2011年10月22日 【ヴォイニッチの科学書《有料版》番組要旨】

Chapter-363 ついに目からビームを出すことが可能かもしれない時代に 

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 目からビームを出して敵を倒すというというシチュエーションはSFでは定番の攻撃方法です。ケロロ軍曹は宇宙では誰でも出来ることだと言ったそうですが、地球上では古くはマジンガーZ(ただしロボット)の光子力ビーム、生き物で目からビームを出せるのは、朝比奈みくるさんの「み、みくるビーム!!」(ただし特殊なコンタクトレンズが必要)などが有名です。けれど、どれも作り話、目はもちろん生き物の体からビームを出せるはずなんてない・・・と考えられていました。ところが、このたび、アメリカ・ハーバード大学医学部の研究者らが、単に科学的な好奇心から研究に着手し、目からビームにつながる画期的な発明、具体的には細胞からレーザー光線を出すバイオ・レーザーの基本的技術を開発することに成功しました。(M.C. Gather et.al. Nat. Photon 5, 406 2011)

 レーザーは2枚の鏡を向かい合わせに設置したレーザー発信器で光を増幅させ作ります。2枚の鏡の間にはレーザーの発生に使う物質が封入されています。何を封入するかはレーザーの種類で異なりますが、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガスや二酸化炭素、色素、金属イオンを含む結晶やガラス、無機半導体などが使われます。このレーザー発信器のコア部分をキャビティといいますが、波長が2枚の鏡の距離の整数分の一となる光は、キャビティ内をくり返し往復し、媒質の中で増幅されながら波長の整った光を形成し、これを外に導き出したものがレーザー光です。

 バイオレーザーを作るために研究者らは、キャビティの空洞に、人間の腎臓由来の細胞を培地に浮遊させた溶液を入れました。鏡の間隔は20 mに設定されていて15 m程度の細胞がちょうど1個入る広さに調節してあります。また、この細胞には光源として緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をあらかじめ組み込んであります。

 この細胞に励起光として波長465nmの青色のレーザーパルスを照射したところ、強い線色のレーザーが出ました。このとき、レーザーを出すために必要なエネルギーは非常に低く、細胞にダメージは与えずにレーザーを出させることに成功しました。さらに、一般的なレーザーでは、使い続けると光源が劣化して交換が必要となりますが、バイオレーザーならば、細胞を増殖させることで常に新しい光源を供給しつづけることが出来るというメリットも見いだされました。

 将来、神経と外部素子を結ぶのにバイオレーザーを使い、人間と機械を直接媒介するインタフェースとして利用できる可能性があり、キーボードもマウスもなしに計算機を自由に使える時代が来るかもしれないと研究者らは考えています。より現実的な応用例として考えられるのは、生体の画像化による診断、細胞の機能や性質を調べるための化学実験的用途などがあげられます。

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Chapter-329 恐竜の前足と鳥の翼の関係   
Chapter-328 人の振り見て我が振り直せの科学  
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Chapter-326 お茶の効能を分子レベルで解明  
Chapter-325 雷による反物質ビームの照射  
Chapter-324 デニソワ人、現生人類と交雑の可能性  
Chapter-323 新しいトランジスタを開発  
Chapter-322 正しい枕で正しい眠り  
Chapter-321 太陽系に関する近頃の発見  
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科学コミュニケーター 中西貴之(メール / 活動履歴
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独立行政法人理化学研究所
但し、独立行政法人理化学研究所使途特定寄附金「播磨研究所X線自由電子レーザーSACLAに関連する研究及び運営推進のため」として

         
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ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長

 


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