福岡市東区の海水淡水化センターから排出される塩分濃度が2倍になった濃縮海水の有効利用として着想されたものです。

 実証プラントでは濃縮海水と、下水を処理した淡水をポンプで浸透膜モジュールに送り込み、発生する水圧でタービンを回します。淡水化センターからは1日3万トンの濃縮海水が排出されますが、現在はこのうちの500トンと下水処理水500トンを使って検証中です。計画発電出力は7.7キロワットです。

 浸透圧発電そのものは既存の技術で、1976年にイスラエル人科学者によって提案されました。日本での研究も1980年代から行われましたが、いまだ実用化には至っていません。2倍濃縮の海水と淡水との間の最大浸透圧は約60気圧あります。この半分の30気圧の力でさえ、300メートルの落差がある水力発電所に匹敵する力が得られる計算になって、意外と力が強いことがわかります。

 浸透圧発電は濃縮海水と海水との間や、海水と淡水との間でも発電が可能なため、周囲を海に囲まれ、海水と淡水が混ざり合う場所が全国至るところにある日本は、浸透圧発電に適した条件を備えていると考えられています。また、浸透圧発電は燃焼の工程が全くないので、二酸化炭素の排出が少なく、環境負荷が少ないためあらゆる場所に設置が出来そうです。また、太陽光発電や風力発電のように天候などに左右されない点も見逃せないメリットです。

 浸透圧発電では、作り出した電力の2/3は発電するために消費しなければなりませんが、それでもコスト的には優れており、濃縮海水と淡水を使った場合、1kWhrあたり14円、海水と淡水では出力が落ちるため、ややコストは上昇しますが、それでも1kWhrあたり18円程度で、太陽光発電よりも約40円安く、風力発電と同程度だとされています。

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ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長

 


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