【ヴォイニッチの科学書《有料版》番組要旨】 チェルノブイリの事故後、動物への影響はほ乳類、鳥類、両生類、魚類から無脊椎動物に至るまで様々な動物種で調査が行われましたが、その結果、あらゆる動物種に形態的、生理的、遺伝的な異常が起きていることが分かり、23年後の2009年の調査においてさえヨーロッパのいくつかの地域ではそれらの生物に取り込まれた放射性核種の濃度が非常に高いまま維持されることも分かりました。それらの影響は今後何十年にもわたって続くと考えられています。 ほ乳類では、植物をエサとする野生の有蹄類において様々な調査が行われています。事故から7年から20年も経過すると多くの地域では環境中の放射能汚染は低下していますが、そのような減少傾向にある地域においても有蹄類中の体内の放射性核種、たとえばセシウム137の濃度は増加しているケースがよく見られました。 特に秋になって冬眠を前に食欲が旺盛になると放射性物質に汚染されたオークやコケモモをたくさん食べることによって体内のセシウム濃度が11倍にも上昇している動物が発見されたこともあります。そのような現象はチェルノブイリの周辺だけではなく、遠く離れたヨーロッパにおいても見られます。汚染された山岳地帯でキノコを食べて大量に放射性核種を蓄えた野生のイノシシが発見された例も報告されていて、生活環境の放射線量を測定して安全レベルにあってもこのような野生動物が放射性核種を人間の近くまで、しかも事故から何年も経過した後に運んでくる例もあることを忘れてはなりません。 参考:科学(岩波書店)2011年11月号 ◇ ◇ ◇ (FeBe! 配信の「ヴォイニッチの科学書」有料版で音声配信並びに、より詳しい配付資料を提供しています。なお、配信開始から一ヶ月を経過しますとバックナンバー扱いとなりますのでご注意下さい。)
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このページはインターネット放送局くりらじが毎週放送している科学情報ネットラジオ番組「ヴォイニッチの科学書」の公式サイトです。放送内容の要旨や補足事項、訂正事項などを掲載しています。
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