2011年10月22日 【ヴォイニッチの科学書《有料版》番組要旨】 レーザーは2枚の鏡を向かい合わせに設置したレーザー発信器で光を増幅させ作ります。2枚の鏡の間にはレーザーの発生に使う物質が封入されています。何を封入するかはレーザーの種類で異なりますが、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの希ガスや二酸化炭素、色素、金属イオンを含む結晶やガラス、無機半導体などが使われます。このレーザー発信器のコア部分をキャビティといいますが、波長が2枚の鏡の距離の整数分の一となる光は、キャビティ内をくり返し往復し、媒質の中で増幅されながら波長の整った光を形成し、これを外に導き出したものがレーザー光です。 バイオレーザーを作るために研究者らは、キャビティの空洞に、人間の腎臓由来の細胞を培地に浮遊させた溶液を入れました。鏡の間隔は20 mに設定されていて15 m程度の細胞がちょうど1個入る広さに調節してあります。また、この細胞には光源として緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子をあらかじめ組み込んであります。 この細胞に励起光として波長465nmの青色のレーザーパルスを照射したところ、強い線色のレーザーが出ました。このとき、レーザーを出すために必要なエネルギーは非常に低く、細胞にダメージは与えずにレーザーを出させることに成功しました。さらに、一般的なレーザーでは、使い続けると光源が劣化して交換が必要となりますが、バイオレーザーならば、細胞を増殖させることで常に新しい光源を供給しつづけることが出来るというメリットも見いだされました。 将来、神経と外部素子を結ぶのにバイオレーザーを使い、人間と機械を直接媒介するインタフェースとして利用できる可能性があり、キーボードもマウスもなしに計算機を自由に使える時代が来るかもしれないと研究者らは考えています。より現実的な応用例として考えられるのは、生体の画像化による診断、細胞の機能や性質を調べるための化学実験的用途などがあげられます。 ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。)
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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。
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